銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(22) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19) (20) (21)
*
ティリーはクロノスのピットにズラリと並ぶモニターを見つめた。
ポールポジションに着いたエースの機体がメインモニターに映っている。S1の番組が流れていた。実況の若い男性アナウンサーと解説のS1ジャーナリスト。いつものコンビだ。
『今日は、歴史的な一戦ですね。無敗の貴公子が連勝を維持したまま引退という伝説を作るのか』
『そうだね、でも、予選ではギーラルのオクダも気合が入っていたね。コンマゼロ二秒差だ。レースは最後までわからないよ』
『さあ、全機スターティンググリッドに着きました。まもなくスタートです』
ホームストレートに二十機のS1機が縦に二列に並んだ。
先頭はエースのプラッタ。
すぐ斜め後ろにオクダのマウグルア。

後方のレイターのハールは、第一カメラには映っていない。
各機のエンジンが始動し、噴射口が白く光る。
赤いスタートシグナルが消えた。
白い軌跡を描きながら、船が一斉にスタートした。
『立ち上がり、接触もありません。トップのエース、好スタートを切りました。そのすぐ後ろにオクダ。ぴったりとくっついています』
エースの出だしはいい。このまま逃げ切ってほしいけれど、今にも噛みつきそうにオクダが迫っている。
二機はぶつかりそうになりながら小惑星帯を抜ける。一周、およそ二分のコースを三十周。
『最初からデッドヒートです。一周目、先頭の二機はかなりいいラップタイムです』
実況も熱が入っている。
序盤の三周目あたりから、集団が少しずつばらけ始めた。
エースはもちろんトップでオクダとともにメインモニターに映っている。
先頭集団、第二集団、…最後尾集団。
気がつくと最後尾のモニターに目がいっていた。四機が集団を作っている。
レイターの白いハールが映っている。現在も後ろから二番目の十九位。
一切無理をしない。まるで教習所のお手本のような操縦だ。

追い越しもかけない。
いつもアステロイドベルトで飛ばしているレイターの迫力ある操縦とは、まるで違う。
レイターが乗っているハールは耐久性が低い。
だから、丁寧に扱っている、ということはわかるのだけれど。
これが、銀河一の操縦士がS1でやりたかったことなのだろうか?
わたしは期待している。
レイターが衆人環視の中で、全知全能の飛ばしを見せることを。
白魔とのバトルで感じた『あの感覚』、時間が止まる真っ白な別次元の世界。

レイターの操縦は銀河の財産なのだ。それを、わたしだけじゃなく世界中の人に共有してほしいのに。
*
大きな展開のないまま、レースは三分の一を過ぎ、十周目に入った。
トップのエースを、二位のオクダがぴったりとマークしている。
ここで、エースがエネルギーチャージのためピット艇に戻ってきた。
甲板に宇宙服を着たピットクルーが飛び出していく。
続いてオクダが隣のギーラルの船にピットインした。
後続集団も次々と給油に入る。
実況アナウンサーのあわてた声が聞こえた。
『おっと、チーム・スチュワートの第二レーサー、レイター・フェニックスはピットに入りませんね。ミスでしょうか?』
後続のモニターを見る。
レイターのハールが、スチュワートのピット艇を通り過ぎていた。
ピットインのミス?

そういえば、レイターがピットインしたところは見たことがない。
飛ばし屋にピットはないし、前に替え玉出場したS1プライムも、きのうの予選もピット艇は使わなかった。
ピットイン、ピットアウトは甲板へ着艦する技術が必要だ。
大丈夫だろうか。コース途中でガス欠なんて恥ずかしい。 (23)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」