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【妄想学校】バズってる情報ほど、まずおすわり(ちびたぬきさんコラボ)

この小説は、ちびたぬきさんがnote コメントから始まったお遊び企画に寄稿するものです。
柴犬アンだけの著作物ではありません。
ちびたぬきさんの妄想学校の企画は、まだまだ続いています。ぜひ、覗いてみてください。
なお、創作大賞2026に応募していますか、なにかの間違いで、賞金をいただいた場合、出演者全員山分けとさせていただきます。

特別講師 柴犬アン先生
担当:数字・情報
好きなものを笑わない学

妄想学校の職員室には、朝の匂いがいくつも混ざっていた。

チョークの粉。

古い木の机。

カメリーヌ先生のハーブティー。

窓の外では、ひとやすみ先生が育てている植木鉢の葉っぱに、水の玉がひとつ乗っていた。

アンは、その水の玉を見ていた。

落ちそうで、落ちない。

まるで、何かをこらえているみたいだった。


「アン先生」

たぬころ校長の声で、アンは耳を動かした。

「今日から、妄想学校の特別講師をお願いします。担当は、数字と情報です」

「数学やなくて、数字なんやな」

アンは、赤いバンダナを前足で少し直した。

「はい。点数、順位、スキ数、フォロワー数、再生数。子どもたちは、数字に追いかけられています」

「数字を読める先生ではなく、数字に飲まれない先生が必要です」

数字に飲まれない先生

その言葉が、アンの胸の奥に引っかかった。

ピコン。

聞こえていないはずの通知音が、耳の奥で鳴った気がした。

昔のアンは、その音が好きだった。

スキが増える。

コメントが増える。

読まれている。

見られている。

必要とされている。

強い言葉を使えば
数字が跳ねた

ちょっときついツッコミを入れれば、みんなが笑った。

昭和の学校ドラマのマネするアン先生

そのたびに、アンはしっぽがちぎれそうなほど嬉しかった。

画面の数字が増えるたび、自分まで大きくなった気がした。

けれど、ある夜。

スキの山の下に、小さなコメントが埋もれていた。

「この言い方
少しつらかったです」

アンは見た。

見たのに、見なかったことにした。

その時、数字は伸びていた。

みんなが笑っていた。

だから、自分は間違っていないと思いたかった。

その子は、それから来なくなった。

アンの肉球は、キーボードを叩いただけではなかった。

誰かの心を
泥のついた足で踏んだのだ

職員室の時計が、カチリと鳴った。

アンは、息を吸った。

ハーブティーの湯気が鼻に入った。

「ほな、行こか」

声に出すと、足が前へ出た。

職員室には
先生たちがそろっていた

カメリーヌ先生は、ポットを抱えていた。

りゅか先生は、スケッチブックを閉じていた。

ひとやすみ先生は、観察ノートを脇に置いていた。

みきさぶろう先生は、カードの束を指で整えていた。

ちびたぬき先生は、赤ペンを胸ポケットに入れていた。

刹那きらり先生は、白い救急箱を持っていた。

みー先生は、英語のカードを1枚だけ手にしていた。

カードには、Doorと書かれていた。

誰も、立派な言葉を言わなかった

ただ、アンが教室へ向かうのを待っていた。

それが、ありがたかった。

3年2組の前に立つと、教室の中がいつもより薄暗く見えた。

窓は開いている。

朝の光も入っている。

それでも、机の下からもれるスマホの青白い光が、子どもたちの顔を下から照らしていた。

アンはドアのすき間から見た。

ミナの指が、画面の上で止まっている。

ユウタの眉間には、スマホの光で濃い影ができている。

はっちゃんは窓の方を向いているのに、耳だけ教室の内側へ向いていた。

snowちゃんは、小さなカードを両手で持ったまま、出す場所を探している。

リオは、机の木目を見ていた。

