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CLARITY Actで「利回り」が消える──ステーブルコインの勝者が入れ替わる

先日、CLARITY Actをめぐってステーブルコインへの利回り規制強化が意識され、Circleの株価が一時約20%下落するなど、Coinbaseを含む関連銘柄は大きく下落した。

米国で審議が続くCLARITY Actは、2025年7月に成立したステーブルコイン規制法(GENIUS Act)に続き、暗号資産市場全体の枠組みを定義する重要な法案である。

これは単なる暗号資産(仮想通貨)関連法案ではない。
・暗号資産の規制枠組みを明確にすることを目的とした法案で、
・さらに「企業の競争優位性を変え得る法案」でもある。

<CLARITY Actの目的と必要性>
CLARITY Actの目的は、
・暗号資産が証券なのか、商品なのか、
・SEC(米国証券取引委員会)、CFTC(米国商品先物取引委員会)など、どこの管轄下にあるのかを整理し、
・明確な分類基準を設けることで、規制のグレーゾーンを解消することにある。

この法案が必要とされる背景には、複数の要因がある。

◆Ripple裁判
CLARITY Actの必要性を象徴的に示した事件は、Ripple裁判である。※Rippleは、銀行を介さず、低コスト・高速に国際送金を実現することを目指す企業。XRPは、市場で取引される投資対象であると同時に、異なる通貨をつなぐ“中継通貨”としての役割を持つ暗号資産である。

SECは2020年12月、2013年以降のXRPは「証券法違反」に当たるとして、Rippleを提訴した。Rippleは長年ビジネスを続けた後に、過去に遡って問題視されたのである。

さらに、この裁判は市場をより混乱させた。

2023年7月の連邦地裁判決では、
機関投資家向け販売は証券性が認められた一方、
・取引所を通じた一般向け販売は証券には当たらない
と整理された。

つまり同じXRPでも、
誰に、どのように売ったかで、法的評価が変わる
という結論になったのである。

ここで重要なのは、暗号資産が証券なのか、商品なのか、基準が明確でなかったことにある。CLARITY Actは、こうした「曖昧さ」を終わらせるための法案でもある。

FTX破綻
FTXの問題の本質は、単なる経営失敗ではない。
分別管理されるべき顧客資産が関連会社の投資に流用されたことに加え、
・FTX(暗号資産取引所)が関連会社を優遇して市場の公平性が損なわれ、
・それを抑止する監督体制も機能していなかった点にある。

顧客資産の分別管理、利益相反の遮断、適切な監督主体など、金融業において当然求められるものが、暗号資産市場では、「誰が何を監督するのか」が明確に定義されていなかった。

その結果、SECでもCFTCでもない“規制の空白地帯”が生まれた。

すなわち、規制の所在そのものが曖昧だったことである。
FTXの破綻は「一社の不祥事」ではなく、市場構造そのものの欠陥とも言える。

◆ステーブルコイン市場の急拡大
USDCのようなステーブルコインは、いまや送金・決済・オンチェーン金融(ブロックチェーン上で取引や記録が行われる金融)の中核インフラになりつつある。

さらに、Coinbaseなどが提供する「USDCを保有するだけで高利回りが得られる」設計も広がっている。

これは、ステーブルコインが
・価格安定、決済・送金、利回りといった特徴を備え、
・実質的に「預金」に近い存在になりつつあることを意味する。

しかし一方で、銀行が資本規制・流動性規制・預金者保護といった厳格なルールの下で運営されているのに対し、ステーブルコインには統一された明確な規制が存在しない。

つまり、
・「預金と同等の機能」を持ちながら、
・「銀行とは異なるルール」で運営されている
という“ねじれ”が生じている。

この結果、利回りを武器に資金が銀行からステーブルコインへと流入する一方で、同等の規制は課されていないため、銀行業界からは「不公平な競争」として強い反発が起きている。

問題の本質は、「機能」と「規制」の不一致にある。

<ステーブルコインの利回りが制限された場合>
USDCの需要には、決済・送金用途、トレーディング用途もある一方、保有するだけで得られる“利回り”が資金流入を強く促してきたのも事実だ。

そのため、CLARITY Actがステーブルコインの利回りを制限する形で成立した場合、一定の需要が減少し、USDCなどの非銀行系ステーブルコインは成長が鈍化しやすくなる。こうした見方の広がりが、CircleやCoinbaseの株価下落につながったと考えられる。

一方、“銀行免許”を持つSoFiの立ち位置は根本的に異なる。
魅力的な預金金利・キャッシュバック・手数料優遇など、
同様の価値をさまざまな形で提供でき、ステーブルコインに利回りを付ける必要がない。

むしろSoFiにとっては、ステーブルコインに利回りを付けない方が、預金との役割分担を明確にしやすく、より合理的な設計となる。

仮にステーブルコイン(SoFiUSD)に高い利回りを付けた場合、
・預金からステーブルコインに資金が流出し、貸出の原資が減少する。
これは、ローン事業でも収益を伸ばしたいSoFiにとって、望ましい設計とは言えない。

※SoFiUSDは発行額と同額の現金によって1:1で裏付けられ、その裏付け資産は主に現金としてFRB口座内に保有されるため、預金のように貸出へ活用することができない。

すなわちSoFiにとって、
預金は預金として集め、
・ステーブルコインはインフラとして使う
という戦略の方が整合的である。

そのため、CLARITY Actが利回りを制限する形で成立した場合、
・非銀行系のステーブルコインは“利回り”という武器を失う一方、
・SoFiは失うものがない
ことから、銀行免許とテクノロジーを併せ持つ企業の相対的優位性が高まる。

その文脈で見ると、SoFiは非常に有利なポジションにある。

<まとめ>
CLARITY Actが現状の流れのまま成立すると、市場構造は大きく変わる。

◆規制の明確化
グレーゾーンが消え、企業はルールの下で事業展開できる。

◆利回りモデルの制限
ステーブルコインを保有するだけで利回りが得られる仕組みは制限され、「利回りで需要を喚起するモデル」は弱体化する。

◆ステーブルコインの決済インフラ化
実質的に「決済インフラ」としての性格が強まる。
すなわち、ステーブルコインは「投資商品」よりも「決済インフラ」として再評価される可能性がある。

◆銀行モデルの優位性が高まる
銀行免許とテクノロジーを併せ持つ企業の優位性が高まっていく可能性がある。

【補足】
CLARITY Actは現在、下院は通過したものの、上院で審議が停滞している。

最大の争点は「利回り規制」であり、銀行業界と暗号資産業界の対立が激しく、結論はいまだ出ていない。

2026年の中間選挙が近づいていることから、法案審議が本格的に停滞する前の2026年中盤までが一つの期限と意識されている。一方、それまでに成立しなければ、法案審議が長期停滞し、成立が大きく先送りされる可能性もある。

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