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SoFi USDの衝撃④ ― 影の主役“LP”が引き起こす「USDT」の凋落

前回は、FTX崩壊や“週末の流動性ショック”を契機として、暗号資産取引所ではUSDT/USDCといったステーブルコインが、銀行決済よりもはるかに安定的で即時性の高い“標準決済通貨”へと移行していった過程を確認した。

しかし、ここで見落としてはならない“重要な事実”がある。市場の安定を支えているのは取引所ではなく、その裏側で流動性を提供する“LP(流動性プロバイダー)”という存在だ。

この視点に立つと、USDTの将来性が根本から大きく揺らいでいることが理解できる。そして、市場が次に依存する通貨として“別のステーブルコイン”が浮上せざるを得ない構造が見えてくる。

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現在の暗号資産市場は、Binance、OKX、Bybitなどの大手取引所が主役である。いずれも莫大な取引量を誇り、スポット取引から先物取引まで幅広いサービスを展開するグローバル企業である。

しかし、米国では厳しい規制から暗号資産取引所が育ちづらいことから、Coinbaseを除き、これら大手取引所の多くは米国“外”に拠点を置く事業者がほぼすべてを占める。このため、取引所だけを見れば、米国法を直接遵守する必要がない以上、USDTやUSDCをこれまで通り使い続けられるように“見える”。

しかし、この“表の構造”だけでは市場の実態は説明できない。

市場の実質的な安定性を担っているのは取引所ではない。大きな流動性の源泉となっているのは“米国籍LP(流動性プロバイダー)”である。彼らはニューヨークやシカゴを拠点とする世界屈指のクオンツ取引企業であり、SEC・CFTC・FINRAといった米国金融監督当局の厳格な規制のもとで活動している。

※クオンツ取引企業:数学・統計モデルや高速取引アルゴリズムを駆使し、市場に膨大な注文(板)を供給する“数理系トレーディング企業”。彼らがいることで初めて、取引所は深い板と安定した価格形成を維持できる。

さらに、米国籍LPは銀行口座や決済ネットワークを介して資金をやり取りするため、FRB・OCCが定めるAML(資金洗浄防止)/KYC(本人確認)といった銀行水準のコンプライアンス要件の影響も避けられない。

つまり、彼らは“金融機関としての規律”から逃れられず、暗号資産市場においても銀行並みのコンプライアンス基準を維持せざるを得ない。この“身動きの取れなさ”こそが、USDTの将来に決定的な影響を及ぼす。

USDTはオフショア発行であり、過去には制裁対象ウォレットや高リスク地域での資金移転に使われた例も報告されている。そのため米国当局から強い警戒を受けており、米国籍LPがUSDTを保有すること自体が、AML・制裁対応の観点から“重大なコンプライアンスリスク”となる。

さらに過去には、USDTを発行するTetherが、グループ企業であるBitfinexの損失約8.5億ドルを穴埋めするために準備金を流用していた事実が明らかになり、米国当局から罰金処分を受けている。現在も完全な外部監査は行われておらず、準備金の透明性は依然として不十分だ。この“構造的不透明さ”が市場の根強い不信感を生んでいる。

こうした一連の問題を踏まえれば、規制が強化されるほど米国籍LPがUSDTを“避けざるを得なくなる”のは必然である。

実際、すでに多くの米国籍LPはUSDTからUSDCへとポジションを切り替え始めている。“USDTリスク”は単なる可能性ではなく、明確に行動として表面化している

そして、この流れに決定的な追い打ちをかけるのが、まもなく施行されるGENIUS Actである。

GENIUS Actは、“米国の金融機関が保有・利用できるステーブルコイン”を、銀行監督の基準を満たす発行体に限定する設計となっている。そのため、オフショア拠点で監督機関を持たないTether(USDT)は、制度の根本設計上、この枠組みに適合しようがない。

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さて、ここで市場構造の“致命的なねじれ”が浮かび上がる。

米国外に拠点を置く取引所にとって、USDTを使い続けること自体は“完全に自由”である。法的にも規制上も、大きな障害はない。

一方、米国籍LPは事情がまったく異なる。GENIUS Act施行後、USDTを保有することそのものが“コンプライアンス違反のリスク”となる。その結果、取引所がUSDTを使い続けても、主要な流動性供給者である米国籍LPはUSDTから離れざるを得なくなる。また、USDTが主要通貨となっている取引所とは、事実上取引しづらくなる。

暗号資産市場の流動性の多くはLPが担っている。“週末流動性ショック”では、米国籍LPが供給を減らした瞬間、板の厚みが急速に消失した。

LPが抜ければ、市場は一気に壊れる。板は薄くなり、大口注文は通らず、スプレッドは拡大し、価格形成はもはや維持できない。この構造が変わらない以上、USDT依存の市場は再び同じリスクに直面する。

したがって、取引所もUSDTと距離を置かざるを得ず、USDTは現在の市場シェアを維持することはできない。GENIUS Act施行後、この通貨の凋落はもはや“避けられない未来”となる。

USDTが使いづらくなる以上、短期的には米国籍LPも大手取引所もUSDCへシフトせざるを得ない。米国籍LPにとって、現状もっともリスクが低く、移行コストも小さいからだ。USDCは短期的に需要が盛り上がるだろう。

しかし、USDCには“銀行のように見えて銀行ではない”という致命的な構造的制約がある。一見、USDCが“最も安全な代替資産”に見えるが、よく見るとその土台は脆い。

次回は、USDCが短期“暫定”王者にとどまらざるを得ない理由──その法的構造、監督枠組み、そして外部銀行リスクという核心に踏み込み、USDCの限界を明らかにしていく。
  
※編集後記:今まで暗号資産取引所は米国“外”企業が多いことから、USDTはそれなりに生き残ることを想定していました。しかし、「大手LPは米国籍が多い」「暗号資産取引所はLPなしでは事実上、成り立たない」という事実を通じ、USDTのシェアは“以前の想定より低くなる”ように感じ始めています。
 
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