【第八弾】ABC理論:相談援助にABC理論を活用!相手の考えを認めて視点を変える面談術
■ 1. はじめに:ABC理論とは?
ABC理論は、感情や行動の背景にある「考え方」や「受け止め方」に注目する心理学の考え方です。
人は、ただ出来事が起きたから苦しくなるのではなく、その出来事をどう受け止めたかによって、感情や行動が大きく変わります。
ABC理論では、これを次の3つに分けて考えます。
A(Activating Event)出来事・状況
B(Belief)その出来事に対する考え方、信念、受け止め方
C(Consequence)その結果として起こる感情や行動
この考え方は、自分の感情整理に役立つだけではありません。
実は、相談援助や面談の場面でも、とても使いやすい視点です。
相談の現場では、相手が苦しんでいる出来事そのものをすぐに変えることは難しいことがあります。
でも、その出来事に対する受け止め方に少し変化が生まれると、感情や行動にも変化が起こることがあります。
だからこそ、相談援助ではABC理論が役に立ちます。
■ 2. 面談におけるABC理論の活用ポイント
相談援助で大切なのは、いきなり相手の考え方を正そうとしないことです。
相手が苦しんでいる時、こちらが
「いや、そうじゃないですよ」
「考えすぎですよ」
「そんなふうに受け取らなくてもいいのに」
と正論を返しても、たいていうまくいきません。
なぜなら、相手にとってそのBは、今のところ“その人の現実”だからです。
つまり相談援助では、相手のBをいきなり否定するのではなく、まず理解することが大切です。
そのうえで、少しずつ別の視点を増やしていく。
この流れが、ABC理論を面談で活かす基本になります。
面談での流れは、こんな形です。
A(状況の確認)
何が起きたのか、どんな場面だったのかを整理するB(考え方の受容)
その出来事を相手がどう受け止めたのかを聴き、まずは認める別の視点を提案する
押しつけではなく、やわらかく新しい見方を差し出すC(結果の確認)
その見方によって、気持ちや行動がどう変わりそうかを一緒に見ていく
ここで大切なのは、支援者が答えを与えるのではなく、相手自身が気づけるように支えることです。
■ 3. ケーススタディ:ABC理論を面談で実践する
【ケース1:家族介護のストレス】
相談者
「母が同じことを何度も言うので、イライラしてしまいます。」
この言葉だけを見ると、つい
「認知症だから仕方ないですね」
「優しく対応しましょう」
と言いたくなるかもしれません。
でも、それでは相談者のBには届いていません。
ABCで整理すると、こう見えます。
A(出来事)母が同じことを何度も言う
B(考え方)
「何度も聞かれるのはしんどい」
「何回言っても伝わらない」
「理解力がなくなってしまったんだ」
「自分ばかりが我慢している」
C(感情・行動)
イライラする
冷たく当たってしまう
あとで自己嫌悪になる
この場合の面談では、まず感情を受け止めます。
たとえば、
「何度も繰り返されると、疲れますよね」
「イライラしてしまうのも自然なことだと思います」
こうしてBを否定せずに受け止めたうえで、少しずつ別の視点を差し出します。
たとえば、
「もしかすると、お母様は理解できていないというより、安心したくて同じことを話しているのかもしれませんね」
「“困らせたい”というより、不安が強い時の言葉なのかもしれません」
そのうえで、相手の反応を見ながら問いかけます。
「その見方で考えると、少し気持ちは変わりそうですか?」
「もし“不安の表れ”だとしたら、どんな関わり方ができそうでしょうか?」
ここで初めて、相談者自身の中に新しいBが生まれる余地が出てきます。
【ケース2:職場の人間関係の悩み】
相談者
「同僚が私の意見を無視しているように感じます。」
このケースでも、表面的には職場の人間関係の悩みですが、実際に苦しさを強くしているのはBかもしれません。
A(出来事)同僚が自分の意見に反応しなかった
B(考え方)
「私の意見は大したことがない」
「嫌われているのかもしれない」
「軽く見られている」
C(感情・行動)
落ち込む
話しかけづらくなる
孤立感が強まる
職場に行くのがしんどくなる
この面談で大切なのは、いきなり「気にしすぎですよ」と言わないことです。
