ペディキュアと刺激臭
なんと私が書いた記事が公式に取り上げてもらえました!
我が家で起きている日常と、家庭内におけるパワーバランスを赤裸々に書き出したのがよかったのか、思いのほか気に留めてくださった方が多いようで…。
きっと私のライフスタイルが、OKAMURA様の“ライフスタイルに寄り添った家具作り”という理念。
そして「子どもと一緒に家具も成長していく」という学習家具のコンセプトと相性が良かったのかもしれません。(ツクエホシイナー、スリスリ
(娘が粉砕したショコラウサギさんの机と、実家にあるじぃじが使う元勉強机の話がでてきます)
せっかく見つけていただいたのだから、その後のペディキュアの行方も伝えておかないといけまいよということで、私の肩身の狭い家庭生活を再度さらそうと思いますので、よろしければ見ていってください。
前日譚はこちら↓↓↓
「ママはサンダルを履くからネイルを買わないといけないでしょ!」
と怒られてしまった私だが、内心はすごく嬉しかった。
そして、この会話を妻のいないタイミングを見計らって私だけにしてくるというのが、なんというか、とても感慨深かったのだ。
久しぶりにサプライズでもするかー。
などと少しワクワクしていると、ダッシュで洗面所に向かう娘の姿が目に入った。
…そうだった。娘はとても口が軽いんだった。
というより嬉しくて誰かに話さずにはいられないのだ。
そしてあいにく我が家には3人しかいない。
せっかく極秘ミッションとして始まった妻へのプレゼント計画だったが、ツメが甘かったようだ。
妻は、シャワーを浴びている最中に、自分の誕生日プレゼントがマニキュアに決定したことを知らされることになる。
しばらくすると、満足気な表情をした娘が、リビングのドアを開けっぱなしにして戻ってくる。
「じゃあ今度ママに内緒で選びに行こうか」
もはや内緒でもないのだが。
苦笑いしながらそういう私に向かって娘が言い放つ。
「行かないよ」
「〇〇ちゃん手紙書くから」
やられた。
娘はとにかく買い物が嫌いだった。
我が家では娘が幼少の頃から、買わないものはいくら泣いても喚いても買わないという方針をとっている。
その甲斐もあり、今では欲しいものを前にして駄々をこねることはなくなった。
そしていつしか、欲しいものはじぃじやばぁばなど、買ってくれそうな相手を選んで交渉するようになってしまった。
我々と買い物にいっても、自分の欲望を満たせないうえ、親の買い物に付き合わされるのは目に見えている。
そう、私たちとの買い物は、娘にとっては不要な時間なのだ。
とはいっても、せっかくなら娘が選んだものを妻にあげたい。
「見に行ってみようよ。いろんな色があるよ?」
私はスマホに表示したマニキュアを娘の前でチラつかせる。
「みるみるー!」
素早い反応を示した娘にスマホを奪い取られる。
それにしても、教えたわけではないのに、スワイプやスクロールを使いこなせるのはなんでなんだ。
高速で横に流れていく画面を後ろから眺めていると、娘の指が止まる。
「パパ、これがいいよ!」
娘はリップマキシマイザーを指差す。
「そうだね!じゃあこんな感じの色にしようね」
残念ながらそれは指に塗ることはない。
その後も、あの手この手を使って娘を誘惑したのだが、決意は固いらしく、本当に一緒に来てくれないらしい。
そして今日、妻と娘はピアノのレッスンで外出する日だ。
幸い私は午後から何も予定がない。
よし、せっかくだしマニキュアを探しに行くか。
私はサンダルを履き、いつものようにシェアサイクルのサドルに跨る。
デパートまでは物の10分で着く。
今日もとんでもなく暑い。
近くの返却ポートに自転車を返した後、商店街を抜けていく。
デパートに入ると、冷気と一緒に、コスメフロア特有の匂いに体が包まれる。
私は結構、この匂いが好きだ。
なんだか、少しだけ背筋が伸び、しゃんとした気分になれる。
私は何事もなかったかのように、ディオールの前を通り過ぎ、お目当てのマニキュアを手に入れた。
娘はピンクを激推ししていたが、この時期らしい青がいい。
子育ての合間のおしゃれは大変だし、あまり使うことはないかもしれない。それでも、少し、日常とは離れたよそ行きな色を選びたかった。
きっとこの色なら、妻の小さな爪にも映えるだろう。
なんだか、結婚する前のことを思い出すような時間だった。
そして、会計を済ませ、片手で隠れるほどの小さな箱を受け取った後、私の足は自然と、地下にあるワインカウンターへと向かっている。
買い物をして一息。
私は、グラスに注がれたスパークリングワインを眺めている。
外と比べて随分涼しいと感じたが、それでも冷たい液体を注がれたグラスはすぐに露でくもった。
うーん。
この小さな箱だけでいいのだろうか。
これでは、私がデパートにワインを飲みにきたついでにプレゼントを買ったみたいではないか。
私は残りのスパークリングワインを飲み干し、再度、炎天下の中に足を踏み出した。
そうだ。
バスボム(入浴剤)を買おう。
これなら、娘も喜ぶし一石二鳥だ。
目的の店もすぐ近くにある。
そこには色とりどり、香りとりどりのバスグッズが売ってある。
しばらくすると、笑顔の素敵な店員が話しかけてくる。
「なにかお探しですか?」
私はかくかくしかじかと説明し、プレゼントのサイズをカサマシできる商品がないか尋ねた。
「それでしたら、クレイソープはいかがですか?」
でかいプラスチックに入っているそれは、まるで粘土のようだった。
7色の粘土のような物体。
これは絶対に娘が喜ぶやつだ。
「これを粘土みたいにして遊んで、お風呂にいれて泡立てたら泡風呂になるんです!」
おお、まじか。
最高じゃないか。
「じゃあこれにします」
そういって値札を見ると1800円もした。
まぁ、粘土遊びをした上に、風呂キャンまで回避できるんだから安いものか……
結局、ラッピング用の袋も買ったら2000円をかるく超えた。
どうもバーコード決済をするようになってから財布の紐が緩い。
キツネにつままれたような気持ちで店を出る。
腹が減った……。
何かがっつりしたものが食べたい。
と思っていたら、すぐそこにラーメン屋があった。
しかも、見るからに濃ゆそうな、二郎系だ。
吸い込まれるように券売機に向かうと、ここでもバーコード決済が使えるらしい。
なぜだろう。
滅多にいかないデパートに入ったせいだろうか。
記事が公式に紹介されたせいだろうか。
それとも空腹にスパークリングワインを流し込んだせいだろうか。
贅沢がしたい。
私は欲望のままにトッピングをした。
麺増量、油マシ、ニンニクマシ、焼豚追加、たまねぎ追加、海苔追加。

