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ミラノサローネ取材で花咲くミラノの街へ行く 前編 【トラベルライター間庭がハコ推し!】

旅の質が重視され、その場でしかできない体験が求められている。今回は家具とデザインの祭典、ミラノサローネが開催される4月のミラノを体験した。デザインウイークのミラノは街を歩くだけで発見や驚きに出合えると確信。その地をその時期に訪れるからこその、プライスレスな旅がかなうのだ。

花咲くミラノのデザインウイークで
インテリアの国に没入する

映画「プラダを着た悪魔2」が好調らしい。出版業界の友人の反響も大きく、ロングヒットの予感。ならば見ねば…と久々に映画館に出向き、号泣。それにしても、あれから20年もたったのか…! 最初の作品が公開された2006年は、私はニューヨークから東京に拠点を移して、まだニューヨーカー気分が抜けなかったから、1シーンごとがきらめき、パリでの決別が心に響いた。

そして今回はニューヨークとミラノが舞台。ミラノの街が、時代とともに衰退していく、かつて栄華を極めた存在として象徴的に描かれ、私は強く共鳴した。というのも2週間前にミラノを訪れたばかりだったのだ。

ミラノコレクションで知られるファッションの発信地であるとともに、ミラノはデザインの街でもある。4月のミラノはミラノサローネこと「Slone del Mobile、Milano」に沸く。「ミラノサローネ国際家具見本市」は毎年4月に開催される世界最大規模の家具・デザインの祭典。「ML(モダンリビング)」などインテリア雑誌での執筆やスタイリングもするので、その名にはなじみがあり、何度も訪れているインテリア業界の方々から情報を得ていたけれど、体感するのは初めて。頭で思い描く以上に大規模であり、奥行きがあり、鮮烈だった。メーン会場となる広大な展示場のミラノサローネ以外にも、フォーリサローネ(サローネ外)として、インテリア関連の展示やイベントが各地で行われ、街全体が華やぐ。インテリアの国に迷い込んだような没入体験だ。

2日間という強行滞在でも
プライスレスな旅をかなえるミラノ

ミラノ滞在は正味2日間。深夜便でたどり着き、3日目の朝には帰国する、という強行スケジュールだった。けれどその48時間の濃密なこと!ミラノサローネでの取材はもちろん、市内での各イベントやパーティーにも出席し、ドゥオーモやトリエンナーレなどの観光もかなった。今や街が機能的に進化し、そんな過密なスケジュールでも、スムースに移動できることを実感した。

今回は世界21カ国で30以上のホテル、リゾート、レジデンスを展開しているローズウッド ホテルズ&リゾーツ(以下、ローズウッド)によるプレスツアー。世界各国のメディア関係者がミラノに招待され、デザインウイークのさまざまなイベントに参加する。つい先日、「ローズウッド宮古島」で取材をしたというご縁で、その世界観を体感し、1人でミラノに飛んでいける身軽な人、という条件にかない、光栄にもたった1人の「日本代表」になったのだ。こんな幸運、なかなかない。

ではなぜ、ホテル業界であるローズウッドがデザインウイークに出展するのだろうか? しかも現在イタリアでオープンしているのはトスカーナだけ。ミラノにローズウッドホテルはまだ存在しないのだ。2027年にはローマ、ヴェネツィアに、続きミラノにも開業予定ということで、その世界観を伝える目的で、今回の参加することを決意したという。

その濃密すぎる28時間を時系列で追ってみる。

エスプレッソ片手にアート鑑賞
&トークという粋な朝イベント

ミラノの空港にたどり着いたのは深夜0時。ホテルにつくころには日付もとっくに変わっていた。その数時間後には朝のイベント「In Dialogue Breakfast」が。これはエスプレッソを片手に、朝ごはんを食べながら展示を鑑賞し、対話やトークセッションを楽しむという内容。