ノートが半分だけ開いている。

英語の歌詞。

小さな扉の絵。

その横に、スマホの画面。

ソラは、スマホを握っていた。

握りしめた手の甲が白かった。

ピコン。

また通知が鳴った。

アンの胸が、いやな音を立てた。

これは、授業の前に
もう事件が始まっている

アンはドアを開けた。

「どもども、柴犬アンやで」

「今日からこの妄想学校で、数字と情報の特別講師をします。好きなものを笑わない学も担当します。給食のコロッケの数だけは、かなり厳しく見ます」

笑いは起きなかった。

ほんの少し、空気が動いただけだった。

アンは黒板の前へ行った。

「ほな、聞くで
今、この教室で何が起きてる?」

誰も答えない。

アンは、リオの机へ近づいた。

リオはノートを閉じようとした。

「閉じんでええ。でも、見せんでもええ」

リオの指が止まった。

ソラのスマホが、また鳴った。

ピコン。

画面が少しだけ光った。

アンには見えた。

昨日、Snow Cafeでリオが歌った短い英語の歌。

再生数は、いつもより多かった。

その下に、コメントが並んでいた。

発音へん

英語キャラきつい

見てて恥ずかしい

歌うまいと思ってるのかな

そして、誰かが書いていた。

これ、妄想学校のリオらしい

その下で、笑う顔のスタンプがいくつも跳ねていた。

👏
😃
😅
😊
😆
🤣

アンの鼻の奥が冷えた。

ユウタが小さく言った。

「でも、再生数すごいで」

ミナがつぶやいた。

「みんなが変って言ってるなら、やっぱり変なのかな」

リオの指が、ノートの端を押さえた。

白くなるほど、強く。

アンは黒板に向かった。

チョークをくわえず、前足で持った。

少し曲がった字になった。

バズってる情報ほど
まずおすわり

チョークの粉が、黒板の下に落ちた。

アンは振り返った。

「再生数が多いから正しい。コメントが多いから本当。みんなが笑ってるから、自分も笑ってええ」

教室は止まったままだった。

「それ、ほんまにそうか?」

誰も答えない。

アンは、リオのスマホを見た。

「再生数は、リオがどんな気持ちで歌ったかを言わへん」

次に、ソラの手を見た。

「コメント数は、その言葉で誰の手が震えたかを言わへん」

ソラの親指が、スマホの端を押した。

画面に、グループのやりとりが出た。

もっとおもろいこと書けよ

ソラ、さっきのやつ、リオの歌やろ?

本人見たら泣くんちゃう

ウケる

次の通知が光った。

ソラ、なんか言えよ

ソラの肩が、小さく上下した。

同じ教室にいるのに、画面の向こうの群れが、ソラの背中を押していた。

アンは、その群れの音を知っていた。

もっと強く。

もっとおもしろく。

もっと目立て。

もっと数字を取れ。

アンは、黒板の前に戻った。

「先生な」

声が少し低くなった。

「昔、数字にしっぽ
引っぱられたことがある」

リオが、ほんの少し顔を上げた。

ソラのスマホが、また鳴った。

アンは続けた。

「スキの通知が鳴るたびに、しっぽがちぎれそうなほど嬉しかった。もっと強い言葉を打てば、数字が増えた。もっときついツッコミを入れたら、みんなが笑った」

アンは、自分の前足を見た。

チョークの粉で白くなっていた。

「目の前で誰かが痛がってるかもしれへんのに、アンは画面の向こうの数ばっかり見てた」

教室の奥で、刹那先生が白いハンカチを1枚、机の端に置いた。

誰の前でもない。

ただ、届く場所に置いた。

アンは言った。

「アンの肉球はな
キーボードを
叩いただけやない
誰かの心を
泥足で踏んづけたんや」

リオのまつげが動いた。

ソラの唇が開いた。

でも、声はまだ出なかった。

アンは逃がさなかった。

「数字が伸びてる時、人は自分が正しいと思いやすい。みんなが笑ってる時、人は自分が優しいかどうかを忘れやすい」

ソラのスマホが、また光った。

おーい、ソラ逃げた?

