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SoFi USDの衝撃⑩ ― 2030年も暗号資産取引が主戦場

前回の記事では、2030年のステーブルコイン市場において、SoFiが暗号資産取引市場(B2B領域)で得られる最終損益として、「30億ドル/年」という一つの数字を提示した。
 
その数字以上に、本当に検証すべきなのは、その数字を支える前提が、現実の市場構造のなかで成立し得るのかである。
 
それでは「2030年のステーブルコイン市場」と、その中で「暗号資産取引市場がなぜ引き続き主戦場となり得るのか」を整理していく。

<2030年:ステーブルコイン発行残高1.2兆ドル>
DefiLlamaのデータによれば、2023年末時点で約1,300億ドル、2024年末時点で約2,000億ドルだったステーブルコイン発行残高は、2025年12月現在、約3,000億ドルを突破した。この2年は年率50%前後の成長が続いており、このペースを維持できれば2030年に2兆ドルを超える水準に達する。

※DefiLlama:ステーブルコインやDeFiの発行残高などを集計する世界で最も広く利用されているオープンソースプロジェクトで、ステーブルコイン市場の標準データとして位置づけられている。

主要金融機関も今後の成長を予測している。Citiは「Stablecoins 2030」で、2030年の世界におけるステーブルコイン発行残高をベースシナリオで1.9兆ドル、強気シナリオで4兆ドルを想定している。

さらに大きな追い風となるのが、米国の「GENIUS Act」である。この法案の施行により、企業や個人が安心してステーブルコインを活用できる環境が整うため、米国を中心にステーブルコイン発行が急速に拡大していく。

上記を前提に2030年のステーブルコイン発行残高は2兆ドルとすることも可能だが、今回はより保守的に1.2兆ドルを前提とする。これは現在の約3,000億ドルから5年で4倍の成長を見込み、年平均成長率に換算すると約30%となる。足元の成長率が今後鈍化したとしても、実現する可能性が高い水準となる。
 
<暗号資産取引市場:4,800億ドル>
2030年のステーブルコイン発行残高1.2兆ドルの市場内訳として以下のイメージを持つ。

・暗号資産取引:40%
・B2B決済:20%
トークン化市場:20%
・B2C決済:10%
・価値保存・そのほか:10%

※上記数値はあくまで一つの指標と捉え、それぞれ幅を持って見てほしい。暗号資産取引市場以外については、今後詳しく見ていく。

暗号資産取引市場が2030年時点でもステーブルコイン発行残高の約40%を占めると考える主な理由は以下である。

【ステーブルコイン前提で稼働済みの市場】
B2B決済(企業間送金・貿易決済など)、トークン化市場(国債・MMF・社債・ローンなどのトークン化)、B2C決済(国際送金・小売決済・給与支払いなど)は、本格的な普及には制度整備やシステム統合を要し、2030年時点ではまだ発展途上にある可能性も考えられる。

一方、暗号資産取引はすでにステーブルコイン前提で稼働している。この成熟度の差を踏まえれば、2030年の時点では、暗号資産取引が中核と見るのは自然である。

【桁違いの回転率】
B2B決済やB2C決済では、清算が終われば役割を終え、トークン化資産も売買頻度は限定的である。価値保存用途(インフレ率の高い国におけるドル代替の資産保有)は、そもそも資金が動かない。

一方、暗号資産取引では、高頻度の売買、清算、証拠金、流動性供給といった用途を通じて、同じステーブルコインが短期間に何度も繰り返し使い回される。この構造的な違いが、暗号資産取引向けのステーブルコイン需要をより大きくする。

【市場の拡大と成熟】
2025年12月現在のステーブルコインの発行残高約3,000億ドルのうち、60〜70%程度が暗号資産市場で使用されていると言われている。よって、すでに2,000億ドル規模の市場を持つ

複数の市場調査レポートでは、年平均20%~20%台後半の成長が見込まれており、この成長率を前提とすれば、2030年までに市場規模は約2.5倍~3倍に拡大する計算となる。実際に、参加者の増加、商品数の拡大、デリバティブ取引の定着など、取引の活性化を裏付ける材料が多い。

さらに、市場構造の変化も見逃せない。

暗号資産取引市場は、中央清算機関や統一的な清算制度を持たないまま拡大してきた。株式市場では取引と清算が制度的に分離・保証されているのに対し、暗号資産市場では同等の清算インフラは長らく十分に整備されてこなかった。

しかし、市場規模の拡大とともに暗号資産取引はインフラとして利用され始めており、清算失敗を「自己責任」として処理することは許容されなくなっている。その結果、取引の安全性を支えるために必要なステーブルコインの待機資金の水準は、構造的に引き上げられていく。

これは暗号資産市場に限った話ではなく、株式市場やデリバティブ市場でも、成熟の過程で共通して見られてきた変化である。

これらを勘案すると、現在2,000億ドル規模の暗号資産取引向けステーブルコイン発行残高が、将来的に5,000億ドル規模へ拡大することは、決して楽観的な成長シナリオではなく、現在すでに形成されている市場構造がそのまま拡張した場合に十分に到達し得る水準である。
 
次回は、
・SoFi USD発行残高:2,400億ドル(シェア50%)
・2030年:政策金利は2%
これらの前提が、なぜ成立し得るのかを、市場構造・競争環境の観点から検証していく。

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