SNSで欠乏感を煽ってるじゃん | 5月の読書記録
⚠️ネタバレありかもです。
27冊目:自己決定の落とし穴/石田光規
積読チャンネルで気になって購入。
自己責任という言葉の危うさを感じる今日この頃。その正体を暴きたいモチベーションで読んだ。自己決定できる世界は素晴らしいが、その素晴らしさの代償。その構造を覗けるので面白い。
僕が本を読むのだって、たまたま本が好きな母親のもと生まれただけ。いま住んでいる三宅町が気に入っているのも、両親の生活力で暮らしていた阿見町と酷似している。パイプラインに沿った人生だと思う。
進路の選択だって自己決定しているよりは流れに身を任せているだけ。たまたまパイプラインから漏れなかった。そんな人生。自己決定だと持っていることの大半は周りの環境で決まっていることが多いと捉えるとする。それなのに全てを自己責任と言われてしまう世界はとても苦しい。例にも出ていたけど、ただなんとなく就職活動をしなかったたとする。そうしたら世間からは就職しないことに決定したことにされる。決定しないことは許されない構造になっている。
かといって、この自己決定が保証されない世界が良いのかと言われたら、そんなことはない。先輩方の努力で掴み取ったこの自己決定できる自由をもっと楽しく行使できる環境になれば良いなって思う。
28冊目:サッカーと地政学/木崎伸也
もう少し地政学感のある本かなと思っていたけど、違かったので少し残念。地政学というよりは政治の話であって、地の部分が少し弱いのかなというのが正直な感想。ライト層向けの一冊。
サッカー本として楽しむ分には十分面白いと思うし、オイルマネーのおかげでアジアは恩恵を受ける場面も多々あるので、日程や開催地の文句だけでなく、全体を俯瞰して、メリットとデメリットを差し引いた議論がもっと起これば良いのになと思った。
29冊目:物語の役割/小川洋子
ページ数も少なく講演会の内容がベースなのでサクッと読める。
小中学生の頃はどんな読書をしていたのか考えながら読んでいた(特に第三章)
相手をなじるようなコミュニケーションが多かった中学生の頃。友達の視線が気になり、言葉尻の強い言葉が飛び交い、安心できる場所はなかったように思う。そんな僕にとって物語を読むとは自分1人の世界に浸るための大事な時間だった。
※かといって授業中に本を読むのはダメ。反省しろよ中学生の自分。
また小川哲さんの言語化するための小説思考にも通ずる話がたくさんあった。どちらの小川さんも一言で表せない、言葉にできないから小説にすると言っていた。何かを語る時、簡単な言葉で情報を圧縮してしまうのはもったいないから、小説を読む人が増えて、言葉に表せない思いを、受け取る人が増える。そんな世の中になると良いな。
30冊目:わたしの日々が、言葉になるまで 小説家に学ぶ言語化のコツ/町田そのこ
一番印象に残っているのは、「町田そのこさんも親との折り合い悪いんだ」と思ったこと。自分も父親との関係は良好とは言えず、悪いと思いながらも、一生このままの関係でいくんだろうなというのは薄々感じている。大人になっても良好な親子関係を築けている人を見ると羨ましい思いがあったから、仲間を見つけた感覚で嬉しい。
町田その子さんの作風って、一筋縄ではいかない人間関係が描かれているけど、その源流を見た気がした。
その他は町田そのこさんらしく優しく丁寧な言葉で、言語化について語ってくれている。良くも悪くもどこかで見たことあるかもなーと思ったのは、どの著者も大切にしていることが重なっていることなんだなって納得した。
特に「書いているときは読まれることを気にしない。後から修正する」と言及されている箇所があって、土門蘭さんと同じことをまんま言っているから、まず徒然なるままに書いてみるのは大切なんだなと実感した。もちろんその後の修正はセットだけど。
引き続き、町田その子さんの著作は追いかけていきたい。
31冊目:咲良は上手に説明したい!/滝沢志郎
ザ・お仕事小説!テクニカルライターという仕事はまったくもって知らなかったけど、咲良と同じ目線になってこの仕事を知っていくのは楽しかった。結構どの仕事にも当てはまる、内容もあるんじゃないかなーって思って、少しだけ自分の仕事の話を。
ユースセンターを周知するために、あれやこれやと考える。チラシに載せる内容とか、どうしようと考えていて、この本の言葉を借りるなら、機能準拠のチラシを今まで作っていた。この場所ならこれができます!だと辛い。
なので子ども目線で、「〇〇をしたかったら▲▲に行く」という説明に変えようとしていた矢先だった。この小説の言葉を借りると、使用場面準拠のチラシにしたいということ。ほんとここ1週間くらいの悩みと、小説の内容がリンクするんだから面白い。自分の考えが間違っていなかったという自信になった。
またAEDを女性に使うためらい感の話や、デマについての憤り、子供は空を楽しく見上げて欲しいなど随所にメッセージ性の強いエピソードが盛り込まれていて、グッときた。松田直輝さんやエリクセンの話が出てくるって、絶対に作者サッカー好きだろ。
読みやすい&自分の知らない世界を知れるという、素晴らしい小説です。読書初心者にもおすすめなので、ぜひ!
