終点に、夜が明けた。しかし悔いはない
夜中に目が覚めた。
眠れないまま、しばらく暗闇の中で天井を見ていた。ふと思い立ってテレビをつける。

画面に映っていたのは、電車の運転席からの車窓風景だった。誰かが声で解説するわけでもなく、BGMが流れるわけでもない。
ただ、線路と街と、運転席の中から聞こえる電車が走る音と、時々入ってくる車掌さんの声だけがそこにある。
有名番組「〇〇の車窓から」のような、意識高そうなロマンあふれるものはない。
小さなテロップが、ときおり駅名や小ネタをを教えてくれる。それだけの番組だった。
おそらく、見たことのある方も多いのではないかと思う。
見ているうちに、見覚えのある景色が現れた。
自分の住む沿線だった。
しかも、ちょうど最初の駅を発車するところで。
こんな偶然があるだろうか?
まるで私に見てと言っているかのように始まるなんて。
なじみの駅が、ひとつずつ通り過ぎていく。あの踏切、あの橋。
たまに車で通る道が、車窓の向こうに一瞬だけ見えた気がした。
最寄り駅を過ぎたらテレビを消して寝よう、と思った。
でも結局、終点まで見てしまった。
父は元鉄道マンだった。その鉄道会社の沿線に住んでいる。
子どもの頃から、鉄道は生活の一部だった。
弟は子供のころに乗り鉄で、時刻表を眺めているだけで楽しそうだったし、子供ながらに遠征に行っていた。
私は実家を出て引っ越したけれど、気づけばずっと同じ沿線の上を移動してきた。
旅も好きだ。電車でも飛行機でも、乗り物に乗って移動する時間が苦にならない。むしろ、その時間が好きだと思う。車窓にロマンを感じているのだろうか。
それもまた、鉄の血が流れているということなのだろうか。
電車が終点に着いた頃、カーテンの隙間から白んだ空の気配がした。
もう夜明けだった。
しかし悔いはない!
そう思えるくらいには、いい夜だった。
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