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SoFi USDの衝撃⑪ ― 暗号資産市場「シェア50%」

前回は、2030年においてもステーブルコイン市場の中核が、暗号資産取引市場にあり続ける理由を整理した。
 
では次に問うべきは、「その巨大な主戦場を、誰が支配するのか」という点だ。
 
今回は、2030年の暗号資産取引市場において、SoFi USDが発行残高ベースで「シェア50%」を占めるという仮定が、どこから導かれるのかを検証していく。
 
これは決して楽観的な願望ではない。
市場参加者の性質、規制環境の変化、そして流動性の集積構造を順に分解していくと、この数字はむしろ自然な帰結として立ち現れてくる。
 
<SoFi USD発行残高:2,400億ドル>
暗号資産取引市場における2030年の各ステーブルコインのシェアとして以下のイメージを持つ。
 
・SoFi USD:50%
・USDT:25%
・USDC:15%
・そのほか:10%
※上記もそれぞれ幅を持って見てほしい。USDT/USDCの失速が予想以上で、SoFi USDのシェアがより高い可能性もあるし、その逆もあり得る。

SoFi USDが圧倒的に“品質の高いステーブルコイン”であることは、これまで繰り返し見てきた。

・米国銀行監督の中に正式に組み込まれている
・発行条件が法律で明確化されている
裏付け資産はFRB口座に保管可能で、破綻リスクが極めて低い
・裏付け資産の極めて高い透明性
・AML(資金洗浄防止)/KYC(本人確認)が銀行レベルで義務化
・破綻時の扱いと償還ルールが銀行法で明確に定義されている

これらを総合的に考えれば、SoFi USDはLPや取引所にとっても、あらゆる側面から極めて扱いやすい決済通貨となるのは明らかだ。

大きな流動性の源泉となっている米国籍LP(流動性プロバイダー)は、米国金融監督当局の厳格な規制のもとで活動している。もちろん暗号資産市場においても、銀行並みのコンプライアンス基準を維持せざるを得ない。

今後ますます進む規制強化により、米国籍LPがUSDT/USDCを保有すること自体が“コンプライアンスリスク”となっていき、USDT/USDCのシェアは長期的には低下していく。

つまり、規制下で活動する大口の流動性資金が、最終的に集約される先はSoFi USDに自ずと限定されていく。

しかし一方で、USDTが一定のシェアを維持し続ける理由も明確である。規制の緩い国や新興国市場では、すでに深く浸透したUSDTのネットワーク効果が極めて強く、米国や欧州圏でシェアを大きく落としたとしても、こうした地域や用途においては根強く使い続けられる可能性が高い

もっとも、その利用はあくまで地域・用途に限定されたものとなり、グローバルに通用するステーブルコインの基軸通貨となることは、もはや考えにくい。

USDCは、その立ち位置の中途半端さが仇(あだ)となる。USDCは米国企業で、規制に配慮したステーブルコインに見えるが、その実は、

・商業銀行ではない(=預金口座を持てない)
・FRB口座を保有できない
・準備金は外部銀行や外部カストディアン(資産保管専門機関)に依存
・外部銀行が信用不安に陥れば、SVBショックと同じ構造的リスクを抱える

・AML(資金洗浄防止)/KYC(本人確認)において最終ユーザーの確認ができず、不正利用に用いられるリスクを内包する

そのため、LPや機関投資家が大量保有することは難しい。USDCは短期的なUSDTからの避難先としての役割は果たすものの、長期的に市場の基軸を担う存在にはなりにくい。

なお、「そのほか」10%には、EUや日本など特定法域の規制に準拠した「現地通貨建てステーブルコイン」が含まれ、地域内の取引所や金融機関が、法令対応や為替管理の観点から利用するケースを想定している。加えて、PYUSDのように、大手プラットフォームが自社エコシステム内での決済や残高管理を目的として発行する、用途が限定されたステーブルコイン群なども「そのほか」に含まれるイメージである。

<2030年:政策金利2%>
政策金利2%を前提とすることは、2025年12月時点では保守的と言える。

現在の市場では、インフレ率が2%台前半で推移するという中期的な見方が定着しており、その環境で名目金利が長期にわたり2%を下回る状況は想定しづらい。

※米国セントルイス連銀(FRED:Federal Reserve Economic Data)からの抜粋
※5-Year Expected Inflation:今後5年間の平均インフレ率がどの程度になると市場が見込んでいるかを示す指標

さらに、FRBや主要エコノミストが見込む中立金利(経済を過熱も減速もさせない理論上の金利)は、コロナ後の構造変化を背景に上昇トレンドにある。そのため、短期的な名目金利は2.5〜3%台へ収れんしていくとの見方が主流で、政策金利の基準となるFF金利も最終的にこの水準で安定していくと考えられる。実際、先日のFOMCでもFF金利の長期的な着地点として3.0%が示されている。

SoFi USDのような“銀行発行ステーブルコイン”の場合、裏付け資産がFRB準備金や短期国債で構成されるため、その利回りはFF金利にほぼ連動する。

したがって、現時点では、2030年のステーブルコイン市場を前提とした収益シミュレーションにおいて、金利2%を採用することは、上振れ余地を残した保守的な設定と言える。

【FRB準備金】
銀行がFRB(中央銀行)内に持つ特別な預金のこと。一般の銀行預金とは異なり、国家レベルで安全性が担保されるため、信用リスクが事実上ゼロの資産となる。銀行(SoFi)はこの残高に対してFF金利に連動する水準の利息(IORB)を受け取る。
 
次回は「利益率90%」を解説する。

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