32冊目:出合いなおし/森絵都
タイトル買い。好きなのは、表題作の出会いなおしと三十人三十一脚の話。
ママのやつと転生するやつは少し肌に合わなかったかな〜。
出合いなおすことで、その人の一面しか見えてなかったものが、他の面も見えてくる。その結果、その人が立体になるという考え方は良い。好き。
僕の読書感想で時々出てくる、乗代雄介、二十四五の友達論
変わる前も変わった後のことも大体わかったら、それは友達です。大人になると新しい友達ができないのは、そもそも人は大人になると変わらなくなるから。変わる自分を人に見せなくなるから
少し今回の話と重なった。変わった後のことも知っているから友達のことが立体的になる。変わったことの後を知らないなら、その人はいつまでも平面のまま。かつては友達だったかもしれないけど、その一面しか知らないなら友達とは言えないね。だからどんな友達とも出会いなおしたいし、それができれば何年会ってなくても、友達に戻れるんだと思う。
三十人三十一脚は小学生の頃やったことを思い出した。本当に同世代の話し。あの頃のトラウマって人生を決定づけてしまうこともある。あの囚われている感じは、身に覚えがある。自分の根本の自信のなさ、ネガティブさは、小学生のサッカーが下手くそだった経験からいまだにきている。
でも、少しずつ呪縛から解き放たれている感覚もあるから、そういう年齢になってきたのかもしれない。
33冊目:人生とは長時間をかけて自分を愛する旅である こころの資本の経済学/樋口耕太郎
タイトルと装丁に惹かれて購入。最初が一番面白かった。
相手の関心に関心を持つ。これがどれだけ難しいか。相手の関心はコントロールできるものじゃないから、自分の関心ごとに寄せられるよう話を誘導してしまうことが多々ある。でもユースワークで必要なことってこの、相手の関心に関心を持つことだよなーとも。そういう意味では仕事に繋がる読書体験だった。
また会社と負債についての考え方も良かった。
投資家は買収資金を回収するために、売上を上げなきゃいけない。
その回収しなきゃいけない資金は、従業員にとって負債で、その負債を返済するために働かなきゃいけない。そこには愛はない。
資本主義社会に生きていくことの難しさを感じる。売上を上げなきゃいけないから、社会は僕たちに欠乏感を与えてくる。その欠乏感を埋める痛み止めをお金で買っている。僕が旅をしていたのも欠乏感を埋めるためだったのかな。結局資本主義に踊らされていたのか。それに気づいたからもう長期の旅はいいやとなっているのかもしれない。SNSで旅の様子を見せることは、他人の欠乏感を煽るだけで、意味はないのかしれない。反面外の世界を知ることの大切さとそのきっかけはまったくないのも寂しい世の中だから、バランスが難しい。
長かったけど読みやすかったです。
2026年の読書記録
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