AI時代の専門職に必要な「問いを立てる力」
Your Best Solution代表、五木田穣です。
先日のオンライン勉強会では、各自の活動報告をもとに、発信、記事化、ブランド設計、専門性の伝え方について話し合いました。
ブログやInstagramの運用。
記事のアクセス数。
フォロワー数の変化。
専門職としての立場の言語化。
施術、治療、運動指導という言葉の定義。
自分の専門性を、どのように社会に伝えていくか。
そんなテーマについて、それぞれの現場や活動に照らし合わせながら、意見交換をしました。
その中で、これからの専門職にとって避けて通れないと感じたテーマがあります。
それが、AIとの付き合い方です。
今は、文章を書くことも、情報を整理することも、アイデアを出すことも、AIが手伝ってくれる時代になりました。
記事の構成を考える。
文章を整える。
専門用語をわかりやすく言い換える。
発信の方向性を整理する。
資料の内容を要約する。
自分の考えを別の角度から見直す。
こうした作業において、AIはとても有効なサポートになります。
しかし、専門職にとって大切なのは、AIを使うことそのものではありません。
大切なのは、
AIを使いながら、自分の思考を深められているか。
そして、
目の前の人を「観る力」を失わずにいられるか。
ここだと考えています。
AIは便利である。だからこそ危うさもある
AIは、とても便利です。
自分がまだうまく言葉にできていないことを整理してくれたり、複雑な内容をわかりやすくまとめてくれたりします。
自分一人では思いつかなかった視点を提示してくれることもあります。
専門職が発信をするうえでも、AIは大きな助けになります。
特に、自分の考えを文章にすることが苦手な人にとっては、記事作成やSNS発信のハードルを下げてくれる存在になるでしょう。
ただし、便利であるがゆえに、注意しなければならないこともあります。
それは、
自分で考えたつもりになることです。
AIに聞けば、それらしい答えが返ってきます。
整った文章も返ってきます。
専門的に見える表現も返ってきます。
しかし、その答えや文章の中に、
自分自身の現場感があるのか。
自分の臨床観があるのか。
自分が大切にしている価値観があるのか。
目の前の人を観てきた経験が反映されているのか。
ここを確認しないまま使ってしまうと、AIは思考を深める道具ではなく、ただ思考を預ける道具になってしまいます。
専門職にとって、それはとても危ういことです。 考える力が失われてしまうからです。
専門職に必要なのは、答えを受け取る力だけではない
AIは、答えを出すことが得意です。
しかし、専門職にとって本当に重要なのは、答えを受け取る力だけではありません。
むしろ、これからの時代により重要になるのは、
問いを立てる力です。
なぜ、この人はこの動きをしているのか。
なぜ、この痛みが出ているのか。
なぜ、一度よくなったものが戻ってしまうのか。
なぜ、運動が必要だとわかっていても続かないのか。
なぜ、この人はこの言葉を使ったのか。
なぜ、このタイミングで不調が出たのか。
なぜ、身体が変わっても生活が変わらないのか。
なぜ、知識や技術を学んでいるのに、自信が積み上がらないのか。
こうした問いを立てる力こそ、専門職の思考の土台になります。
問いが浅ければ、返ってくる答えも浅くなります。
これはAIに限った話ではありません。
現場でも同じです。
「肩が痛いから肩を見る」
「腰が痛いから腰を見る」
「硬いから伸ばす」
「弱いから鍛える」
もちろん、それが必要な場面もあるでしょう。
しかし、それだけでは観えてこないものがあります。
本当に見るべきなのは、
症状そのものだけではなく、
その背景にある構造です。
身体の使い方。
生活習慣。
仕事環境。
人間関係。
ストレス。
睡眠。
食習慣。
本人の認識。
過去の経験。
不安や緊張。
自分の身体との向き合い方。
目の前に表れている症状や動作は、さまざまな要素の結果として現れています。
だからこそ、専門職には「何が起きているのか」を問う力が必要です。「観る力」が必要です。
AIに聞く前に、自分は何を問うているのか
AIを使うときにも同じことが言えます。
AIに何を聞くか。
どのように聞くか。
どの前提を与えるか。
