銀河フェニックス物語<裏将軍編>最後の最後は逃げるが勝ち(13)
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・最後の最後は逃げるが勝ち(1)~(10) (11) (12)
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男に指定された場所は、何年も使われていないような古い工場だった。
ヘレンは厳重に鍵がかけられた重い箱を簡易クレーンで機体の荷台に積み込み、ボディに描かれた深紅の薔薇の模様を黒い塗装で消した。
「積み荷を絶対開けるなよ」
「わかったわ」
この箱を開けたら、殺される。あたしもそこまでバカじゃない。
報酬の半分が支払われた。残りは成功報酬だ。
地元ネル星系の小惑星帯でむしゃくしゃして飛ばしていた時だった。あたしは男に声をかけられた。
「いい腕だな。建築機材を運んで欲しいんだ。手当ははずむぜ」
直感でやばい案件だろうと察した。
でも、あたしの腕をみて仕事を持ちかけられた。それだけで良かった。
何もないあたしの価値が認められた気がした。
悪名高いマフィアのラガルド。その本部に機材を運搬するという契約。ラガルドの悪い噂はいくつも聞いている。多分荷物は禁輸品。これを引き受けたら後には戻れない。
でも、もういい、どうなっても。
「ヘレン、俺の言うことを聞け!」
レイターのあのあわてた顔を見られただけでも、この仕事を受けた甲斐があったというものだ。あたしのことを少しは心配してくれたのだ。
堕ちる所まで堕ちたら、レイターは自分のせいだと悔いてくれるだろうか。ギャラクシー・フェニックスの解散を決めなければ、こんなことにはならなかったと。
この積荷を狙っている奴がいるらしい。裏街道を使って船を飛ばす。
あたしは銀河を統一した飛ばし屋、ギャラクシー・フェニックスのナンバーツーだ。銀河警察を撒くのも手馴れている。誰にも捕まりはしない。

あと少しでラガルドの本部に到着する。
小型船があたしの後をつけてきた。
警察? ほかのマフィア?
レーダーで見るとかなり速い。でも、撒いてやる。この先の小惑星帯でぶっちぎる。
こちらの誘いに乗って相手も小惑星帯に入ってきた。
一気に加速をかける。最短のコースで駆け抜ける。このスピードに付いてこられたら褒めてあげる。
小惑星帯を飛ばしながら嫌な感覚に襲われた。
距離が開かない。いやそれどころか詰められている。
そんな馬鹿な。このコースで、あたしに追いつくなんて。
その相手は見る間に近づいて来た。船を視認した。
ギーラル社のM1500。あれは、アレグロの機体だ。

アレグロがあたしを追いかけてきたの?
いや、アレグロにはあそこまでの腕はない。
あの飛ばしができる人物が一人だけ頭に浮かんだ。
いや、そんなはずはない。
彼は今、操縦したら免許が取れなくなるのだ。彼が夢にまで見ている限定解除の免許が。
だから、信じられなかった。
通信機から聞こえてきたのは、まぎれもなく彼の声だった。
「御台、止まれ」
声変わりしたレイターの声。
「ヘレン、この先のP6ポイントの待機場に船を停めるんだ」
あたしは、たずねずにいられなかった。
「どうしてあなた操縦してるの? 仮免はもう本免に切り替わったの?」
「説明するから停まってくれ」
レイターに免許が降りたのだ。だからあたしを止めに来たのだ。
船を停めずにこのまま逃げた方がいい。
いや、無理だ。裏将軍から逃げられるはずがない。
どうしていいのかわからない。けれど、声を聞いたら無性に会いたさが募った。彼はどんな顔をして、あたしを追いかけてきたのだろう。
わたしはP6ポイントの待機場に船を着陸させた。その横にM1500が停まり、レイターが船から降りるのが見えた。
あたしも船を降りた。
「久しぶりぃ」
明るく手を振って近づいてきたレイターはまた背が伸びていた。

「おめでとう。予定より早く免許が取れたのね」
見上げるわたしに、レイターがにっこりと笑いかけた。
「世の中にゃ、免許より大切なモノがあるのさ」
どういう意味? 理解しようとした瞬間、腹部に激痛を感じて息が詰まった。
「すまねぇ、ヘレン」
レイターに殴られた、と気付くと同時に目の前が真っ暗になった。あたしは意識を失った。 (14)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」