銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(20) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<裏将軍編>第一話「涙と風の交差点」(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)(最終話)
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19)
レイターのハールがスタートした。
ライブ映像を見ながらエースがつぶやく。
「ライン取りは流石だね。僕とほとんど変わらない。いいところを攻めている」

コースに張り巡らされた柵に触れると、船の推力が落ちてしまう。
ハールは、コーナーガードのギリギリをきれいに旋回していく。
でも、タイムは伸びなかった。二分二秒だった。
ジョン先輩が悔しそうに言った。
「船が良くないよ。特に直線。全然、エンジンのメガマンモスの馬力を生かせてない。もっとレイターなら飛ばせるはずだ」

わたしも含め、その場にいた全員が、同じことを思ったと思う。
それをエースのいる前で口に出せてしまうところが、ジョン先輩の凄いところだ。エースが苦笑している。
レイターは十八位だった。
レイターもエース同様に、二本目は飛ばないという。

クロノスのピット内には、ほっとした空気が流れた。ライバルは一人でも少ない方がいい。
その直後、ピット内は一気に緊張した。
ギーラル社のオクダが、エースの記録にあとコンマ五秒というタイムを出したのだ。調子がいいオクダは二本目を飛ぶという。ポールポジションを狙ってきた。
オクダにとってライバルのエースと戦う最後のチャンスだ。気合が入っている。
そして、オクダの二本目がスタートした。

速い。
クロノスのピット内では、誰も一言も発さずモニターを見つめる。
オクダが操縦するマウグルアは小惑星帯を超え、最終コーナーに入った。ここまでエースのラップとほとんど変わらない。
ゴールラインを超える。
一分四十七秒。エースと並んだ。
けれど、コンマゼロ二秒、エースが速かった。
わたしはふぅっ、と安堵の息を吐いた。
無敗の貴公子は、最後の戦いでもポールポジションを死守した。
予選の三位と四位はべヘム社の兄弟レーサーが並んで取った。

レイターは、一つ順位を下げて十九位。ギリギリで予選を通過した。後ろから二機目だった。
* *
オーナーのスチュワートは腕を組んで自前のピット艇で予選を見ていた。
第一パイロットのコルバは安定と信頼の六位だった。

第二パイロットのレイターの順位は十九位。
俺は、チーフメカニックのアラン・ガランに声をかけた。
「予選落ちするんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ」

「機体にできるだけ負荷をかけたくないのでゆっくり飛ばさせました。燃焼リスクを抑えるため、強度の貯金をしておきたいので」
「ハールが燃える可能性は消えてないのか?」
「すべてのリスクは排除できません。シート周りの不燃性は高めてあります。それにしても、レイターは流石ですよ」
予選を終えたレイターの奴はハールの中で眠っている。昨晩も延々と調整を続けていた。睡眠不足をこんなところで補ってやがる。
大した度胸だ。

「メガマンモスのエンジンを八十九パーセントに抑えるように指示したら、ピタリとその数値で飛びました」
「九十三までいけるんじゃなかったのか?」
「アベレージは九十以下でないと燃焼リスクが高いんです」
「それでは、エースに勝てないんだろ?」
答える代わりにアラン・ガランは目を閉じた。

答えに困った時のアラン・ガランの癖だ。俺の目を見られないらしい。
まあいい、これからの決勝でチーム・スチュワートの楽しい見世物を観客の皆さんに喜んでもらえれば。 (21)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」