どの視点から整理してほしいのか。
どこまでを任せ、どこから自分で判断するのか。
これらはすべて、問いの質に関わります。
たとえば、ただ「腰痛について記事を書いて」とAIに聞けば、一般的な腰痛の記事が返ってきます。
しかし、
「デスクワーク中心で、運動不足。慢性的な腰部の違和感を訴えている40代男性に対して、単なるストレッチ紹介ではなく、生活習慣、呼吸、姿勢、股関節機能、心理的緊張も含めて、専門職向けに腰痛を構造的に捉える記事を書きたい」
と聞けば、返ってくる内容は変わるでしょう。
つまり、AIの答えの質は、こちらの問いの質に大きく左右されます。
これは、臨床や指導の現場ともよく似ています。
対象者の訴えをどのように受け取り、どのような仮説を立て、何を評価し、どの順番で介入するのか。
そこには、専門職自身の思考の質が表れます。
AIを使うということは、自分の問いの質が可視化されるということでもあります。
AIは平均化する。現場は個別である
AIが得意なのは、膨大な情報を整理し、一般化することです。
これは大きな強みです。
一方で、現場で私たちが向き合っているのは、一般論ではありません。
目の前にいる、ひとりの人です。
同じ肩こりでも、背景は違います。
同じ腰痛でも、生活は違います。
同じ膝の痛みでも、身体の使い方は違います。
同じ不安でも、そこに至るまでの経験は違います。
だからこそ、AIが示す一般的な答えを、そのまま目の前の人に当てはめることはできません。
AIは選択肢を広げてくれます。
情報を整理してくれます。
別の視点を提示してくれます。
しかし、最終的に判断するのは専門職自身です。
目の前の人の表情。
声のトーン。
呼吸の浅さ。
立ち方。
歩き方。
動作のぎこちなさ。
言葉にならない緊張。
触れたときの反応。
場の空気。
本人がまだ自覚していない違和感。
こうした情報は、現場に身を置いているからこそ感じ取れるものです。
専門職に必要なのは、AIより多くの知識を暗記することではありません。
AIが整理した情報を踏まえたうえで、
目の前の人を観て、感じて、判断し、関わる力です。
そして、感覚的な部分は、AIには絶対分かりません。
Your Best SolutionとAI
Your Best Solutionとは、
その人に合った最善の解決方法を提供することです。
ここでいう最善とは、一般的な正解を当てはめることではありません。
その人の身体。
心。
生活。
環境。
習慣。
背景。
価値観。
関係性。
目的。
現在地。
そういったものをすべて含めて観たうえで、今その人にとって何が必要なのかを考えることです。
AIは、そのための補助にはなります。
情報を整理する。
選択肢を増やす。
考えを言語化する。
専門的な内容をわかりやすくする。
別の視点を提示する。
こうした点において、AIは非常に優秀なサポーターです。
しかし、AIそのものがYour Best Solutionになるわけではありません。
Your Best Solutionを考える主体は、あくまで専門職自身です。
AIは、最善の解決方法を考えるための補助線であり、思考を深めるためのパートナーです。
だからこそ、AIに答えを委ねるのではなく、AIを使いながら自分の問いを深めていく必要があります。
AIに任せていいこと、任せてはいけないこと
AIに任せていいことはあります。
情報の整理。
文章構成のたたき台。
発信テーマの洗い出し。
専門用語の言い換え。
資料の要約。
自分の考えの壁打ち。
読者に伝わりやすい表現への変換。
これらは、AIを活用することで効率化できます。
むしろ、こうした部分は積極的に活用していけばいいと思います。
任せた上で、人間にしかできないこと、専門職にしかできないことを、提案・提供していく。
目の前の人を観ること。
その人の背景を感じ取ること。
違和感に気づくこと。
触れたときの感覚を判断すること。
現場での介入を選択すること。
自分の価値観を明確にすること。
自分が何を大切にしているのかを決めること。
最終的な責任を持つこと。
これらは、AIに任せるものではありません。
自分自身の肌感覚、目で観る、耳で聴く、経験知から導き出されるものです。
専門職としての軸に関わる部分です。
AIを使うことで楽になる部分はあります。
