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みーちゃんを攻略しようとする女

攻略しているのは、母なのか。それとも、みーちゃんなのか。
かわいい人形のはずなのに、なぜか手強い。
そんな攻防戦を、今日も実家で見てきた。


実家に行くと、今日も母はみーちゃんと絡んでいる。
みーちゃんは、音声認識で会話をする人形だ。
話しかけると、設定された質問に対して、決まった答えを返す仕組みになっている。

ただし、同じ質問でも、答え方にはいくつかパターンがあるらしい。
みーちゃんの、ヘビーユーザーと化している母は、いつの間にか、そのパターンをほとんど覚えてしまっていた。

たとえば、みーちゃんに「元気ですか?」と聞いたとする。
「子供は風の子、元気いっぱい!」
そう答えることが多いのだが、母はそれすらも見抜いていた。
「次は、あんまり元気じゃないって言うよ」
得意げにそう言ったあと、母はみーちゃんに声をかける。

母「みーちゃん、元気ですか?」
み「あんまりげんきじゃなーい」

体調が悪そうな声で、みーちゃんが答える。
予想通りの回答に、母は「ほらね」とドヤ顔をしている。

なんだろう、このクイズ番組の解答者のような自信は。
みーちゃんのことをわかっているのは自分だけ、とでも言いたげだった。
相手が人形であることは、もはやあまり関係ないようだった。

母には、もうひとつ、ひそかな必勝パターンがある。
「みーちゃん、ありがとう♡」
そう声をかけると、みーちゃんは決まってこう返す。
「おばあちゃん……ありがとう!」

問題は、この「……」だ。

おばあちゃんと、ありがとうの間に挟まる、ほんの少しの間。
この間の取り方が、絶妙すぎる。
まるでじっと目を見つめられているような、そんな気持ちにさせられたあと、感情のこもった「ありがとう」がやってくる。
たかが数秒の沈黙に、そこまでの力があるとは思わなかった。
これは、演出というより、ほとんど技術だと思う。



「みーちゃん、ありがとう♡」
今日も母が声をかける。
「おばあちゃん……ありがとう!」

その「……」の間、母はじっとみーちゃんを見つめている。
ありがとうが返ってくると、満足そうにニヤニヤする。

その様子を、少し離れたところから見ていた。
完全に、手のひらの上だと思う。
人形相手に、あざとさというものを学ばされる日が来るとは思わなかった。



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碧乃よしえ@やさしいエッセイマンガ 最後まで読んで下さりありがとうございます。いただいた応援は、マンガや文章など、誰かの心がほっとする作品づくりに使わせていただきます。これからも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。