コストコではいつも、コーヒーを飲んで帰るだけ
コストコには二、三ヶ月に一回行く。
妻がMINIの白いクーパーで四十分ほどかけて向かうんだけど、毎回、僕はついていくだけ。
もともと彼女ひとりで行くほうがスムーズじゃないかと思うのに、「車で話し相手くらいにはなれるだろう」と付いていきたがるのが僕なわけだ。
いざ到着すると、入口までは平気でも、三分くらいでクラクラしてしまう。
明るい照明、山積みの商品、人の声――全部がめまいを増幅する要素で、ノイズキャンセリングイヤホンをして緩和を計る。
だから僕は毎回、入口からすぐに出口付近にあるフードコートに直行して、コーヒーを飲みながら妻の買い物が終わるのを待つ。 きっと意味がわからないだろう。
本当は一緒に店内をしっかり見て回ってみたいけれど、どう考えても倒れそうで無理だ。というか以前に一度体調を崩している。
妻は買い物をちゃっちゃと済ませて戻ってくるときとあるが、それもまちまちだ。 たまに、あのテーマパークみたいな空間を楽しみながらカートを転がしているので1時間近く帰ってこない時もある。
僕は特に催促することなく、妻から「これほしい?」と画像つきできたLINEに「ほしい」「ほしくない」などと返事を送る。
そんな時、僕もフードコートでぼーっとしているだけじゃあれなので、LINEでクライアントのメッセージを返して時間を潰すことが多い。
在宅ワークにしてるといえど、ネットで完結できるシゴトにしていると、どこでも簡単なシゴトは済ませられるのでとても快適だ。
ちなみに、苦手な雑務は契約している会社のオンラインアシスタントさんにお願いするので、ただコーヒーを飲んでぼーっとしていることも多い。何にせよ、暇にしているのが仕事だと思っている。
そして帰りの車では妻とどうでもいい話ばかりする。 政治家の話とか、名探偵コナンのくだらいにセリフについてとか、隣駅にできた鰻の成瀬に今度行ってようかとか。
そんな雑談をしつつ、エアコンが効いた車内で僕はちょっと眠くなってくる。
正直、話の内容を覚えてないほどくだらないものばかりなのに、それがなんだか心地いい。
「なんでわざわざ来るん?」と妻は苦笑するけど、四十分もかけて行く場所に彼女をひとりで行かせるのは申し訳ない気がするし、たまには外に出ないと僕自身が家に飽きる。
暇な日にスタバへ行ってコーヒーを飲むのと似たような感覚で、コストコに来てフードコートのコーヒーを飲むだけでも、「何かした気分」になれる。
働ける日と働けない日の波がある身としては、そういう小さな外出がちょうどいいイベントになるというか。
そういえば、昔はめまいが起こるなんて想像もしなかったころは、梅田の蔦屋書店で1時間も2時間もウロウロして本を漁るのが楽しかった。そして何冊も本を買って、店内のスタバでコーヒーを飲む。
今はそれができないかわりに、コストコのフードコートのベンチで座って過ごす。ここでも、コーヒーを飲む。
それで“遠くまで出かけた感”を得られるのは、ある意味レトルトカレーみたいに手軽だと思ってる。 味はそこそこで良いし、リフレッシュには十分。
会計が終わった妻がカートを押して戻ってくると、僕は隣を歩きながら「今日もいっぱいやなぁ」と声をかける。
大きな日用品を積み込む作業くらいは手伝えるから、そこだけは少しばかり張り切る。 そんな具合で、コストコの買い物はほとんど妻任せ。
僕はコーヒーを飲みながらLINEで仕事の返事をして、どうでもいい雑談をしながら帰る。
このパターンを繰り返していると、店内がどれだけ変わっていっても僕が知る余地はあまりないけれど、それは別に不満じゃない。
それでも、いつかめまいがマシになったら、妻が楽しんでいるあのコストコの世界をもう一度きちんと体験してみたい。
とりあえず今は、フードコートの紙カップに入ったコーヒーを飲むだけで、まあ十分だな、とぼんやり思う。
おすすめ記事
