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#63🎬️『ぼくの名前はラワン』|言葉がなければ私はパンクするかもしれない

難民としてイギリスに渡った、ろう者のクルド人少年の成長を追ったドキュメンタリー。
『イラクでは手話だけでは人として対等に扱われない』そんな描写があった。

生まれつき耳が聞こえない〈ろう者〉でクルド人の少年ラワン。イラクでの生活にラワンの将来を案じた両親は、イギリスへ亡命することを決意。
難民キャンプで1年を過ごした後、ある支援者の尽力で一家はイギリスに入国。ラワンはダービーにある王立ダービーろう学校に入学することに。生まれて初めて手話を学んだラワンは、先生や友達とコミュニケーションを取ることで、周囲が驚くような成長を遂げていく。そんな中、ラワン一家は突然、イギリス政府から国外退去を命じられるのだった・・

公式サイトより https://lawand-film.com/

『言葉』とは、『伝える』とは、『コミュニケーション』とは何か。
そして、自分の『居場所』とは、『アイデンティティ』とは何か。を改めて考えた。

自分の居場所

ラワンは言っていた。「地球外の星に行きたい。みんなが聞こえない星」。
兄は当然のように「僕も一緒に行く」と応じる。
それは、孤立させられていたイラクでの日常からの切実な逃避願望であり、同時に「理解し合える場所」への渇望だったんだと思う。

『居場所(HOME)』という単語が何回も出てきた。
耳にするたび胸がぎゅっと締め付けられる。
苦しい絶望だったものが、不安を経て、徐々に安心に変わっていく過程が伝わってきた。
それも、学校のスタッフ、地域の人々の支えがあってのこと。

居場所を奪う環境の存在

亡命を決めた家族にとって、
言語も宗教も文化も違う新しい環境での生活は、戸惑いの連続だっただろう。
同時に、『言葉』がないせいで、状況が分からないまま不安定で過酷な日々を強いられるラワンの恐怖を想う。

そんなラワンを、
いちばんの友人であり、頼れる兄は、
英語を上手に操り、誰よりも早くイギリス手話を身につけ、異国でも変わらず支えていた。
どれほどまでに優しく、努力家なのだろう。

それほどまでに、家族全員が追い込まれる状況だったということだ。
『自分がよそ者みたいな気がしてた』、『聞こえないのは自分だけで、「だめな子」だと思っていた』
ラワンにそう思わせる環境が存在していることに憤りを感じる。

『言葉』が心の扉をひらく

​私は今、内面から溢れる感情や思考を言葉にし、口から発することも文章にすることもできる。
それを全部自分の内側に閉じ込める、そう想像しただけで、体の中が溢れかえった言葉でパンクしそうだ。
彼の抱えていた苦しみや葛藤は、私の想像力では到底及ばないほど深いものだったに違いない。

ラワンの手話名(サインネーム)は『なぜ』。
「自分でもなぜこんなに質問するのかわからない」というラワンの言葉に、いろんな思いが駆け巡った。
こんなにも知的好奇心が旺盛な少年が、今まで聞きたくても聞けなかったのだ。

音が空気の振動で広がっている様子を風船を通じて楽しそうに学ぶラワンに未知の可能性を感じた。

『言葉』を得たラワンはどんどん強くなる。

言葉にすることは、『自分の頭の中を整理し、まとめると同時に消化するということ』だと私は思う。

「世界は変えられる」「法律を変える必要がある」と訴える姿は、
もうほかの星に行く必要のない、目の前に未来が広がる、アイデンティティを確立した「ラワン」だった。

言葉を持つことは、自分を定義すること。
彼が『よそ者』ではなく『ラワン』として歩き出した姿に、表現することの根源的な意味を教わった。

手話は言語

手話は道具ではなく言語である。
しかし公用語として認められている国はまだ少ない。
多くの国で言語として認められ、公用語となる日を願う。


同時期に日本語手話とクルド語をめぐる『みんな、おしゃべり!』を観た。

⬇️ろう者の多様性とアイデンティティ



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