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SoFi USD「リスクシナリオ」― 信託銀行勢がFRB口座を手に入れる

米国で、暗号資産関連企業の「信託銀行化」が止まらない――。
 
象徴的なのが、トランプ大統領の一族「トランプ家」の暗号資産ベンチャーWorld Liberty Financialによる信託銀行免許の申請である。また、日本でも知名度の高いRippleも、信託銀行免許を申請中だ。いずれも、すでに独自のステーブルコインを発行している
 
さらに、新たなステーブルコインの発行計画も相次いで報じられている。
 
代表例が、世界最大のステーブルコインUSDTの米国版として計画されている「USAT」だ。USATは、商品設計をTether社が担い、発行体は米国の信託銀行Anchorage Digital Bankになる予定とされている。
 
各社が自らステーブルコインを発行しつつ、「信託銀行」という器を通じて米国の金融インフラに接近しようとしている。
 
こうした動きと歩調を合わせるように、多くの金融機関がFRB口座へのアクセス申請を相次いで行っている。
 
<共通して目指すもの>
これらの狙いは以下に集約される。
民間銀行リスクからの切り離し
中央銀行インフラへの直接接続
 
なぜならば「SVBショック」を経て、
⚠️民間銀行に預けること自体がリスクになり得る
という現実が、はっきりと認識されたからだ。
 
改めて、SVB(シリコンバレー銀行)ショックを振り返ると、
😱USDCの裏付け資産がSVBに預けられていたため、
😱同行の破綻により裏付け資産が毀損する(=USDCの価値も毀損する)。
その可能性に不安を覚えたマーケット参加者が、USDCを売った結果、1ドル割れを起こした。
 
この経験から導かれる、もっとも単純で強力な解決策はこうだ。
👉 FRB口座に直接、裏付け資産を置く

これが実現すれば、
民間銀行破綻リスクから切り離され
緊急時でも決済と流動性が担保され
「次のSVBショック」を回避できる
そう考えるのは、極めて自然である。
 
<浮上する「スキニー口座」>
こうした流れの中で、FRB決済システムへの限定的アクセスを認める「スキニー口座」の検討が進んでいる。
 
現在想定されているスキニー口座の特徴は以下の通りだ。
FRBが運営する決済システムに接続でき
あらかじめ用意した残高の範囲内で、送金や清算は可能
 
一方で、決済途中で資金が足りなくなった場合に、中央銀行が一時的に資金を補う
当座貸越
ディスカウント・ウィンドウ
といった信用補完機能は与えられない予定だ。
 
<当座貸越>
当座貸越とは、銀行が一時的に資金不足に陥った際、FRB口座の残高がゼロ以下になっても決済を継続できる仕組みである。これは日常的な資金調整だけでなく、
・急激な資金流出
・市場の混乱
・決済の集中
といったストレス時の決済継続を可能にする、極めて重要な機能だ。
 
当座貸越がなければ、たとえ平時で、数時間後に資金が入金されることが確実な場合でも、1ドルでも残高が不足すれば、決済は即座に停止される。
 
当座貸越があるからこそ、確実に「決済を止めない」という信用を得られる。
 
<ディスカウント・ウィンドウ>
ディスカウント・ウィンドウとは、FRBが銀行に対して行う「最後の貸し手」としての融資制度である。
 
市場が大混乱し、銀行間取引や短期資金市場が事実上凍結したとしても、銀行はFRBに対して、国債などの担保を差し出すことで資金を調達できる。
 
「担保さえあれば、最後に必ず資金を供給する存在がいる」という事実が、決済と信用の崩壊を食い止める。
 
<これらが「使えない」ことの意味>
SVBショック時にUSDCが1ドル割れを起こしたのは、
疑心暗鬼から「信用が蒸発した」
という表現も可能だ。
 
仮にスキニー口座があっても、当座貸越やディスカウント・ウィンドウが使えなければ、信用不安時には決済不安が生じ、原因が異なっても結果として同様の事態が起こり得る。
 
つまり、スキニー口座は、
🤔一定の信用確保には役立つかもしれないが、
🤔銀行と同等の「絶対的な安心感」は得られない
というものとなる。
 
<運用利息が付与されない>
さらに重要なのが、
スキニー口座の準備金には「運用利息」が付与されない
という点である。
 
よって、スキニー口座を利用した場合に取れる選択肢は、以下の二択になる。
 
😰FRB口座に準備金を置く → 安全だが収益ゼロ
😰利回りを求めて運用に回す → 再びSVBショックのリスクを抱える
 
つまりSoFiと同じ「FRB口座に預ければ安全で、かつ運用収益も出る」という状態にはなり得ない。
 
Tether/Circle社は裏付け資産から大きな運用収益を得ている。一方で運用収益以外の収益は少ない。虎の子の「運用収益」がなくなれば、事業運営が厳しい状況に置かれる。
 
一見すると、スキニー口座は「FRB口座を持てる=信用力の大きな向上」という印象を受ける。しかし、想定されている条件を精査していくと、現時点では過度に恐れる必要はないという結論になる。
 
<時間軸の問題>
仮に「スキニー口座は大きなメリットをもたらす」と考える人がいたとしても、時間軸の問題もある。
 
「2026年第4四半期までの運用開始を目標」というFRB理事のコメントも出ているが、
・制度設計、パブリックコメント、実装テスト、監督ルール策定など
これらの必要なステップから、運用に乗るまで最低でも数年程度を要すると考えるのが自然だ。
 
FRB口座へのアクセスを巡って訴訟を抱えるFRBにとって、司法判断や政治的説明責任も意識した設計が不可欠であり、安易には決められない。
 
したがって、仮にスキニー口座が将来的に強力な制度となったとしても、市場シェア争いに影響を及ぼすのはまだ先の話だ。その間に、SoFiが躍進するシナリオを変える必要はない。
 
次回は、<「スキニー口座」でも、SoFiの優位性は揺るがない>をテーマに、なぜFRBは商業銀行だけを特別扱いするのかを、制度の核心から解きほぐしていく。

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