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Basel Ⅲという「時限爆弾」 ─ SoFi USDが勝つ構造的枠組み

先日の記事で、暗号資産取引市場における2030年の各ステーブルコインの予想シェアとして 

・SoFi USD:50%
・USDT:25%
・USDC:15%
・そのほか:10%

と記載した。2025年12月現在、USDT60%、USDC25%のシェアと、USDT/USDCの寡占市場となっているなか、なぜこのような逆転現象を描いたのか、本日は「Basel(バーゼル)規制」の観点から、上記予想を補強する材料を書く。

<Basel Ⅲ:Crypto-Asset Standard>
Basel規制とは、国際決済銀行(BIS)の下で策定される、銀行の健全性を確保するための国際的な自己資本規制である。

現在の枠組みであるBasel Ⅲは、リーマン・ショックの反省を踏まえて策定された自己資本規制であり、銀行がどの資産をどれだけ保有できるか、また保有する際にどれほどの自己資本を積まなければならないかを定めている。

当初、Basel Ⅲは暗号資産を想定していなかったものの、市場拡大を受けて銀行が関与するリスクを明確化する必要が生じ、その結果、「2026年1月1日」を国際的な実施目標日とするCrypto-Asset Standardが策定された。

この枠組みは、今後、各国で順次国内規制へ落とし込まれていく。米国、EU、日本を含む主要国では、“2026〜2028年”にかけて実務レベルでの影響が顕在化し、どの暗号資産が金融インフラとして生き残れるのかが方向づけられる。

<Group1/Group2という残酷な線引き>
Basel Ⅲにおける暗号資産規制の核心は、Group1とGroup2という分類にある。この区分は、銀行が自らの規制・資本・説明責任の枠内でどのように扱えるか、実務的な観点から設けられた線引きである。

【Group1:銀行が安心して自らの資産として扱える資産】
Group1には、伝統的な金融資産と実質的に同等と見なせるものが分類され、さらにGroup1aとGroup1bに分かれる。リスクウェイトはともに0〜20%程度となる。

・Group1a:トークン化国債やトークン化預金などが含まれる。
・Group1b:確実な償還請求権と高品質な裏付け資産を備え、銀行規制と同等水準の管理・説明責任の下で発行・運営されるステーブルコインが該当する。

リスクウェイト:リスク度合いを数値化し、銀行が保有する際に必要な自己資本の量を決めるための指標。たとえばリスクウェイト100%であれば、保有する額と同額の自己資本が求められる。

先日のプレスリリースを読む限り、SoFi USDは、裏付け資産を100%現金(USD)でFRB口座に保有する設計を採用する方針のため、将来的にはGroup1bに分類され、リスクウェイト0%相当で扱われる可能性が高い。ただし、Basel Ⅲにおける最終的な分類は各国規制や実装基準に左右されるため、現時点でGroup1b該当が確定しているわけではない。

【Group2:銀行が“自らの資産としては”扱えない資産】
Group2はそれ以外の暗号資産であり、Group2aとGroup2bに分かれる。

・Group2a:価格安定メカニズムと裏付け資産を備えるものの、銀行と同等の償還確実性・ガバナンス・説明責任を満たさないステーブルコインを想定した区分となる。リスクウェイトは原則100%、条件未達の場合は250%が適用される。※USDTやUSDCは、現在公表されているBasel Ⅲの要件を前提とすると、Group2aとして扱われる可能性が高い。
・Group2b:ビットコインやイーサリアムのように価格変動が大きく、裏付け資産を持たない暗号資産であり、リスクウェイトは1,250%と定められている。

<影響は「取引先」にまで及ぶ>
重要なのは、銀行が暗号資産を自己勘定で保有するかどうかではない。より本質的な影響は、暗号資産を常用する取引先と、銀行がどのような関係を築けるかという点に現れる。

銀行は、暗号資産の取引によって生じた資金を受け入れる場合、資金の出所や取引実態について説明責任を負う。特に、USDTやUSDCを法定通貨に転換し、その資金を銀行口座に預け入れる局面では、通常の事業資金以上に厳格なAML(資金洗浄防止)/KYC(本人確認)が求められる。

しかし、USDTやUSDCは最終利用者までを一貫して特定できる構造を持たない。事実、USDCについても、米政府当局の開示において、北朝鮮系ハッカー集団やランサムウェア組織による悪用事例が報告されている。これは発行体の善悪とは無関係に、最終利用者を事前に把握できない構造に起因し、対応は事後的にならざるを得ない。

その結果、銀行側が負う説明責任は重くなり、「高リスク取引先」として扱われやすくなる。

Basel ⅢのCrypto-Asset Standardは、この動きを間接的に後押しする。

Group2に分類される暗号資産への関与は、銀行にとって資本・監督・内部統制の観点から説明コストが高く、結果として「関与する必然性が乏しい取引先」と再評価されやすくなるためだ。

こうして、USDT/USDCを積極的に取り扱う暗号資産取引所、LPなどは、
・取引条件の厳格化
・口座開設の拒否
・(最悪の場合)突然の取引解消
といった圧力にさらされる。Group分けが大きな分岐点となるのである。

<USDT/USDCは距離を置かれる>
こうした環境下で、USDT/USDCの取り扱いが難しくなっていくのは明白である。もちろん、Basel Ⅲだけがその取扱いを規定するものではない。またUSDT/USDCが消滅すると言っているわけでもない。

しかし、銀行が安心して共存できる金融インフラにはなり得ず、銀行決済、企業間取引、機関投資家の本流からは、静かに距離を置かれていく。USDTやUSDCの是非ではなく、銀行と共存可能な金融インフラとしての適格性の問題である。

そして、SoFi USDが選ばれる世界が自ずとやってくる。

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次回は「USDT/USDCとSoFi USD ― 大きな差を生むAML/KYC設計の違い」となります。

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