銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(23) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19) (20) (21) (22)
レイター以外、全機がピットに入った。
ハールのスピードが上がったように見えた。
エースの給油が終わり、機体がピット艇の甲板から飛び出す。
レイターが、ホームストレートへ入ってきた。
そこへ、エースが、ピットレーンからコースへ戻る。
レイターのハールが先行した。

実況の声がはずんだ。
『面白いことになりました。無敗の貴公子の前に新人レーサーが出ました。チーム・スチュワートの第二レーサー、レイター・フェニックス。今回が初めてのレースです。給油までの一周とはいえ、エースの引退レースでエースの前に初めて船が出ました。さて、燃料は持つのでしょうか』
解説者が応じる。
『まあ、ハールは燃費がいいから大丈夫と踏んだんだろうね。無敗の貴公子の前に出る、という気概がいいよ。さすが奇策のスチュワートだね』
確かに、エースの前を船が飛ぶことは、めったにない。
エースは予選でポールポジションを取って、そのままキープすることがほとんどだ。
レイターの飛ばしは一気に注目を集めた。
でも、銀河一の操縦士のやりたいことはそれなの? 同じ疑問と違和感が何度も湧き上がる。この状況をレイターは喜んでいるのだろうか。
あの人のことだからエースの前を飛ぶことを楽しんでいるのかもしれないけれど、何かが違う。

後ろからメロン監督が指示を出した。
「レイターのラップをきちんと計測しろ」
* *
アーサーとカルロスのステルス戦闘機が、ナセノミラのS1コース近くに到着した。
アーサー隊長は何をお考えなのだろうか?
僕は隊長機と並び、S1コースとなっている小惑星帯付近に停船させた。
「全方位最大で探知無効化せよ」

アーサー隊長から指示が入る。
「了解しました」
ステルス機能を最大限に高める。
敵にも味方にも探知されないようにする。
隊長との連絡も、音声回路以外は遮断した。隊長機もうっすら目視でしか確認できない。
ちょうどこの小惑星帯あたりは、観覧ステーションがなく一般船の入場も規制されている。
こんなところに連邦軍の戦闘機がいると知られたら、面倒なことになる。
「隊長、今回の任務はどのようなものでしょうか?」

「レイターを応援してやろうと思っている。S1は子どもの頃からあいつの夢だったからな」
「……」
いつものように「冗談だ」とおっしゃるのだろうと構えていたが、会話はそこで終わった。
そして、隊長機からS1レースの実況音声が共有された。
『おっと、チーム・スチュワートの第二レーサー、レイター・フェニックスはピットに入りませんね。ミスでしょうか?』
レイターさんは十周目のエネルギーチャージに入らなかったようだ。
さっきまで最後尾の集団にいたのに、現在エース・ギリアムを抜いてトップだ。

一機だけ、集団から離れて飛んでいる。
まもなくレイターさんがこの小惑星帯を通過する。
「来たぞ」
隊長の声にレイターさんが来たのか、と思った時だった。 (24)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」