銀河フェニックス物語<出会い編> 第三十九話(27) 決別の儀式 レースの途中に
・銀河フェニックス物語 総目次
・<出会い編>第三十九話「決別の儀式 レースの前に」① ②
・第三十九話「決別の儀式 レースの途中に」① (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27)
迫ってくる感覚と逆方向に操縦桿を切る。
遠くの星の位置が歪んで見えた。ステルスレーザー弾か。
まずい。

衝撃波を受けるだけでハールは燃える。
こいつはアリオロンのレーザー弾だ。
ダークマターの歪みパターンを思い出せ。
ガキん頃、ドッジボールだって言いながら戦闘機でよけてただろが。最小の近似値はいくつだ?
「72ミリラジアン」

なぜかアーサーの声が、無線に割り込んできた。
あいつのナビを受けて、昔みたいに身体が勝手に動く。
ハールは戦闘機じゃねぇが加速は戦闘機並だ。
レースの最短コースから外へ出て小惑星の影に入る。衝撃波が押し寄せてきた。ミシミシと機体が安定しねぇ。メガマンモスをふかして一気に距離を取る。
波の威力がおさまる。発火はしてねぇ。
ふぅ。何とかしのいだ。
アリオロンの遠距離ステルスレーザー弾。
間違いなく俺を狙っていた。
アーサーの近似値計算がなかったら、この機体は炎上してたな。
忘れてたぜ。俺の知らねぇところで暗殺協定が発動してたのか。
薄ら笑いを浮かべたライロットの野郎の顔がちらつく。俺が一人で飛んでいるところを狙いにきやがったな。

それをあいつが防いでくれている。ここまでライロットが何発撃ったか知らねぇが恩に着るぜ。
戦闘機を飛ばしていたころ「銀河一の操縦士になってS1で優勝する」って俺はあいつに何回言っただろう。
将軍家を継ぐことしか未来がなかったあいつは、うらやましそうに俺を見てた。

きょうがその舞台だ。アーサー、素直に礼を言うぜ。
* *
『どうしたんでしょうか? 快調に飛ばしていたレイター・フェニックスですが小惑星帯でコースを少し外れましたね。そのまま直線コースに入り十五周目で給油のためピットインしました』
『相変わらずスチュワートは面白いね。給油一回とは恐れ入った。あそこのチーフメカニックのアラン・ガランは風の設計士団のリーダーを務めていたからね、いやぁ、流石だよ』
ハールがピット艇の甲板に美しく着艦する。クルーが給油作業に入る。
アラン・ガランが急いでレイターに聞いた。
「どうした? 何があった?」

「一瞬、あの場のダークマターが歪んだんだ。飛行に影響はねぇ。何秒ロスした?」
「一・五秒だ。ここからしばらくは我慢だぞ」
「ああ、わかってる」
ハールがコースへ戻る。
チームオーナーのスチュワートはモニターに映るタイムを見た。
エネルギーチャージにかかった時間は九秒九七。まあまあだな。
レイターの順位はトップからどこまで下がった?
十位か。
スタート時の十九位から考えるとようやく半分来た。
ハールは液体燃料が満タンになり、さっきのような軽い飛ばしはできない。レイターは他機にぶつけられないように、じっとこらえて操縦している。
トップを飛ばすエースとオクダは、接触ギリギリの死闘を繰り広げていた。

さあ、次の展開は二十周目だ。彼らが次の給油に入ったところがチャンスだ。
「すごいですよ」
助手のオットーがモニターを見ながら感心した声をあげた。
「どうした?」
「計算値よりハールに負荷がかかっていない。どうしてこんな飛ばしができるんだろう? レイターさんってきのうの練習飛行で、初めて、ここのコース飛んだんですよね」

俺は言った。
「あいつはシミュレーターで何度もコースを飛ばして研究してたからな」
アラン・ガランが俺の発言をさえぎった。
「いや、これはシミュレーターでは出てきません。実際に飛ばし込んで見つける肌感覚の領域です」
「肌感覚?」
アラン・ガランは面白い表現をする。
* *
ピットの会話はレイターにも聞こえていた。肌感覚か。懐かしいことを思い出す。
誰にも言ってねぇが、ここナセノミラのコースは昔、無免許で飛ばしたことがある。
俺は十歳だった。 (28)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」
レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」
ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」
レイター「なんか、すげぇな……」