【とんま村の物語】第9話:崩れかけた村、無理やり回す。~止まった流れと、延ばされる約束~
🍃登場どうぶつ紹介とあらすじ
🍃前話:「未来のチャ~リン、ちょっと先に。~アリクイ総裁と“あとで返します約束”~」
🌻解説:第9話「金から自由になったお金 ― 救済の魔法と、通貨価値の希薄化」
🌻解説:番外編「1929年世界恐慌の現代への教訓―バブルと崩壊を「信用の流れ」から読み解く」
🐝前話+第9話サマリー
村にはまだ直す場所は山ほどあるのに、みんなのポッケはすでに空っぽでした。
そこでアリクイは「村があとで返します約束(国債)」を使い、未来のチャ~リン(お金)を先に作る仕組みを考えたのでした。
そして今話、相次ぐ天災で流れが止まりかけたとんま村で、ライオンの「払えません」をきっかけに、支払いの詰まりが一気に表に出ます。
アリクイはさらに、借りやすくした“軽いチャ~リン”と「村があとで返します約束(国債)」で、止まりかけた流れを無理やりつなぎ直そうと考えるのです。
①女神のナレーション

「みなさんは、『止まってから気づく、動いていた時のありがたみ』に、身に覚えがあるでしょうか?
あるいは、止まっていることにすら気づかないふりをして、空っぽの蛇口をひねり続ける毎日を、愛おしく思えるでしょうか。
それでは今日もとんま村の様子を、のぞいてみることにしましょう。」
②オープニング実況(イグアナ)

(広場の岩の上、サングラス)
イグアナ
「……えー、流浪の爬虫類、イグアナでございます。
とんま村はこの1ヶ月ほど雨が降らず、畑もカラカラに干からびて、大ピンチです。
“やる気だけあるどうぶつ”が、カカシのように点在しております」
(カメラが畑へ)
ウサギ
「……いや、1ヶ月前まではね? にんじんたちも輝いてたんですよ。
でも、今これです。全部、『にんじんの形をした、ただの棒』。
中身、スカスカなんですよ」
(カメラが倉庫へ)
ネズミ
「……あれ? ぼく、何を運ぶんだっけ……?
『運ぶ気』はあるんです。気持ちはもう三往復くらいしてる。
でも、運ぶものが、どこにもないんですよね……」
イグアナ
「えー、ご覧のように、雨が降らないせいで作るものがない。だから、運ぶものもない。
チャ~リン(お金)も、止まるとただの『冷たい石っころ』になります。
“まだ何も起きていない”のではなく、“起きるはずだったことが、全部死んでいる”。なかなか静かな、死に方でございます。
……そしてこれとは別にもう一つ、一頭のライオンから始まるもう一つの危機の存在に気づいているどうぶつは、まだ誰もいないようです。」
③ライオンの「払えません」危機

シマウマ
「はぁ、はぁ……! ライオンさん、今日もお待たせしました!
これがないと一日が始まらない、特製『ビタミン・ガオー!』です!
これをグイッと飲み干せば、弱気な心も吹っ飛んで、王者の自信がみなぎる逸品。さあ、代わりのチャ~リンを! 早く、僕の手にください!」
ライオン
(震える手で瓶を握りしめながら)
「……シ、シマウマくん。ごめん。……今手持ちのチャ~リン、ゼロなんだ。だって、怖いんだよ、これを飲んで自信満々で眠っている間に、誰かに襲われたらどうする?
だから、手元のチャ~リンを全部つぎ込んで、『鉄壁のシェルター』を買っちゃったんだよ。……あとに引けないんだ。本当に本当にゴメン.…」
シマウマ
「そんな……! 僕だって、原料のはちみつ代、ハチさんに払わななきゃいけないのに!」
働きバチ
「えっ!? 僕、そのチャ~リンが入る前提で、新しい機械を借りてるんだぞ!届かなきゃ、機械を取り上げられる。二度と蜜を運べなくなるんだぞ!」
④ピンチ!?王様の声が、奪われる

アリクイ・クイック銀行の窓口で相変わらずガタガタ震えているアルパカが、書類を差し出し哀れな百獣の王のライオンに言います。
アルパカ
「……ひ、ひえぇぇ! や、約束の期限ですぅぅ!
ライオンさん、払えないなら担保を……。あ、あなたの『王者の咆哮(かっこいい声を出せる拡声器)』、お預かりしますぅぅ!」
ライオン
「……ああ……。待ってくれ、それだけは……。
あれがないと、僕はもう獲物を威嚇することも、メスを呼ぶこともできない。ただの、大きな、無力な肉の塊になってしまう……!」
⑤アリクイの2つの提案