次、お前が書いたらもっと伸びるぞ

その文字を見た瞬間、ソラの顔から血の気が引いた。

スマホを持つ手が震えた。

机の脚が、カタ、と鳴った。

「ぼく」

声は、胃の底から押し出されたみたいだった。

「ぼく、送った」

誰も動かなかった。

ソラは画面を見たまま言った。

「最初は、リオが変だと思ったんじゃない。みんなが笑ってたから、ぼくも何か言わないと、次はぼくが笑われると思った」

リオの指が、ノートから離れた。

「それで、動画を送った。ちょっときついよなって書いた。笑うスタンプがついて、みんなが反応して」

ソラは、息を吸った。

うまく吸えなかった。

「うれしかった」

その言葉だけ、教室に落ちた。

汚れた石みたいに。

「ぼく、リオを
笑いたかったんじゃない
自分が笑われたくなかった」

アンは、ゆっくりソラの机の前へ行った。

「ソラ」

ソラは顔を上げられなかった。

「今、よう言ったな」

ソラの目が赤くなった。

「でも、ひどいことした」

「した」

アンは、そこをやわらかくしなかった。

「ごめんで、すむ?」

アンは首を振った。

「すまへんこともある」

ソラの肩が落ちた。

リオは、ノートの上に置いていた手を膝へ下ろした。

アンは言葉を選んだ。

きれいな言葉ではなく、今ここで逃げない言葉を。

「ごめんは、消しゴムやない
押した送信ボタンは、
なかったことにはできへん」

ソラの喉が鳴った。

「でも、ごめんは、戻るための最初の足あとにはなる」

教室の後ろで、ちびたぬき先生が白い便せんを1枚、机の上に置いた。

赤ペンは出さなかった。

刹那先生のハンカチは、まだ机の端にあった。

それだけだった。

他の先生たちは、何も言わなかった。

カメリーヌ先生のポットから、ハーブティーの匂いだけが細くのぼっていた。

みー先生は、Doorのカードを胸の前で持ったまま、リオを見ていた。

りゅか先生のスケッチブックは閉じられたままだった。

ひとやすみ先生の観察ノートも、今日は開かれなかった。

みきさぶろう先生のカードの束は、机に伏せられていた。

言葉が多すぎると、いちばん痛い声が消えてしまう。

先生たちは、それを知っているみたいだった。

アンは黒板に、3つだけ書いた。

見たこと
思ったこと
送っていいこと

「この3つは、同じやない」

アンは、ソラのスマホを指した。

「見た。リオの歌の動画を見た」

次に、ソラの胸のあたりを見た。

「思った。自分も笑われたらこわい。みんなに合わせたら安心かもしれん」

最後に、画面の中の文字を見た。

「送っていいこと。ここで止まらなあかんかった」

ミナが、小さく言った。

「でも、止まるのって、こわい」

「こわいで」

アンはすぐに言った。

「みんなが走ってる時に止まるのは、こわい。自分だけ置いていかれる気がする。次は自分が笑われるかもしれんと思う」

アンは、ソラを見た。

「せやけどな
そこで止まれる子が
ほんまに強い子や」

ユウタが、スマホを見た。

「ぼくも、スタンプ押した」

アンは、何も言わずに待った。

ユウタは、画面を何度か押した。

「消せるやつ、消す」

「それから?」

ユウタは、リオを見ようとして、すぐ目をそらした。

「直接言う。笑ってごめんって」

アンは、うなずいた。

「ええ。でも、リオが今すぐ許さなくても、そこは待つんやで。謝った側が、許す時間まで決めたらあかん」

ユウタは、今度は下を向いたままうなずいた。

アンは、リオの方へ向いた。

「リオ」

リオの肩が動いた。

「返事せんでええ
ただ聞いてな」

アンは、黒板の字を見た。

数字 情報 言葉
どれも便利で、どれもこわい

「歌ったことは、笑われることやない。英語を好きなことも、笑われることやない。再生数が多いから価値があるんやない。変なコメントがあるから価値がなくなるんでもない」

みー先生が、Doorのカードをリオの机の端に置いた。

それだけだった。

リオは、そのカードを見た。

しばらく見た。

そして、ノートを閉じなかった。

それだけで、アンは胸の中が少し熱くなった。

snowちゃんが、迷っていたカードを机の上に置いた。

リオの方へ押し出すのではなく、みんなが見える真ん中に置いた。

画面を閉じても
歌は消えない

はっちゃんが、窓の外を見たまま言った。

「昨日、リオちゃんの歌、植木鉢のところまで聞こえてました」

