銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(26) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25)
* *
『いやあ、すごいね。給油一回か。チームスチュワートは相変わらず面白いものを見せてくれる』
番組の解説を聞きながらスチュワートは満足していた。

エースの引退試合に、これだけ絡めれば上出来だ。さすが、銀河一の操縦士。十分楽しめた。
第一段階はクリアだ。
レイターが、エネルギーチャージを一回に抑えるという奇策を思いついた。給油にかかる時間を半減できる。
その上、ピットインのタイミングが変わることで、他機との接触を避けられる。
一石二鳥だ。
ボリデン合金は火花が飛んだりしたら、燃えてしまうからな。
ただ、いくらハールの燃費がいいといっても簡単ではない。メガマンモスのエンジンは、燃料をバカ食いするのだ。
そこで、アラン・ガランが考えた調整弁を、オットーが計算して実装した。
『この速さはすごい。操縦技術が確かだ。奇をてらうだけじゃない、歴史に残る飛ばしだ』
レイターの奴、爆速だな。エースの記録を抜いてコースレコードを出している。
面白さと同時に不安がよぎる。アラン・ガランに聞いた。
「想定より速すぎないか? エンジンのパワーを上げてエースより速く飛んだら燃えるんじゃなかったのか?」
「大丈夫です。エンジン出力のアベレージは九十パーセント以下のままです」

「どういうことだ?」
「飛ばしが進化しています」
「進化?」
「直線のメガマンモスのパワーが注目を集めていますが、出力の低い小惑星帯の速度が、じりじりと上がっているんです。扱いにくい直線番長の暴れ馬を、レイターは今この本番で調教しています。技術的な課題を、パワーではなく操縦のテクニックで凌駕している」
「ほう」
「文句なしに銀河一の操縦士です」
* *
あと、何周だ?
ステルス機の中で将軍家秘書官のカルロスは息を切らしていた。敵がどこから来るかわからないステルス戦は、神経をすり減らす。
敵が遠方から撃ってくるレーザー弾の針路を読んで三次元バリアで防御する。ここまで何とか防いだ。
アーサー隊長が、一機、撃墜した。敵機は残り二機。
十五周目か。二分に一回のアタックも次で最後だな。

まもなくレイターさんが小惑星帯にさしかかる。
敵機襲来。
僕を狙って撃ってきた。目視で確認。よける。アーサー隊長が敵を攻撃する。
同時に来た! ステルス遠距離弾。レイターさんが標的だ。
三次元バリアを展開する。
まずい。
レイターさんの飛ばす速度が速すぎる。軌道がずれた。
防御網に隙間が発生する。カバーできるか?
バリアの端が、何とか敵のレーザー弾を引っかけた。レイターさんへの直撃の弾道は逸らした。
だが、このままではハールに衝撃波が及ぶ。ボリデン合金が一気に炎上するレベルだ。どうする? ここからでは打つ手がない。
* *
小惑星帯に入る。さすがに十五周目ともなるとエネルギーもギリギリだな。
レイターは次の展開を考えながらハールを操縦していた。
この後、ピットインして給油する。順位は半分ぐらいまで下がる。その前に小惑星帯でどこまでタイムを稼げるかが勝負だ。
手のかかる暴れ馬も、ようやく俺の言うことを聞くようになってきた。小惑星ギリギリの最短ラインをかすめるように飛ぶ。
その時だ。違和感を感じた。

レーダーは反応してないが、俺の直感。
何かが来る。 (27)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」