銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(24) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19) (20) (21) (22) (23)
目視で確認した。
アリオロンのステルス型戦闘機だ。

どうしてこんなところに?
考えている余裕はない。
アーサー隊長が先手を取ってレーザー弾を発射した。
三機いる。
敵も味方も目視のみの空中戦だ。
実戦は久しぶりだ。
しかも、前線でもない一般星系でステルス戦とは。
敵機は僕たちの出現に驚いたようだ。あっという間に引き上げた。
レースの実況音声が聞こえる。
『トップのレイター・フェニックスが小惑星帯を抜けました。それを無敗の貴公子が追いかけます』
我々が待機する近くを、エース・ギリアムのS1機が通りすぎていく。その後ろに三位、四位の先頭集団が続く。
「アーサー隊長、今の敵機は何ですか?」
隊長から返答が来た。
「カルロス、暗殺協定を知っているな」
「はい」
レイターさんと、アリオロンの工作員ライロット・アルカービレ中佐の間で結ばれている紳士協定。

二人が殺し合っても構わないという内容だ。それが今、発動しているということか。
「協定では、一般人を巻き込まないことになっている。だから、ライロットは観覧ステーションが設置されていないこの小惑星帯で、レイターが単独で飛んでいるところを狙うはずだ」

敵はエース・ギリアムら後続機が来たから引いたと。
「レイターは給油時間を他機とずらしたから、一機で飛ぶ時間ができた。そこをライロットは狙ってくる。次は二分後だ」
レイターさんはサーキットを一周回って再びこの小惑星帯のコースを飛ぶ。二分に一回のアタック。それを目視で防ぐということだ。
「我々がいると知って、次は遠方から、ステルスレーザー弾の砲撃を組み入れてくるだろう。カルロスはその無力化を頼む」
「承知しました」
ステルスレーザー弾は透明弾で厄介だ。レーダーがどれだけ軌跡を拾うかも不明。だが、敵の目標物がレイターさんだとわかっていれば、三次元バリアで防御できる。
「もう一つ伝えておく。レイターの乗っているハールは、ボリデン合金でできている」
「な、何ですって?」
僕は驚いた。
不覚にもそんな素材の船が存在することを知らなかった。紙か木でできているようなものだ。
「命中しなくても、レーザー弾が近くを通ればダークマターの歪みを受けて一気に炎上する」
なんて船に乗っているんだ、あの人は。
* *
『さあ、無敗の貴公子の前でトップを飛ばしてきたスチュワートですが、ここで給油に入りエースにトップをゆずり・・・』
クロノスのピットに流れていた実況の声が一瞬止まった。
『ピットに入りません。スチュワートはどうしたんでしょうか? 新人レーサーがうまくピットインできないんでしょうか?』
ティリーは第一カメラのモニターを見ながらどきどきした。銀河一の操縦士は一体何をやってるのか。

解説者がのんびり答えた。
『どうだろうね、何と言っても初レースだからなあ』
隣にいたジョン先輩がモニターに向かって文句をつけた。
「レイターがピットインできない訳ないじゃないか。彼は銀河一の操縦士、戦闘機乗りだよ。磁場宙域で空母に着艦してたんだから」

解説者が続けた。
『もしかすると、タイムの更新を狙っている可能性があるね。彼のこの一周のラップはすごい。エースが追いつけないでいる』
『どういうことですか?』
『燃料が少なくて機体が軽いから、いいタイムが出ているんだよ。次の一周、燃料さえ持てば六位入賞も見えてくる。万年六位のスチュワートとしては二機同時入賞を狙っているのかもしれないね』
「どうだ、レイターのタイムは?」
メロン監督がタイムキーパーに聞いた。
「は、速いです。一分四十七。エースのコースレコードと並びました。特に直線が伸びています」

こんなところで、銀河一の操縦士が仕掛けてきた。 (25)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」