リオが、はっちゃんを見た。

「変だった?」

はっちゃんは、すぐに答えなかった。

朝の校庭を見て、それから言った。

「変かどうかは、わからないです
でも、急がなくていい音でした」

リオの口元が少しゆがんだ。

泣くのをこらえているのか、笑おうとしているのか、アンにはわからなかった。

わからなくていいと思った。

チャイムが鳴った。

キーンコーンカーンコーン。

誰もすぐには立たなかった。

アンは、黒板消しをくわえそうになって、やめた。

「これは食べ物ちゃう」

ミナが、ほんの少し笑った。

その小さな笑いで、教室が息をした。

放課後、Snow Cafeへ向かう廊下は、いつもより長く感じた。

アンは、子どもたちの後ろを歩いた。

ソラは、スマホをポケットにしまっていた。

しまう前、親指が画面の上で止まった。

まだ群れの中へ戻りたい指だった。

それでも、しまった。

リオは、ノートを胸に抱えていた。

Doorのカードが、ノートの間にはさまっている。

ユウタは、画面を見ては、消せるスタンプを消していた。

ミナは、snowちゃんのカードを何度も読んでいた。

はっちゃんは、廊下の窓から校庭を見ていた。

朝、葉っぱに乗っていた水の玉は、もうなかった。

落ちたのだ。

けれど、葉っぱはしゃんとしていた。

アンは、それを見て思った。

落ちても、終わりやない。

Snow Cafeには、小さな明かりがついていた。

今日のメニューは、snowちゃんの手書きだった。

画面を閉じる時間
深呼吸ひとつ
あたたかい言葉

カフェの中は、いつもより声が少なかった。

でも、誰も追い出されていない空気があった。

ソラは、刹那先生とちびたぬき先生の近くに座った。

白い便せんが、机の上にある。

赤ペンは、まだ使われていない。

ハンカチも、たたまれたまま置いてある。

「最初、何て書けばいいかわからない」

ソラが言った。

ちびたぬき先生は、便せんを指で押さえただけだった。

「うまく書かなくていいです
まず、したことから書きましょう」

刹那先生は、ソラの横にカップを置いた。

「手が止まる時は
少し休んでからでいいよ」

ソラは、鉛筆を持った。

字はなかなか出てこなかった。

やっと書いた。

リオへ

その3文字は、少し曲がっていた。

アンは、床に座ってそれを見ていた。

曲がっていても、戻ろうとしている字だった。

別のテーブルでは、リオがノートを開いていた。

みー先生は、歌わせなかった。

ただ、歌詞の中でリオが好きな単語に、小さな丸をつけていた。

リオは言った。

「この単語、好き」

「じゃあ、今日は
その単語だけ守ろう」

みー先生は、それ以上言わなかった。

りゅか先生は、色えんぴつの箱をテーブルの端に置いた。

リオは、歌詞の横に小さな扉の絵を描いた。

まだ歌わなかった。

でも、ノートは閉じなかった。

アンの前に、snowちゃんがカードを1枚置いた。

今日の先生
数字を数える犬
心は数えない犬

アンは、そのカードを前足で押さえた。

「ええこと書くやん」

snowちゃんは、少しだけ笑った。

「アン先生
今日ちょっとこわかったです」

「こわかったか」

「でも、逃げないこわさでした」

アンは、カードから目を離せなかった。

「先生も、逃げたかったで」

snowちゃんの目が丸くなった。

「先生でも?」

「先生でもや。数字にしっぽ引っぱられる日もある。強い言葉でごまかしたくなる日もある。前足がすべる日なんか、まあまあある」

「それでも先生なんですか」

「それでも先生や。失敗したことがあるから、止まれって言える日もある」

Snow Cafeの窓の外で、校庭の影が長くなっていた。

ソラの便せんには、少しずつ文字が増えていく。

リオはまだ歌わない。

ユウタはまだリオの顔をまっすぐ見られない。

ミナはまだスマホの通知に肩を動かす。

それでも、誰も今日のことをなかったことにはしていない。

アンは立ち上がり、カフェの小さな黒板に今日の言葉を書いた。

バズってる情報ほど、まずおすわり
怒った言葉ほど、送る前に待て
数字は見るもの
心につける首輪ちゃう
好きなものを笑わない

書き終えた時、給食室の方からコロッケの匂いがした。

アンの耳が、勝手に立った。

「みなさん。今、非常に重要な情報が入りました」

たぬころ校長が聞いた。

