「面接官同士の評価のぶれをなくしたい」という問いの設定は正しいか
面接官同士の評価のぶれについての話です。
お客様の採用選考の相談の中でよくあるのが「面接官同士の評価のぶれをなくしたい」というものです。
複数面接官で面接を実施するが、お互いの評価が割れることがあり、その場合は結局役職や年次が上位の面接官の意見に引っ張られる
ある面接官は合格率が90%を超えているが、ある面接官は60%を割り込んでいる
面接官が好き勝手に評価しているので統一した指標で評価したい
背景は企業ごとに多少異なることもありますが、大枠の問題意識は上記のようなもので、「面接官トレーニングはできますか?」という相談がくるケースもあります。
面接官のトレーニングはとても重要なので最終的には実施することが望ましいですが、上記の問題意識から一足飛びに面接官トレーニングに飛びつくのは危うさもはらみます。
偶然誤差と系統誤差
面接官同士の評価のぶれ、というものについてもう少し理解を深めたいと思います。
100%正しい評価というものはできませんが、仮に「正しい」評価があったとして、「ぶれ」があるということは、どちらか、あるいは両方の面接官が「正しい」評価と誤差がある、ということになります。
誤差は2種類存在し、そのどちらの誤差なのかを把握しないと、対策が場当たり的なものになってしまいます。
偶然誤差(Random Error)
何らかの偶然やたまたま測定値がずれてしまうことを指します。たまたま起こっていることなので、複数回測定(評価)をしたり複数評価者を用意することで誤差を緩和することができます。
系統誤差(Systematic Error)
評価基準、評価の手順、主観が入り込む許容度などの原因があることにより測定値がずれてしまうことを指します。たまたま起こっていることではないので、複数回測定(評価)をしたり複数評価者を用意したりしてもまた同じことが起こります。この場合には原因を取り除く作業が必要です。
面接評価の設計を施していて、評価のぶれが偶然誤差であるとするのであれば、面接官トレーニングでロールプレイ(あるいは面接シーンの映像の視聴)をして各自で評価、その後にすり合わせをすることが有効な対策です。
一方で、面接評価の設計がなされていない場合は、評価のぶれは系統誤差ということになりますから、その場合はロールプレイなどを実施しても効果的ではなく、そもそもの選考の設計(採用基準の定義)などが必要になります。
問題はぶれではなく、精度
誤解を恐れずに言えば、私が件の相談を受けたほとんどの企業で、ぶれの要因は系統誤差によるものです。
この場合、問題の本質は
「面接官同士の評価がぶれている」ことではなく、
評価精度が低い = 入社後のパフォーマンスの予見の精度が低い
ということにあります。
すなわち、
「どのようにして入社後のパフォーマンスの予見の精度を高めるか」
という問いの設定の方が本質的です。
(このように考えていくと、採用だけで問題解決をするのではなく入社後の育成や配属、仕事における成長など限りなくフィールドが広がるので、ここではいったん採用選考に的を絞ります)
「入社後のパフォーマンスの予見の精度を高める」ということに問題の焦点を当てると、その解決策は面接官トレーニングだけでなく、幅広い対策が可能になります。
大きな視点では、
観点1. 何の能力を評価するか
観点2. 正しく評価できているか
という2つの観点で選考を設計することが必要になります。

観点2. 正しく評価できているか、については、ここでいきなり「面接の評価精度をどのようにして高めるか」という考えに持っていくのではなく、そもそもどのような評価手法を用いて評価精度を高めるかということを考えるのが先です。
評価対象の能力によってはテストを用いた方が良い場合もあります。
また、ワークサンプルや行動観察の方が面接よりも向いているケースも多々あります。
評価対象能力が面接に向いていないことはよくあることなので、下記のnoteを参考にしてください。
それらの検討をした上で、面接を実施することになったのであれば、ここでようやく「面接の評価精度をどのようにして高めるか」について設計をしていくことになります。
面接の評価精度を高めるために知っておいてほしいこと
最近は面接に対する知見もかなり一般的になってきていますが、あまり話題になっていない観点で面接の誤認の3つの落とし穴があります。この落とし穴を知らずに面接をすると高確率で判断を誤ることになります。
また、構造化面接を導入(しようと)している企業も増えています。構造化面接についても、言葉だけが先行している印象を受けますので、論点を整理したnoteを参考にしてください。
最初の違和感は「ぶれている」で構わない
私がお客様から「面接官同士の評価のぶれをなくしたい」という相談を受けて、そこからヒアリングなどを通じて当note記載のことなどを確認した結果、支援策として「採用基準の定義」や「構造化面接の実施マニュアルの作成」などにつながることがよくあります。
ですので、最初の違和感は「ぶれている」で構わないと思います。気をつけなければならないのは、そこで本質を見誤って場当たり的な面接官トレーニングを実施してしまうことです。
先ほども記載したように、面接官トレーニング自体は重要です。構造化面接の構造化の要素のひとつに「面接官のトレーニング」も含まれています(先のnote参照)。
ですが、選考の設計を施さずに面接官トレーニングだけを実施しても、結局評価はぶれます(評価精度が低いままになります)。
選考における評価の精度の向上は注目が集まりにくい領域ですが、合否判定に関わる重要なプロセスなので、もっと認知が広がってほしいなと思います。
