銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(25) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19) (20) (21) (22) (23) (24)
「レイターめ、コースレコードを更新してくるな」
メロン監督の表情が険しい。
「ただ、給油に入れば順位を下げますので問題はありません。それより、エースの後ろにぴったり付いているオクダの方が心配です」
トップをレイター、少し離れて二位がエース。
そのすぐ後ろにギーラルのオクダが迫っていた。オクダはかなり強引なプレッシャーをエースにかけている。

オクダにとってもこれがエースとの最後の対戦なのだ。負けたまま終わるわけにはいかない。
レイターの速度がさらに上がる。
一人で飛んでいるから、駆け引きなし。追い越しの争いも接触もない。
危険暴走行為も取られない。操縦技術だけが冴えわたる。
『すごいタイムです。スチュワートの第二パイロット、レイター・フェニックスがナセノミラの最高ラップを叩きだしています。午前中に予選でエースが打ち出したコースレコードを更新しました』
『この船、機体が軽いハールに高馬力なメガマンモスのエンジンを積んでいる、という情報が入ってきたよ。扱いにくいが飛ばしには最適だ。奇策のスチュワートは考えることが違うな』
解説者が面白がっている。
『無敗の貴公子』のタイムを超えるとは、さすが『銀河一の操縦士』だ。直線の加速がすごい。メガマンモスが本領を発揮する。
情報ネットワークの投稿が騒がしくなってきた。メガマンモスのファンは歓喜し、エースのファンは怒っている。
「エースは強いけど速くねぇ」というレイターの言葉を思い出す。

自分の方がエースより速いということをわたしの前で、いや、全世界の前で体現している。
レイターはエースを少しずつ引き離して、トップを独走している。でも、今だけだ。エネルギーチャージでピットに入れば順位は下がる。
「どこまで粘るつもりだ」
メロン監督がつぶやいた。
いつもはエースを映しているライブ中継の第一カメラが、レイターのハールをとらえている。
『レイター・フェニックスはエネルギーチャージしないまま十三周目を終えました。まだ、ピットに入りません』
クロノスのピット内の緊張が少しずつ高まる。
「まさか。このまま十五周までいくつもりか。レイターのタイムを再度確認し計算しなおせ」
メロン監督の指示でピット内が一気に騒がしくなった。
S1では二回の給油が常識だ。それが一回で済むなら給油にかかる十秒をカットできる。
技術担当のジョン先輩が感心している。
「燃費のハールはすごいなぁ。給油一回で三十周飛ぶつもりだ。さすがだよ風の設計士団は」

敵をほめている場合じゃない。
解説者も気がついた。
『いやあ、すごいね。給油一回か。スチュワートは相変わらず面白いものを見せてくれる。しかも、この速さはすごい。操縦技術が確かだ。奇をてらうだけじゃない、歴史に残る飛ばしだ』
メロン監督が計算チームに聞く。
「どうだ?」
「大丈夫です。レイターが一回給油に入れば、エースはトップに立ちます」
「二十周目でエースが二回目の給油に入った後はどうなる?」
「給油しないレイターは順位を上げますが、それでもエースには追いつけません」
「よし、気を抜くな。レイターとスチュワートはどんな手を仕掛けてくるかわからん」 (26)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」