この時期だけの特設ギャラリーでの「Objects That Speak」はローズウッドの世界観を具現化したエキシビション。2027~28年に開業予定のミラノのホテルでは、デザイン界のレジェンドであるアンドレア・ブランツィ(Andrea Branzi)の世界観を空間デザインのモチーフにすると発表。ブランツィは23年に84歳で没するまで各分野で革新的なデザインを世に出した建築家・デザイナーであり、トリエンナーレでは、建築家・伊東豊雄がキュレーションした企画展も10月まで開催されている。ミラノの街を象徴する巨匠であるのだ。その作品の幅広さは驚くばかりで、個人の偉業とは思えない。現代のダ・ヴィンチと呼びたくなるようなマルチな才能だ。

会場にブランツィ晩年の作品として22年に発表された和紙の照明などを展示。曲線を描き、和紙にメープルなどの葉が透けて見えるデザインは有機的で、柔らかい光を放つ。壁のインスタレーションもコンセプチュアルだ。そして世界各地にあるローズウッドホテルのロビーなどの空間を彩るアーティストの作品も一堂に集められ、展示。これがかしこまっておらず、家具の中に自然に置かれたようなディスプレーなのが、ホテル業界ならではだ。アーティストのマーク・クイン(Marc Quinn)によるブロンズに輝く盆栽、フレデリック モーレンスショット(Frederik Molenschot)のランプなど、どれもオーガニックな揺れを感じ、いい意味で美術品としての緊張感はなく、暮らしの中に溶け込むアートピースだ。ここには個人のコレクションのような調和がある。

「Objects That Speak」はロンドンのデザイン博物館の名誉館長、デヤン・スジック(Deyan Sudjic)がキュレーションし、ブランツィの哲学を、次の世代につなぐような構成になっている。ローズウッドホテルのデザイン責任者や今回のキュレーションも手掛けたロンドンのデザイン博物館の名誉館長、アーティストといった面々で語るデザイン論にも魅了された。朝のフレッシュな頭だからこそ、この対話が心地よい。
 

午後は憧れのミラノサローネ会場へ
EXPOのような規模と熱気に圧倒

滞在しているホテルから徒歩数分の会場は、ミラノの街の中心地。すぐ向かいにもミラノサローネに関連したイベントが開催され、すでに行列が。午前中というのにこの賑わい。すぐ近くの人気セレクトショップ「ディエチコルソコモ(10 CORSO COMO)」では巨大なタコが建造物を突き抜けるインスタレーション作品に遭遇。これは「モンクレール(MONCLER)」の“Have a Puffy Summer”キャンペーンの一環として展示されている。ルーフトップからの眺めも壮観で、ショッピングをしながら、アート作品を身近に感じられるのはこの期間ならでは。街全体が最新のデザインでカラフルに華やぐ。

会場となった特設ギャラリーの最寄りの駅、ポルタ・ガリバルディ駅(Stazione Porta Garibaldi)から地下鉄で40分ほどの、郊外のミラノサローネ会場、ロー・フィエラ(Rho Fiera)へ。地下鉄は1日(24時間)券や90分有効な1回券など、選択肢がいろいろあり、効率よく移動ができた。1回券を2枚買う場合、自動販売機では1人で使用するか、2人で同時に使用するかを選択し、時間差で2回乗る1枚のカードも作成できる。時代は進化しているなぁ。

駅からは会場へ向かう道中でも各社、各メディアのプロモーション合戦は始まっており、熱気が伝わってきた。ロー・フィエラの広さは圧巻!展示会場というより1つのテーマパークのようなスケール感。いくつもの建物の中に多くのブースが並び、人気のブランドの前には長い列が。なかには事前予約のみ、顧客のみ受け付ける場合も。この感じ・・・2025年の大阪万博での取材に似ている!その時も「すべてを回ろう、予約しようと躍起になるよりも、公園を散歩するように楽しもう」と決め、取材すべきパビリオン以外は偶然の出合いを楽しんだ。ミラノでも、ビギナーらしく、楽しくウォーキングしよう。