まずは、
「無視されたように感じると、つらいですよね」
「そう受け取ると、話しかけるのもしんどくなりますよね」
と受け止める。
そのあとで、少しだけ別の視点を提案します。
「忙しくて気づかなかった可能性はありそうですか?」
「その場では反応しにくいタイミングだったのかもしれませんね」
「一度、こちらから確認してみると見え方が変わることもあるかもしれません」
このように、相手のBを否定せずに、“それ以外の可能性”をそっと増やしていくことが面談では大切です。
■ 4. 面談で使える具体的フレーズ
ABC理論を面談で使う時は、言い方がとても大事です。
正しいことを言っていても、伝え方が強いと、相手は閉じてしまいます。
ここでは、面談で使いやすいフレーズをいくつか紹介します。
共感・受容のフレーズ
「そう感じるのは自然なことですよね」
「その状況なら、しんどくなるのも無理ないと思います」
「そう受け止めたんですね」
「その時、かなりつらかったんじゃないですか」
まずはここで、相手のBを受け止めます。
視点を広げるフレーズ
「別の見方もあるかもしれませんね」
「もし別の可能性があるとしたら、どんなことが考えられそうですか?」
「その人にも何か事情があったとしたら、何が考えられますか?」
「違う角度から見ると、どう見えそうでしょうか」
ここでは“答えを言う”より、“一緒に考える”姿勢が大切です。
気づきを促すフレーズ
「その見方をすると、少し気持ちは変わりそうですか?」
「今のお話を整理すると、○○と感じておられるんですね」
「もし少し楽になる考え方があるとしたら、どんなものがよさそうですか?」
「今までと違う受け止め方があるとしたら、何が近いでしょうか」
相談援助で大事なのは、支援者が“正しい答え”を持つことより、
相手が自分で考え、選べるように支えることです。
■ 5. まとめ:相談者が気づきを得るサポート
相談援助の場面では、相手の考え方をいきなり変えようとしないことが大切です。
相手が苦しんでいる時、その人なりの受け止め方には理由があります。
だからこそ、まずはそのBを否定せず、受け止めること。
そのうえで、新しい視点や別の可能性をやわらかく差し出していくこと。
それが、ABC理論を相談援助に活かす基本です。
面談では、支援者が無理に答えを与えなくてもかまいません。
むしろ、相談者自身が
「そういう見方もあるのか」
「少し受け止め方を変えてみてもいいかもしれない」
と気づけることの方が大きいです。
ABC理論は、感情や思考を整理するための理論であると同時に、
相手の世界を理解し、視点を広げるための支援技術でもあります。
面談力を高めたい方、相談者に寄り添いながらも変化を支えたい方にとって、とても使いやすい考え方やと思います。
■ あとがき
この第八弾は、ABC理論シリーズの締めとして、とても大事な回やと思います。
第1弾から第7弾までは、主に
自分の感情
自分の受け止め方
自分のストレス
を整理する流れが中心でした。
でも第八弾では、その視点を**相談援助や面談という“他者支援の場”に広げています。
ここまで来ると、ABC理論は単なるセルフケアの理論ではなく、
利用者さん、家族、相談者の気持ちを理解するための道具にもなることが見えてきます。
相手の考えを否定せず、まず認める。
そのうえで、少しだけ別の見方を一緒に探す。
この姿勢は、ケアマネジャーや支援職にとって、とても大切な技術やと思います。
■相談援助にABC理論を本気で活かしたい方へ
相手の考えを否定せず、まず受け止める。
そのうえで、別の視点を一緒に探していく。
この章で扱った面談術は、支援職にとってとても大切な技術です。
そして、その土台にあるのは、
人は出来事そのものではなく、“意味づけた世界”を生きている
というABC理論の核心です。
有料記事では、この理論をもっと深く、
自分の感情、人間関係、家族対応、支援現場という全体の流れで整理しています。
相談援助の技術だけでなく、その背景にある“世界の見え方”まで理解したい方へ。
▶︎ 有料記事 https://note.com/39kaigo/n/n1ed5160c5da1
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