そして欲望のままに炭水化物と油脂を摂取した。
麺はごつごつとして歯ごたえがあり、チャーシューは繊維がほどけるように柔らかい。こってりとした豚骨醤油のコク、脂の旨味、玉ねぎの食感、海苔の香り。苦みを感じるほどのニンニクのパンチがすぐあとを追ってくる。
あっという間に完食してしまった。
水をコップに2杯、3杯と注ぎ、飲み干す。
そして、店を後にする。
背徳の味だった。
結局、ワインとマシマシ飯でプレゼント代の半額ぐらい使ってしまったが、なんだか、今日の出費は悪くない気がする。
それにしても、口の臭いが大変なことになっている。
しかも、酒を飲んだので自転車も使えない。
最近、周りのことが気にならなくなってきたとはいえ、さすがにこんな刺激臭をまき散らしながら公共交通機関に乗る勇気はない。
それにしても、あの店にいた同胞たちの中にはスーツ姿の人もいた。
彼は午後からどうやって過ごすのだろうか。
仕方がない。
歩いて帰ろう。
先週は、ひとりで夏探しをしてきたばかりだ。
もしかしたら、自分の住む町でも思わぬ夏を見つけることができるかもしれない。
うだるような暑さの中、私は歩いて自宅を目指す。
夏はそこら中にあったが、口の中に怪物を飼った状態ではあまり楽しめないようだ。
そしてコンクリートの暑さに負けたのだろうか。
長年愛用したサンダルの底パコパコするようになった。

異臭を放ちながら、ぎこちない歩き方をする私は着実に歩を進め、なんとか自宅にたどり着くことができた。
パコパコのサンダルはなんとか皮一枚で持ちこたえた。
マンションの管理人さんが酷暑の中、庭木に手を入れている。
私に気づいた管理人さんは「こんにちは」とあいさつをしてくれた。
私はもごもごと「こんにちは」といい、下駄のような音がするサンダルを引きずりながらエレベーターに逃げ込んだ。
きっと次にエレベーターに乗った人は誰かが中華の出前を取ったと思うに違いない。
自宅に戻った私は、シャワーで体に残る二郎を綺麗に流したあと、こうしてパソコンに向き合っている。
それにしても、娘の善良な芽から始まった今回の旅であるが、散々な目にあった。
善良さといえど、時に人をトラブルに巻き込むことがあるというのを身をもって体験した一日となった。
いや、人のせいにしてはいけない。欲望のまま振舞った私に天罰がくだったのだろう。
いずれにしても、ニンニクの匂いがする言い訳などしようものならば、さらに悲惨な一日になりかねない。
まずは、コンビニでブレスケアを買ってこなければ。

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