インテリアの国・ミラノサローネで
各家具ブランドの世界観を体感

各ホールの入り口には、この膨大なブースの中から目当てのブランドを検索できる巨大なタッチパネルが設置されている。IDチェックはスマホなど端末のQRコードで対応。これらによりかなり人の動きがスムースになったように感じる。

各社のブースは区画ごとに「住所」が割り当てられ、自分が今、どの位置にいるかを把握できる。まずはデザイン家具関係のセクションで、すんなり入れるブースを見学した。さすがは世界各国の空間デザインのプロ。一歩足を踏み入れるだけで、なにを伝えたいか、何がコンセプトなのか伝わる展示が多く、歩くだけで情報が入り込んできた。「カッシーナ(CASSINA)」や「ビー・アンド・ビー イタリア(B&B ITALIA)」「カルテル(KARTELL)」などのおなじみのハイブランドは見るだけで目の保養。絵画と家具を組み合わせた美術展風など、展示もアーティスティック。印象的だったのは日本のオフィス家具メーカー、イトーキだ。初めて出店したというイトーキは「NII(ニー)」なるオフィスファニチャーコレクションを発表。東京だけでなくミラノやニューヨーク、ロンドンを拠点にする家具デザイナーのコンセプチュアルな家具で、隠すべきつなぎ目がみえない全方位型パーテーションや重ねられる超軽量チェア、宙に浮いたような背もたれで、ブロックのように組み合わせられるソファなど、アイデアにあふれたデザインばかり。折り紙のような日本ならではの発想や巧みな技術がちりばめられ、誇らしかった。

ブースのほとんどは屋内だが、道や小さな広場では、家具やインテリアと関連のない企業も展示やサンプリングをしている。クラス感のある高級車や食材など、富裕層への情報発信やリサーチにもつながるのだろう。屋外にはさまざまなレストランや(中には自転車ブランド、ビアンキのコンセプトカフェも!)屋台が並び、眺めているだけで楽しい。ミラノ名物、ミラノ風ドリアならぬリゾットを芝生の上で楽しんだ。中にはスプマンテとサーモンのSUSHIを提供する屋台も。正直、1日や2日ではまわり切れない情報量。そのあたりも万博同様だ。

デザインウィークを彩るパーティーは
メディアとコラボし対話の場に

夜はミラノサローネ会場からミラノの中心地に戻り、「Objects That Speak」会場で開かれた雑誌「ウォールペーパー」とコラボのカクテルパーティーに参加。朝の軽やかな光の中での展示とはまた違った趣のアート作品たち。3mほどの高さがある和紙の照明は、ささまざまな色を放ち、林の中に迷い込んだようなミステリアスさに。マーク・クインによるブロンズの盆栽も、陰影があると違う意味を含むように見えてくるから不思議だ。同じ空間、アートでも光によってこんなに表情が変わるのだという発見になる。朝と夜、公と個、それぞれ違う表情が、それぞれ生きるような空間デザインであるべき、とホテルならではの視点で訴えかけてくるような気がする。その実験の場となったのがこの展示だった。

初日からフル稼働したので、任意で参加するディナーはパスし、ミラノの街へ。アぺリティーボなるミラノならではの夕刻の過ごし方をリサーチしてみた。アペリティーボとは午後のお茶ならぬ、午後のカクテルのような習慣。15時から19時ごろなど、ディナーの前にちょっと語らいつつつまめるように、ワインやカクテルを頼むと、ちょっとした前菜やナッツ、ポテトなどがついてきて、店によってはブッフェ形式で食べ放題も。街のカフェから、老舗レストラン、バーなどさまざまな場所で提供され、中には猫カフェのような空間でのアペリティーボなどユニークな例も。イタリアンなハッピーアワーのようなシステムだ。ホテルから徒歩圏のスポットをはしごしてみたが、2軒でおなかいっぱいに。

街を体感しつつ、ちょっとつまんで体調を整えたいならば絶好の夜の過ごし方だろう。がんばって起き続けたので、時差ボケも解消。デザインウイークのパーティーで華やぐ街を横目に帰路につく。さぁ、明日はメーンイベントとなる2日目だ。

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