銀河フェニックス物語 <会社員編> 起業家の夢は宇宙に輝く(6)
売れていない試乗船をすぐに持って来ることができる、とレイターはスチュワートに伝えた。
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・起業家の夢は宇宙に輝く(1)(2)(3)(4)(5)
*
翌日、レイターがデルベガの試乗船に乗ってやってきた。早速、操縦してみる。
「ほう、面白いじゃないか」
「飛ばしの感覚がいいだろ。あんたは自分で操縦するのが好きだから、この船いいと思う。このクラスは自動操縦が重視されてて、デルベガの飛ばしの良さがわかる奴がなかなかいねぇんだよな。俺の予想じゃもうすぐ生産中止になるぜ」
「そんな船を買えと」
「大丈夫さ。クロノスのアフターケアは充実してる。万一部品がなくなったら俺が作って修理してやるから。それに、マイナー機種だから他の奴とかぶらないってところは魅力だろ」
と言ってレイターはウインクした。

俺は、他人と違うことに価値を見出す。ブルーオーシャンで泳ぐことが好きなのだ。
「よくわかったな俺の趣味が」
「あんたが持ってる船のラインナップ見りゃわかるさ」
当たり前だろという顔でレイターは言った。
俺は即決した。
秘書のメリーアンに購入手続きを命じた。美しいメリーアンが眉をひそめた。
「スチュワート様、ご購入にあたりましては現在のクロノスの担当者様に一度ご連絡を取った方がよろしいかと」
「そうだな…」
確かにうちに出入りしている担当者がいる。そいつに仁義を切らない訳にはいかないか。
しつこくて面倒な男だ。対応はメリーアンに任せている。煩わしいことで時間を取られたくない。
メリーアンは優秀なうちの会社のホストコンピューターだ。アンドロイドで判断を誤ったことはない。

メリーアンがクロノスの担当者と話をした。
やはり、そいつから買えとうるさいようだ。どうやら社の事情でノルマがあるらしい。
「レイター、お前から買ってやれないかも知れん」
「構わねぇぜ、俺は」
「お前にノルマはないのか?」
「あるぜ。でも、別に気にしてねぇし」
そうだよな。こいつは、クロノス社の小型船からライバル社の船に乗り換えろと言っているぐらいだからな。
「俺は船が正しくあるべき姿で乗られてると、気持ちがいいんだ」
レイターはそう言って笑った。
*
結局、デルベガは元々のクロノスの担当者から購入することになった。フレッド・バーガーという営業部員だ。

レイターとは同期でお互いよく知っているらしい。納船やら何やら面倒な手続きはレイターがすべて担当した。
購入手続きが終わったところで俺はレイターを誘った。
「なあ、お前をクロノスから引き抜きたいんだが、どうだ? 給料は今貰っている額の倍にしてやる。俺のチームに来ないか」
レイターはうれしそうな顔をしながら俺の申し出を断った。
「う~ん、残念だな。俺、今、クロノスで働くのが楽しくて仕方ねぇんだ」
「じゃあ、飽きたら連絡しろ」
「考えとく」
*
俺はチームのメンバーには内緒で、時々レイターをテストコースに呼んで、コルバと対戦させた。
何度飛ばしてもレイターが勝つ。状態の悪い予備機に乗せても、レイターが勝つ。
「どうして、レイターが勝つんだ?」
二人から声をそろえて答えが返ってきた。
「銀河一の操縦士だから」
俺はあくまでオーナーで宇宙船レースの技術的な詳細なところまでは把握しているわけじゃない。
だが、わかる。レイターは技術が卓越してるだけじゃない。勝負勘が抜群だ。ここが勝負所というのを逃さない。
「どうしてお前、レーシングライセンス取らないんだ。いつでも第一パイロットとして雇ってやるぞ」
こいつなら間違いなく表彰台を狙える。
「子どものころはS1レーサーに憧れたんだけどな。俺は銀河一の操縦士として理想の飛ばしを追求してんだ。レースやってるほど暇じゃねぇんだよ」
天才なのかバカなのか。こいつの言うことは時々理解できない。
S1機を飛ばした後は、映像と航行ログを突き合わせてコルバと二人で操縦を振り返っている。
「昔もレイターとよく反省会したね」
「あんたに足引っ張られねぇようにな」

「そういうレイターだって、逃げのハミルトンは捕まえられなかったじゃないか」
「フン。あんたは相変わらず縦加速の瞬間、左右に波打ってんだよ。ぶれずに飛ばねぇと撃ち落されるっつったろが」
戦闘機乗りのころの習慣だという百分の一秒の世界の細かい分析。
レイターから助言を受けるうちに少しずつコルバの操縦が変わってきた。
そして、S1レースでコルバが初めて六位入賞した。間違いなくレイターのおかげだ。
俺のチームはメディアに取り上げられ、スポンサーがつくようになった。俺の趣味は広告収入を生み出しはじめた。 最終回へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」