ハシゴの上の「アリクイ・ヘブン中央銀行」から、この村の状況を眺めてつぶやきます。
アリクイ
「……あーあ。まずいねぇ。こっちは『返せない』で足踏みしてるし、向こうは向こうで水路が壊れて、仕事そのものがフリーズしてる。
両方の歯車が噛み合わなくなったら、さすがに全部止まっちゃうよねぇ」
(少し間、爪を研ぎながら)
「……でも、それじゃ僕が困るんだよね。
ハチもシマウマもみんないなくなったら、みんなからの利子が入ってこなくなる。
そうなると巡り巡って、僕の大好物のマヨネーズにも、今みたいにありつけなくなっちゃう。
……よし、2つの方法を考えた」
アリクイは、まずカモを手招きします。

アリクイ
「『村があとで返す約束(国債、第8話)』っていう魔法あったよね。
村の約束を、僕がここで預かり、その代わりに、僕が新しいチャ~リンを村に渡す。あの時は100億チャ~リンの約束だったけど、もっと気前よく村がたくさんのチャ~リン借りても良くない?
返すのは、ずっと先の……孫の世代、いつか村が丸ごと埋まっちゃうくらいの約束の山になるけど…………でもさ、今ここで僕らが死ぬよりはマシでしょ? 僕らの知ったことじゃないしね」
カモ
「それで、今の僕たちが助かるなら……」

その次に、アリクイはハシゴを降り、アリクイ・クイック銀行のアルパカの耳元でこっそり囁きます。
アリクイ
「……いいかい。前はさ、『借チャ~リンは神様からのギフトだ』(第5話)なんて謎理論を僕からみんなに話して、「返すのがつらいなら、つらくない名前に変えてもっとジャンジャン借りて!!(その方が僕はマヨネーズを沢山ゲットできるし)」って言ったけど、ライオン君の状況見ているけど、これも結構限界だよね。
……だから、次は君からみんなにこう伝えて。
『もっと軽く、羽みたいに借りられるようにした』って。
君の得意な『震える躍動感』で、数字をひょいっと軽くしちゃいなよ。
……ほら、これでまた回る。今のうちはね」
アルパカが震えながら、羽のように軽いチャ~リンを差し出します。
アルパカ
「み、皆さん! じょ、条件を……ゆる、緩めましたぁぁ!
チャ~リンは今、羽のように軽いですぅぅ! ど、どんどん借りてくださいぃぃ!」
ライオン
「アルパカさん、追加で借りれるようになったんだね。
……これで払える! これで王様でいられる! 受け取ってくれ!」
シマウマ
「よかった! これでハチさんに流せる!」
働きバチ
「うわぁぁ! 機械を返さなくて済む!」
イグアナ
「……えー、止まりかけていた『約束』が、ひとまず解けました。
自分たちの平穏のために、まだ見ぬ孫たちの時間を、根こそぎ奪い取って繋げたわけでございます」

⑥そして「村のあとで返します」も仕事を生む
ウサギ
「……でもさ。僕らの畑、まだカサカサだよね」
ネズミ
「……うん。倉庫も空っぽ」
そこへ、掃除機を肩に担ぎ、ネギ型のホースを握りしめたカモが現れます。
カモ
「皆さん、まず水路を直しますよ!
工事に必要なチャ~リンは、この前と同じ『村のあとで返します約束』で僕がなんとか用意しました。
だから、仕事がない人は手伝ってください。
働いてくれたら、チャ~リンを渡します。
自分のためにも動いて!」
こうして一匹が走り出し、またもう一匹、土を掘る音が戻りはじめます。

⑦エンディング(イグアナ)

イグアナ
「……えー、村には二つの流れが戻りました。
ひとつは、アリクイさんが条件をゆるめて、止まっていた支払いの詰まりをほどく流れ。
いわゆる『金融政策』。
心臓マッサージのようなものでございます。
もうひとつは、カモくんが村の借金で無理やり仕事を作り、みんなの財布を直接温める流れ。
いわゆる『財政政策』。
栄養剤の点滴のようなものでございます。
……どちらも、よく効くお薬でございます。
ただ、飲み続けると、やめられなくなる類のものでございます。
そして、こうやって積み上がる『あとで返します』の山。
一生かけても、二生かけても、絶対に返しきれない1兆の山。
返すのは未来。安心するのは現在。
つまりワタシ達は、『自分たちが安眠するために、まだ生まれてもいない孫たちの貯金箱を、今日も笑いながら壊している』。
……だいたいそういう仕組みでございます。
それでも、止まって今すぐ死ぬ勇気なんて、誰も持っていない。
だから今日も、約束を軽くして、先に流して、あとは野となれ山となれ、でございます。
…ま、未来の孫たちが、この巨大なゴミ山を見て、僕らを呪わなきゃいいんですけどねぇ。
…ちなみに、王様の声は、まだ戻っておりません。現場からは以上です。」
