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銀河フェニックス物語 <会社員編> 起業家の夢は宇宙に輝く(5)

銀河一の操縦士なら自身の煩悶を取り除いてくれるに違いないとスチュワートは考えた。
銀河フェニックス物語 総目次
・起業家の夢は宇宙に輝く(1)(2)(3)(4


 うちのS1の機体を撫でながらレイターが言った。
「船のセッティングを元に戻すけど、コルバ、あんた用にセッティングし直してやろか?」

 レイターに合わせたパワーバンド五のシビアなセッティングではコルバは操縦できない。
「昔のように頼むよ」
 コルバが喜んでいる。

 レイターが機体の調整を始めたところへアラン・ガランが怒った顔で走ってきた。
「勝手に機体に触らないでくれ!」

横顔む

「大丈夫だよ、俺、整備士の免許も持ってるから」
「そういう問題じゃない。こちらで整備をし直す」

 アラン・ガランは優秀なメカニックだ。ひねりのあるアイデアを打ち出しS1業界でも注目されている。プライドもある。

 レイターが振り向いてアラン・ガランの顔を見た瞬間、目を見開き特上の笑顔をみせた。

「およ、チーフメカニックのアラン・ガランさんじゃん。あんたのアイデアすげぇよ。神だよ神。俺、尊敬してるんだ。隠し翼の発想を見た時にゃ泣いたぜ」
 と一方的にしゃべりながらアラン・ガランの手をがっしりと両手で握った。まるでお宅とアイドルの握手会の様相だ。

手を包む手@男ゆする

「あ、ありがとう」
 アラン・ガランはムっとした表情をくずしていないが、褒められて喜んでいるのがわかる。レイターの奴、人たらしだな。営業向きだ。

 俺はアラン・ガランに言った。
「クロノスの技術を盗むチャンスだ。レイターに整備をさせてみよう」
「わかりました」

 レイターは嬉しそうにS1の機体をいじり始めた。

「コルバ、あんた、パワーバンド七に挑戦してみるかい?」
「いけると思うかい? でも、最近、調子悪いんだ」
 二人のやり取りを聞いて不安になる。今、パワーバンドをきつくするのは無理だろ。下手をすれば船を壊す結果になる。
 メカニックのアラン・ガランはレイターを止めることもせずデジタルメモを取り続けている。オーナーの俺に判断しろということか。

「大丈夫さ。あんたは課題がきつい方が伸びるからいける」

n29コック4@笑いカラー

「じゃあ、頼むよ」
 珍しい。勝負師としてはおとなしいコルバが攻めの判断をした。生き生きとレイターとやりとりをしている。ここはチャレンジしてみるか。

「僕は君にS1に行けと言われて連邦軍を辞めたんだ」
「あんた、決められたコース飛ぶのめちゃ速かったもんな。よかったじゃん、レースは被弾予測も必要ねぇし」
「そうだね、あの頃を思えば…」 
「コルバはカーブの加速のタイミングがコンマ三速いんだよな。戦闘機の癖が抜けてねぇんだよ。もうちょっと待つことを意識してみな」
「わかった」
 彼らは戦地でどんな状況を潜り抜けてきたのだろう。

「あんたのレースはいつも応援してるぜ。昔より腕が上がってるし」
「君に褒められると僕は本当に嬉しいよ」 
 コルバが顔を真っ赤にしている。素直に銀河一の操縦士に心酔し信頼している。命を預けあう関係か。

 レイターが俺に顔を向けた。
「あんたのS1機に俺が手を入れたってこと、クロノスの奴に知られたくねぇんだ。一応社員だから」

「わかった。アラン・ガラン、お前が整備したことにする」
 俺の命令は絶対だ。
「わかりました」
 アラン・ガランが無表情でうなずいた。

 午後になってチームのみんなが集まってきた。
 いつも通りコルバがテストコースを飛ばす。

 レイターはその操縦を俺の横で静かに見ていた。俺は時々知り合いを見学に連れてくるからアラン・ガラン以外、誰もレイターに気を留めていない。

 コルバのタイムが上がっている。ピット内が興奮している。
「コルバすごいぞ。最高ラップだ」
「パワーバンド七に挑戦したのか。流石、アラン・ガランだな」
 機体のセッティングのせいだけじゃない。伸び悩んでいたコルバの操縦が吹っ切れている。

 レイターが横目で俺を見ながら言った。
「これなら、六位入賞もいけるぜ」

スチュワート正面

「ああ」
 俺は力強くうなづいた。

 パル星の別荘へ戻る際、俺の小型船をレイターに操縦させた。というか、操縦させてくれとレイターがしつこく頼んできた。他人の操縦する船に乗るのが嫌いなのだという
 加速のGをまるで感じない。どうやって飛ばしているんだこいつは。

 二十隻置ける別荘の駐機場が見えてきた。俺は聞いた。
「小型船に限らず、お勧めの船はあるか?」
「あんた、出張多いんだろ。うちのデルベガはお勧めだぜ。星系外航行船の中じゃ飛ばしの感覚がピカ一だ。あんたが試乗したいなら持ってきてやるよ」
 こいつのお勧めは試してみたい。

「いつ持ってこられる?」
「明日でもいいぜ。あの船、全然売れてねぇから」
「売れてない、とは正直だな」

横顔緑後ろ目微笑逆

「商売の基本だろ、情報公開は」
 こいつは信頼ができる。とにかく俺はレイターが気に入った。     (6)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」

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