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USDT/USDCとSoFi USD ― 大きな差を生むAML/KYC設計の違い

前回に続き、今回もSoFiが発行するステーブルコイン「SoFi USD」のシェアが高くなると考える根拠を、さらに積み重ねていく。

今回記載するSoFi USDのAML(資金洗浄防止)/KYC(本人確認)の仕組みは、暗号資産取引市場のみならず、今後SoFiが進出を考える以下市場においても、極めて大きな影響を持っていく。

・B2B決済(企業間送金、貿易決済)
・B2C決済(国際送金、小売決済、給与支払い)
・トークン化市場(国債、MMF、社債、ローン)

<USDT/USDCの送金設計>
USDT/USDCとSoFi USDは、パブリックなブロックチェーン上で動くステーブルコインである。すなわち、特定の銀行や企業に閉じたシステムではなく、共通の台帳と共通ルールからなる「オープンな共通基盤」の上で動くデジタル通貨である。

しかし、その送金設計は大きく異なる。

USDT/USDCの送金は、
・正しい秘密鍵を持っているか
・残高が足りているか
・ネットワークルールに沿った送金か
といった技術要件に加え、「ブラックリスト」に載っていなければ送金は成立する。

ただし、ブラックリストは、次の課題を持つ。
・「最低限」の措置
・判断基準・しきい値は非公開
・凍結は「事後的」になりやすい

よって、ブラックリストから漏れ、規制対象者に使用される事例も存在する。

<SoFi USDには「適格性ステータス」が存在する>
SoFi USDは、USDT/USDC同様の技術要件に加え、送信者・受信者それぞれに対し、次の「適格性ステータス(コンプライアンス・ステータス)」に基づいた送金となる。

・KYC(本人確認)が完了しているか
・制裁・規制対象に該当しないか
・利用可能な地域・用途か
・取引制限がされていないか

つまり、送ってよい相手かどうかを送金時に「総合的に」判断している。

また、この適格性ステータス
・銀行業界共通のAML/KYC枠組みを基礎にしている
・最終的な判定ロジックはSoFiによるが、説明可能
という特徴を持ち、他の金融機関や大企業も受け入れやすい設計となっている。

もちろん、適格性ステータスは固定的なものではない。
・制裁情報や不審取引に基づき即時更新
・定期的なレビューによる継続的見直し
・送金時に最新のステータスが参照される
よって、過去に送金できた相手であっても、状況が変われば即座に送金は停止される。

<換金時の現地金融機関によるAML/KYCチェック>
さらに、SoFi USDは最終的に法定通貨へ換金される段階で、現地の金融機関によるAML/KYCチェックが再度発動する。

たとえば、SoFi USDを受け取ったユーザーは、自分のアカウント画面で「SoFi USDをUSDに換金する」というボタンを押す。(ネット銀行で外貨を円に戻す操作と同じイメージ。)

すると金融機関側で、資金の出所、取引履歴や経路などを確認し、懸念が生じた場合、換金を停止する。これは、通常の銀行預金や送金と同じで、金融機関にとって当たり前の行為である。

よって、万が一、悪意を持ったユーザーがSoFi USDを受け取った場合でも、説明できない資金は使用が止められ、現金として使うことができない。

裏を返せば、このような仕組みが働くことを前提に、SoFiは送金可否を決めている。(制裁対象国など、AML/KYCが制度的に成立しないことが明確なケースは事前に送金がブロックされる。)

SoFi USDが「革新的」なのは、従来銀行が数日かけて行ってきた送金時のコンプライアンスチェックを、送金操作と同時に「リアルタイム」に実行し、送金可否を総合判断する点にある。

<ブラックリスト vs ホワイトリスト“型”>
ブラックリストは「危険な人を避ける仕組み」である。

一方、銀行や企業が求めているのは、
・送信者・受信者の適格性を事前に確認し、
・安全と説明できる人だけを通す仕組み
であり、

・問題が見つかっていないから送った
という消極的な理由では「事前統制」や「説明責任」を満たすことはできない。

すなわち、ブラックリストは「最後のブレーキ」ではあっても、「企業が安心してアクセルを踏める仕組み」にはなれない。

一方、SoFiはホワイトリストの思想に近い運用である。

すなわち、送金可能者をリストアップの上、それ以外の人や法人は送金不可とする完全なホワイトリスト運用ではなく、
・銀行業界共通のAML/KYCルールに基づき、
・制裁・地域・用途・取引状況をチェックしたうえで、
・状態が常に更新される「適格性ステータス」
に基づく運用となっている。

これにより「汎用性」と「銀行や大企業が求めるAML/KYC」を両立させるステーブルコインとなっている。

───

今後、Basel Ⅲにおける暗号資産のCrypto-Asset Standard、GENIUS Actなど、ステーブルコインを取り巻く規制はさらに精緻化されていく。

そうすると、
「送れるかどうか」ではなく
「銀行が説明責任を持って扱えるかどうか」
が通貨選別の基準となっていく。

それを踏まえれば、説明責任を最初から満たす形で設計され、パブリックチェーン上で汎用的に使えるSoFi USDのようなステーブルコインが、実務の標準として選ばれていく流れは自然である。

次回は“J.P.モルガンやシティが「汎用ステーブルコイン」を出せない理由”を掘り下げる。

※【補足】「適格性ステータス」という考え方について
SoFi USDの詳細な技術仕様を直接確認した事実に基づくものではありません。ただし、銀行であるSoFiが、パブリックチェーン上で汎用的に流通するステーブルコインを発行し、国際送金などの高リスク領域にも踏み出す以上、送金の都度、可否を判定する仕組みを持たざるを得ません。仮に判定を行わない設計を採用すれば、説明責任を果たせず、不適切な第三者への資金移転を許容しかねないからです。

また、これは特別なスキームではなく、銀行が従来の送金サービスで行ってきた事前チェックをデジタルに置き換えたに過ぎず、SoFiの強固な技術基盤を前提とすれば、この実装も十分に現実的です。

今回は、この前提に立ち、USDT/USDCとSoFi USDの設計思想の違いを整理しました。

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