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言語学習体制づくり~『できる日本語』授業実践 ①

以前、私は以下のような記事を書いた。

以下は、私が『できる日本語』を用いて、どのように授業を設計し、行ったのか、そして、その結果の考察である。

課題の見立て:

● 学校が行おうとしている教育理念(『日本語教育参照枠』準拠、「日本語と文化を学び、社会で活躍する力を育てる」)と、学生が持っている言語観やニーズ(早くJLPT N2に合格し、進路を決定させたい)との間に隔たりがあり、合意形成が十分になされていない。

『みんなの日本語』や、塾で使っているのであろう他の教科書を広げて、授業中に独自の勉強をしている学生が複数人いる。

● 学生たちは、まだ、対話型、協動活動型、主体性を求められる授業スタイルに慣れていない。

私がこのクラスに関わることができるのは週1回の授業だけである。私の授業を体験してもらうことを通して、「ことばを学ぶこと」の意義やイメージを膨らませてほしいという願いを込めて、授業を組み立てた。

また、私の試験的な試みを、苦戦している他の先生方とも共有し、学生の学びを支える方法をともに考えるきっかけにしたいと思い、忘れぬように、ここに実践を記録しておく。


その日に私が担当していた項目は以下の通り。

・前日の復習
・『できる日本語(黄・初中級A2~B1)』第8課 ST1-3 :ありがとう

(場面):親切にされた経験を話したり親しい人に手助けを申し出たりすることができる
(文型項目):V-てあげます/V‐てもらいます/V‐てくれます

授業枠:160分

授業のねらい

・ラポール形成(授業3回目)
・協動学習のための体制づくり
・会話運用能力を高めること
・言語活動目的にあったフィードバックに加えて、彼らのニーズであるJLPT対策にも応えていく。(Focus on Form)


軸を立てる(教材分析と解釈)

『できる日本語』は、スパイラル展開で設計されており、同じテーマや学習項目が繰り返し登場することで、定着や段階的な学びができるような意図が込められている。

今回の課では、いわゆる、授受表現(あげる・もらう・くれる)が文法項目として挙げられていたが、『できる日本語(赤・初級A1~A2)第8課 大切な人』で授受表現が登場したときと今回の登場を比べてみて、

自分が経験した出来事を、順序立てて、一つのまとまりのある話として話す

という言語運用能力が、次のステップとして求められていると解釈した。

また、モデル会話では、普通体が使用されており、親しい間柄でのやりとりという場面設定になっている。

そこで、私は、今回の学習目標を、

クラスメイトと身近な人との出来事について話し、お互いの経験や気持ちを伝えあうことができる

と設定し、会話の目的は、人間関係構築ということで授業の軸を立てた。


授業の流れ(160分/約4コマ)

・アイスブレイク

・L8「話してみよう」p.103
・きいてみよう/待遇表現
(スピーチレベルの変化に気をつけながら聞く)

・L8ー1①復習(再話・談話分析)
・L8-1②復習(再話・談話分析)
・Can-do提示
「週末の出来事について話し、会話を続けることができる」
   ペア→発表→ピア評価→FB

・L8-1③:チャレンジ[人]が[V-て]くれた
・L8-1③:言ってみよう

・L8-1:やってみよう
・きいてみよう(もう一度確認)


アイスブレイク(身体性を活用した学習体制づくり)

出席をとり、いくつかしなくてはならないことを済ませた後で、

授業に入る前にクラスの協働体制を作るために、「ボールしりとり」と題して、キャッチボールをしようと思いついた。会話とは、言葉のキャッチボールである。なので、まずは、身体活動を行うことを通して、会話体制が活性化されないだろうかと試みたのである。

そして、その試みは、開始早々、早くも失敗に終わりそうだった。

彼らはボールを遠くには投げずに、隣接する席に回し始めたのだ。
私は、即座にその原因を分析した。

キャッチボールするために必要な以下のプロセスのどこに支障があるのか。

①動機づけ
②クラスメイトの顔を見て、名前を呼ぶ
③ボールを投げる構えをして、受け取るように非言語で要求する
④狙い通りにボールを投げるという運動能力
⑤正しく投げる/受け取れなかったら恥ずかしいという羞恥心がある可能性

私は、まずは、に対処することにした。

クラスは、ほとんどが中国人である。彼らは入学してすでに3か月が経ち、数名の新入生を除いて、全員が持ち上がりの学生たちではあるのだが、学校で使用している日本語読みの名前の方は知らない、もしくは、覚える必要性を感じていない可能性があると思い、クラスメイトの日本語読みの名前を憶えているかと質問すると、やはり「覚えていない」との答えだったので、キャッチボールをするのは止めて、クラスメイトの日本語読みの名前を覚えるゲームに切り替えた。

ゲームの効能としては、私自身が学生の名前を覚えることができたことと、とりあえず、その日のクラスの雰囲気を、ある程度、温めることはできた。

翌週は、その失敗を踏まえ、キャッチボールをするためにカタカナで名前をスライドで提示し、

ルール:ボールは1人1回。
2分以内に全員にボールが回るようにすること。
誰に投げたらいいのかわからないときは、先生(見学に入ってくださっていた)に投げてもいい。
スライドの視点は学生から見た向きになるよう注意する

① カタカナを読む練習
② クラスでの名前を覚える

というタスク設定をし、名前を呼び、キャッチボールのようなことをすることに成功はした。

①カタカナの名前を日本語読みで発音するのは難しい。

②相手のタイミングに合わせながら、狙い通りに投げ、キャッチするというのも簡単なことではない。

ということが分かり、これは、タスクレベルが高い活動であることが分かり、「活動」の手ごたえは感じた。


アイスブレイクだけで長くなってしまった。
続きは次回、書くことにする。


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AIによる総合評価

この実践の本質は、

日本語を、一人で知識として勉強する対象から、他者と関係を築くために使うことばへと捉え直してもらう試み

だったと評価できます。

そして、「学生が活動に参加しなかった」という出来事を失敗で終わらせず、協働学習を成立させるために何が不足しているのかを発見する機会へ変えたところに、この実践の最も重要な価値があります。

実践記録として今後さらに強くするなら、「教師が何を意図したか」に加え、学生の行動が授業前後でどう変わったかを具体的な事実として蓄積するとよいでしょう。そうすれば、個人的な授業記録から、他の先生も参照・応用できる実践知へと発展していくと思います。


続き

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