「出どころは?」

アンは真顔で答えた。

「鼻です」

カメリーヌ先生が吹き出した。

みきさぶろう先生が、伏せていたカードを1枚だけ裏返した。

信頼できる一次情報:柴犬の鼻

はっちゃんが笑った。

ミナも笑った。

リオも、ほんの少し笑った。

ソラは便せんから顔を上げた。

その笑いは、誰かを笑うものではなかった。

同じ部屋に戻ってこられたことを、たしかめる笑いだった。

アンは、Snow Cafeの床に座った。

前足には、まだチョークの白が残っている。

今日の授業は、きれいには終わらなかった。

リオはまだ完全には笑っていない。

ソラの手紙も、まだ途中だ。

消えないコメントもある。

戻らない言葉もある。

でも、誰かが止まった。

誰かが消した。

誰かが謝ろうとした。

誰かがノートを閉じなかった。



それで、本日異常なし。

いや、ちょっと異常あり。

コロッケの数が、1個足りない。

アンはテーブルの下を見た。

ユウタの皿から落ちた小さなかけらがあった。

アンは前足でそれを指した。

「これは先生として、見逃すわけにはいかへんな」

Snow Cafeに笑いが広がった。

妄想学校に、数字の先生が来た日

その先生は、計算だけを教えなかった。

自分の失敗を、黒板の前に置いた。

子どもたちの震える手を見た。

先生たちの言葉にならない支えに助けられた。

そして、数字より先に
心を見る授業を始めた

明日もチャイムは鳴る。

キーンコーンカーンコーン。

そのたびに、赤いバンダナの先生はきっと言う。

「ほな、妄想のランドセル背負っていこか。今日は、昨日よりちょっとだけ、言葉を大事にできる日やで」


おしまい


あとがき

今回は、ちびたぬきさんの妄想学校に、アンも混ぜてもらいました。

いやあ、妄想学校って、ほんまにええ学校やねん。

先生も、生徒も、みんなやさしい。

やさしいだけやなくて、ちゃんと見てくれる。

笑ってええところでは笑ってくれるし、止まらなあかんところでは、ちゃんと止まってくれる。

しかもな。

コロッケの匂いがする。

これはもう、教育機関としてかなり高得点です。

アンの鼻調べでは、信頼できる一次情報です。

たぬころ校長がいて、ちびたぬき先生がいて、snowちゃんがいて、はっちゃんがいて、みー先生、りゅか先生、カメリーヌ先生、刹那先生、ひとやすみ先生、みきさぶろう先生。

みんな、それぞれのやさしさで、子どもたちを急がせずに待ってくれる。

そんな学校やから、柴犬でも先生をさせてもらえたんやと思います。

たぬきが校長やから、柴犬でも先生できる。

この一文だけ聞いたら、だいぶヘンテコやけど、アンはけっこう本気でそう思っています。

今回、アンのヘンテコな小説に出演してもらえませんかとお願いしたら、みなさん快く受けてくださいました。

ほんまにありがとうございます。

キャラクターをお借りするというのは、ただ名前を出すことやないと思っています。

その人が大事にしている空気。

その人の言葉の温度。

その場所に流れている時間。

そういうものを、なるべくこぼさずに受け取りたい。

アンはまだ前足がすべることもあります。

勢いで走りすぎることもあります。

でも、今回の妄想学校では、数字や情報の話をしながら、ほんまはずっと「人の好きなものを笑わないこと」を書いていました。

好きな歌。

好きな言葉。

好きなカード。

好きなノート。

好きなカフェ。

好きな妄想。

それは、誰かに点数をつけられるためにあるんやなくて、自分がまた明日を歩くための、小さな灯りみたいなものやと思います。

アンも、妄想学校でひとつ勉強しました。

先生は、完璧な人がなるものやない。

失敗したことがあるから、止まれと言える日もある。

こわかったことがあるから、逃げなくていいと言える日もある。

お腹がすいたことがあるから、コロッケの匂いに真剣になれる日もある。

最後のは、たぶん授業ではなく本能です。

ちびたぬきさん

妄想学校のみなさん

アンをこの学校に入れてくれて
ありがとうございました

またいつか、廊下の窓から葉っぱを見たり、Snow Cafeでカードを読んだり、給食室の方角を鼻で確認したりしに行きます。

その時は、どうかまたよろしくお願いします。

柴犬アン先生、いったん下校します。

ただし、コロッケの匂いがしたら戻ってきます。

オマケ