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むしっぽい

ルリナ がマナミの彼氏と対面したらしい。

以前にこの備忘録にも書いた、ルリナの母親であるマナミの「いい人」についてのことである。

マナミが彼氏を連れてアパートに帰って来て、いきなり ルリナとの顔合わせが行われたのだという。

「いつかそういう日が来るとは思ってたけど、
 急だったんで、ちょっとびっくり…」

ルリナは、さらっとそう言った。

「どんな人だった?」と私は尋ねてみた。

「うーん、むしっぽい・・・」
ルリナがそう答えてきた。

意味がよく分からなかったので、もう一度訊いてみると、ルリナはこんなふうに言い直してきた。

「昆虫の妖怪みたい…」

それを聞いて、おもわず私は吹き出してしまった。
ほとんどの他人が得体の知れない怪物やゾンビのように見えてしまうというルリナには、その彼氏のこともやはり妖怪のように見えてしまったんだろうと思う。
それにしても、昆虫の妖怪っていうのは、どんな感じなんだろう。

ルリナが言うにはその男は「カマキリの仲間」に似ているそうだ。

カマキリが人間になった姿を想像してみた。
例えば、顔がきゅっと引き締まっていて、体の線も細い感じなんだろうか。
そう考えてみると、なんとなく察しがつく気もしてきた。

性格はどんな感じの人だったかを尋ねると、「それはまだよくわかんない…」との答えが返ってきた。
まあ、そりゃそうだろうな。
一度会ったばかりで、すぐに相手がどんな人間か理解できるわけもない。

その男はわりと無口で、無表情でぼうっとした感じの人だという。
ルリナからすると「どうしてお母さんがあんな冴えない妖怪を好きになったのか分かんない…」という。
まあ、そこは男と女の仲だから、当人達にしか理解できない関係というものもあるのだろうと私は思う。

少し心配になっていた私の表情を見て、ルリナは明るく言った。
「大丈夫だよ! わたしは、てきとうにやってくから…」

その男が母親の彼氏なら、なんとか自分もその男を拒絶しないで、うまくやっていくしかない…という意味なんだろう。
意外にルリナには大人っぽい一面もあるんだな…と感心してしまった。

いずれ、その男がルリナの新しい父親になるのだろうか。

カマキリでもカブトムシでもいいから、その彼がルリナに対して優しい人であってほしいと願う。


ところで、カマキリっぽいといえば、学生時代に中古で買ったこのアルバムのジャケットにあった宇宙人がカマキリっぽい気がする。
ロジャー・テイラー『ファン・イン・スペース』

『ファン・イン・スペース』

「きっと俺には宇宙のどこかにファンがいるんだぜ!」
と言わんばかりのアルバム

1970年代から80年代にかけて世界的にブームを巻き起こした伝説のバンド「クイーン」のドラマーでもあったロジャー・テイラーのソロアルバムの1つである。

この男、私が好きなミュージシャンの1人。
ドラムの技術も超人的に素晴らしいが、ドラマーなのにハスキーヴォイスの歌声も美しすぎるし、バンドヴォーカルのフレディー・マーキュリーよりも高音域を歌い上げることができたという事実は、もう凄すぎるとしか言いようがない。
学生時代はメディカル・カレッジで生物学や解剖学を学んで、医学にも詳しい一方で、若い頃から趣味でレーサーとしても活躍していたことは有名。
甘いマスクで世の女性達からはさぞかしモテモテだっただろうに、本人はそれを鼻にかけることなく、曲づくりとカーレースにのめり込んでいたというダンディズムもシブすぎる。

若かりし頃のロジャー・テイラー

そのロジャー・テイラーの万能っぷりが発揮されているのが、
例えば、『I Wanna Testify』という曲。
何がすごいかというと、これ、バックの楽器演奏からコーラスまで全部ロジャーが1人で音を重ねてやっているとのこと。
つまり、ギターも、ドラムも、コーラスも、それぞれ高度なテクニックを駆使しているけれども、それはすべてロジャー自身によるものだという。
しかも、まだAIも、コンピュータ制御のボイスチェンジャーやオーディオミキサーも無かった1970年代に、こんな曲作りはまさに職人技である。

だったら、彼はバンドなんかに入らないで、ソロで活動すればよかったんじゃないか…とも思ったりするのだけど、彼の入っていたクイーンというバンド自体がそういう人間離れした強者達の集まりだったんだろう。
だからこそ、音楽史に名を刻むような伝説のバンドになったんだろうな…とも思う。

モヒよろ光ったら(もしよろしかったら)聴いてみてください。
( beniiroringoさん の名言を私も使ってみたくて…。)

" I Wanna Testify "(Roger Taylor)

何かに熱中して執着する人を、「〇〇の虫」と表現したりする。
例えば、「仕事の虫」なんていうのもそうである。

そういう観点からすると、ロジャー・テイラーは職業としての音楽にのめりこむ「仕事の虫」でもあるけれど、興味を持ったことはどんな趣味でもプロ並みにとことん追求してしまうところから「趣味の虫」でもあったともいえるのかもしれない。
それって、生きることをとことん謳歌しようとする虫なんだろう。
それは、ちょっと素敵な虫だと思う。

虫は虫でも、ルリナが会ったカマキリ男とロジャーは、きっと全然タイプが違う虫なんだろう。

あれ、なんのはなしですか?

どうしてこんな話の展開になったんだっけ…?