銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十一話(4) 恋の嫉妬と仕事の妬み
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・第三十話 まとめ読み版①
でも、せっかくここまで足を運んだのだ、フレッド先輩の狙いは、顔を合わせて営業してこい、ということじゃないだろうか。
「折角ですので、ほかの皆さまにも、ご挨拶させていただければと思いますが、いかがでしょうか?」
わたしの提案に、バッハさんが申し訳ないと言う顔をしながら、ティーポットに茶葉を入れお湯を注ぐ。
香ばしい香りが立ち上る。
「皆、忙しくしてましてね。出払っているんですよ。僕は来月定年で、のんびりさせてもらっているけれど」
フイールの大ヒットで外に出ている人が多いのだろう。オフィスは閑散としていた。
ゆっくりと蒸らして抽出したお茶を、バッハさんが回転式の茶こしを手にしてカップに注ぐ。
仕事中と思えない優雅な時間。
『窓際族』と言う言葉が頭に浮かんだ。お茶を入れてくれるのも、話し相手が欲しかったのでは、と勘ぐってしまう。
真っ白なティーカップに、透き通ったオレンジ色のティーが映えていた。
ほのかな苦みと甘い香りが、苛立っていた気持ちを落ち着ける。
「おいしいです」

バッハさんがにっこりする。
「ゆっくりしていって下さい。今回は残念でしたね」
「え?」
「新型船の契約が、隣の課に決まったと聞きましたよ」
フレッド先輩から聞いたのだろうか。
「弊社から船をご購入いただき、感謝しております」
当たり障りのない応対をしておく。
「この部署へ来る前は営業の第一線にいましてね、私は他社より自分の社の同僚に契約を取られるのが嫌でしたよ」
そう言ってバッハさんが笑った。
サブリナの顔が頭に浮かんだ。

「そのお気持ち、わかります」
つられてうなずく。
「でも、御社の担当者の女性は、丁寧な仕事をされていたようですからね」
サブリナが途中から契約を横取りしたことは知らないのだろう。
わたしはお茶を一口口にして、話題を変えた。
「フイールは素晴らしいですね。わたしも使っています。働く女性の強い味方です」
「ありがとうございます。いい商品でしょ。私は女性だけでなく男性にも評価されているのが嬉しいんですよ」
バッハさんに好感を持った。
家事のほとんどは自動化されているけれど、どちらかと言えば女性が担当することが多い。
家事ができて困ることはない。わたしだって、できた方がいいとは思うけれど、押し付けられるのには抵抗がある。
料理や手芸が得意な女の子は人気がある。わたしはどちらも苦手だ。
料理上手なサブリナの影が頭にちらつく。
今は仕事中。クライアントとしっかり向き合わなくては。
「フイールの大ヒットは、男性客を取り込めた点にあるんでしょうか?」
「そうですね。でも、いい製品もここまで売れると営業としては面白みに欠けますな」

「そうですか?」
「私は、売れないと言われていた洗剤を売った時が一番嬉しかったですよ。営業冥利に尽きますからね。何もしなくても売れてしまっては、営業の出番がないじゃないですか。ははは」
今のわたしには贅沢な悩みに聞こえた。
それにしても、バッハさんは話し上手な人だ。優秀な営業マンだったのだろう。つい、しゃべりこんでしまう。
とその時、
リリリリリリ・・・
火災報知器の音がした。耳障りな音だ。
首をかしげてバッハさんが立ち上がった。
「火事ですかね」
嫌な予感がする。

厄病神の顔が頭をよぎった。 (5)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」