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銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十四話(5) 展覧会へようこそ

第一話のスタート版 
第二十四話(1)(2)(3)(4

 アリオロン企画展の展示室に入る。

 どの部屋より多くの人で混雑していた。
 でも、すぐに気付いた。『よそいきレイター』が立っていることに。

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 いつもと違う。背筋が伸びて凛とした佇まい。

 黒い警備の制服が似合っていた。
 ボサボサの髪も帽子で見えない。ネクタイも一ミリも歪んでいない。
 いつもこういう格好をしていればいいのに。

「ちょっと、ティリー、あれ、レイターじゃないの?」
 ベルが驚いて、わたしの服を引っ張った。
「かっこいいじゃん」
 と、同意を求められると、なぜか素直になれない。

「そうかしら。ベルも厄病神なんか見てないで、ちゃんと絵画を鑑賞した方がいいわよ」
 自分に言い聞かせて作品に目をやる。

 情報ネットでは観客の頭しか見えなかった、という不満が書き込まれていたけれど、平日の夜は、そこまで混んではいなかった。

 わたしはその作品の前で、足が動かなくなった。

 パンフレットの表紙に使われていた『山河の春』。
 思った以上に大きな風景画だった。

 一目見た瞬間、故郷のアンタレスのにおいがした。

 雪が解け切らない山々を、陽光が照らしている。
 透き通った空からは、待ちかねた春の訪れと希望が感じられる。

 わたしの中の原風景というのだろうか。
 ふるさとの田舎とよく似た景色が、淡い彩りなのに力強く訴えかけてくる。
 年代を感じさせる木製の額縁と一緒に、心の中に溶け込んでくるようだ。 

 芸術ってすごい。

n36@3スーツやや横口

 アリオロンは敵国だけど、この作品はわたしの感情を揺さぶる。
 同じ人間なのだ。

 どうして戦争なんてしているのだろう。
 人は言葉が無くてもわかりあえるものを作り出せるというのに。

 ベルがレイターに近づいていった、後ろからわたしとチャムールが続く。
「お疲れぇ」
 手をあげてベルが挨拶する。

 仕事中のレイターに声かけたら、悪いんじゃないだろうか、と思うのだけれど、ベルは全く気にしていない。
「ちゃんと仕事してる?」

n44ベル横顔@タートル笑うカラー

「ご来場ありがとうございます」
 レイターがマニュアル通りの答えをする。
 その声がいつもと違っていて、ドキっとする。

 スッとレイターが動いた。
「混雑しておりますので、ご案内いたします」 
 と、歩き出したレイターの後ろを、わたしたちはついていく。
 この場所を離れて、警備は大丈夫なのだろうか。

「どうぞ、こちらへ」 
 レイターは『スタッフオンリー』、とプレートのついたドアを開けた。

 こんなところへ入っていいのかしら、と思っているうちに、すぐ先のドアから会場内へと戻った。

「こちらの部屋にナリエリ星系の『永遠の輪と悲しみ』が展示してございます。その奥を右に曲がった展示室には、アンタレス星系の作品がございますのでお楽しみください」

ハイカラ少尉後ろ目にやりよそいきカラー

 一礼すると、レイターの姿は風のように消えてしまった。お礼を言う時間もなかった。
「何あれ、かっこいいじゃん」
 ベルが興奮している。

「よそいきレイターでしょ」
 わたしの言葉にチャムールが笑った。
「確かによそいきね。それにしても、ショートカットできて助かったわ」  チャムールがパンフレットの会場案内図を指さした。

「普通に順路を回っていたら『永遠の輪と悲しみ』にたどり着くまでに、あと一時間かかるところだったわ」

n52 チャムール横顔セーターにこ逆

 ベルが肩をすくめた。
「わたし『山河の春』と『永遠の輪と悲しみ』が見られればそれで充分。後はショップ行こうよ。仕事帰りだから、疲れちゃったよ」

 確かに疲れたし飽きてきた。
 二人をつきあわせるのは申し訳ない、と恐縮しながら口にした。

「わたし、アンタレスの作品も観たいんだけど・・・」
「わかってるって。レイターが教えてくれたじゃん、近道を。ほんと、レイターはティリーのことが好きだよね」
「ち、違うわよ」

「いいからいいから、さあ、行こう」
 ベルの掛け声で、わたしたちは人混みへ向かって歩き出した。      (6)へ続く

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48ノ月(ヨハノツキ) ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」