しかし、楽になることと、手放してはいけないものを手放すことは違います。
専門職として、さらに磨いていくために、
AIを活用するのです。
専門職の発信にも、問いの質が表れる
今回のオンライン勉強会では、発信や記事化についても話し合いました。
専門職が発信をするということは、単に情報を出すことではありません。
自分は何を大切にしているのか。
誰に届けたいのか。
どのような問題意識を持っているのか。
どのような視点で人を観ているのか。
何を一般の人に伝えたいのか。
同業者に何を問いかけたいのか。
そうしたものが、発信には表れます。
AIを使えば、文章は整います。
しかし、発信に必要なのは、整った文章だけではありません。
必要なのは、
自分の問いがあることです。
自分の想いがあることです。
問いのない文章は、きれいでも残りません。
逆に、多少不器用でも、そこに自分の問いや現場から生まれた言葉があれば、読む人に届きます。
AIの書いた文章は、
心が揺さぶられることはあっても、
魂が揺さぶられることはありません。
どこか平均的で、表面は整っているけど、中身の深さが出ないのです。その深さは、専門職自身の知識と経験からしか生み出せません。
専門職の発信において重要なのは、正解らしい情報を並べることではなく、自分が現場で何を観て、何を感じ、何を考えているのかを言葉にすることです。
AIは、その言語化を助けてくれます。
でも、依存してはダメなのです。
全部任せてはダメなのです。
AI時代に必要な専門職の在り方
AI時代に必要なのは、AIを否定することではありません。
AIを使わないことが、本質的だというわけでもありません。
大切なのは、AIを使いながらも、自分の感覚を失わないことです。
自分の問いを持つこと。
自分の現場を大切にすること。
自分の言葉で伝えること。
目の前の人を観ること。
違和感を無視しないこと。
判断を他者任せにしないこと。
最善を考え続けること。
AIが発達すればするほど、知識の量だけで専門職の価値を示すことは難しくなっていくでしょう。
情報は、誰でも手に入れられるようになったからです。
文章も、誰でも整えられるようになったからです。
その中で問われるのは、
知識をどう使うのか。(見識)
情報をどう解釈するのか。
目の前の人にどう適用するのか。
どのような問いを立てるのか。
どのような関わり方を選ぶのか。
そこに、専門職としての本質が問われると思います。
知識だけでなく、見識、博識、胆識を身につけたい。
AI時代には、専門職として、人間としての在り方を高めていきたいですね。
おわりに
AIは、専門職の仕事を奪うものなのでしょうか。
いいえ。私は、そうは思いません。
AIによって、作業は効率化されます。
情報整理は速くなります。
文章化のハードルも下がります。
その一方で、
専門職自身の問いの質、思考の深さ、現場での観察力、判断力は、より問われるようになるでしょう。
AIを使うことで、思考が浅くなる人もいるかもしれません。
しかし、逆にAIを使うことで、思考をより深めることもできます。
その違いを分けるのは、
自分の問い、自分の軸を持っているかどうかです。
専門職にとって大切なのは、AIに答えを出してもらうことではありません。
AIを通して、自分の問いを磨くこと。
自分の思考を深めること。
自分の専門性を言語化すること。
そして、目の前の人にとっての最善を考え続けること。
AI時代だからこそ、
私たちは改めて「人を観る」という原点に立ち返る必要があります。
Your Best Solutionとは、
その人に合った最善の解決方法を考え続けること。
AIを使う時代になっても、
その中心にあるのは、やはり人です。
また、次の記事でお会いしましょう。
Your Best Solution
五木田穣
今回の記事では、AI時代の専門職に必要な「問いを立てる力」について書きました。
知識を増やすこと。
技術を磨くこと。
情報を扱うこと。
それらは、これからも大切です。
ただ、その前に、
何を観ているのか。
何を問うているのか。
その問いの立て方そのものが、専門職の在り方をつくっていくのだと思います。
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