見積書づくりに毎回60分。その60分、"たたき台"をAIに預けると15分になります
見積書は、急ぎのときに限ってやって来ます。「概算でいいので今日中にもらえますか」の一通で、その日の予定がひとつ消える。
私の場合、こうでした。前に出した見積のファイルを探す。どれが一番近い案件か見比べる。項目をコピーして、今回の内容に直して、文言を整えて、送る前にもう一度「抜けてないか」を上から眺める。ここまでで60分。
しかも、時間がかかったわりに、手が止まっていた時間のほうが長いのです。書いていたのではなく、思い出していた。
◆ 重いのは「書くこと」ではなく「思い出すこと」です
見積書づくりは、4つの別々の作業でできています。
思い出す(この案件、何を載せるんだっけ)
組み立てる(項目の並びと構成を作る)
整える(相手に出せる文言にする)
値段を決める(いくらでやるか)
時間を食っているのは1〜3です。過去のファイルを探して、見比べて、「あの案件のときは何を入れたっけ」とたどる時間。ここが60分の正体です。
そして1〜3はAIに預けられます。
預けられないのは4だけ。いくらでやるかは、自分の商売の判断です。ここは渡してはいけない部分ですし、後で書きますが、私は一度ここで失敗しました。逆に言えば、この線さえ引いておけば、任せて困ることはまず起きません。
◆ 1つ目:過去の見積を2本貼って、たたき台を作らせる
頼み方にはコツがあります。AIへの指示は、①参照するもの ②やってほしいこと ③やってはいけないこと、の3つが揃うと安定します。逆に、どれかが欠けるとAIは想像で埋めてきます。
新しいチャットを開いて、これを貼ってください。
━━━━━━ ここからコピー ━━━━━━
■ あなたは、私の見積書のたたき台を作る担当です。
■ 参照するもの:このあと、私が過去に出した見積書を2本と、今回の案件のメモを貼ります。項目の立て方・言葉づかい・構成は、この過去の見積に合わせてください。
■ やってほしいこと:今回の案件メモをもとに、見積書のたたき台を作ってください。件名、項目の一覧、各項目の説明文、備考欄まで、そのまま清書に使える形で。
■ 過去の見積にあって今回のメモに書かれていない項目(送料、交通費、修正対応の回数など)は、勝手に入れたり外したりせず、最後に【確認】としてまとめて挙げてください。
■ やってはいけないこと:金額は一切書かないでください。すべての金額欄は【金額未定】としてください。値引きの提案もしないでください。
━━━━━━ ここまでコピー ━━━━━━
貼ったら、過去の見積2本(メールの文面のコピーで構いません)と、今回の案件メモを放り込むだけです。メモは走り書きで大丈夫です。「A社サイト改修、トップと下層3枚、写真は先方支給、来月末まで」くらいの粒度で動きます。
効いてくるのが「過去の見積に合わせてください」です。これを入れないと、AIはどこかの教科書のような、きれいだけれど自分の商売と関係ない見積を作ります。過去の2本を渡した瞬間に、自分の言葉づかいのまま出てくるようになります。
◆ 失敗談:一度、AIに値段を書かせてしまいました
正直に書きます。使い始めの頃、③の「やってはいけないこと」を書かずに投げたことがあります。
出てきた見積は、見た目は完璧でした。項目が並び、それらしい単価が入り、合計まで出ている。あまりに整っていたので、そのまま単価を2ヶ所しか直さずに送りそうになりました。
でも、その単価はAIが「相場っぽい数字」を想像で置いただけです。私の原価も、この客先との経緯も、今月の忙しさも、何も知らずに置いた数字です。送る直前に気づいて全部入れ直しましたが、ゾッとしました。整った見た目は、正しさの証拠ではありません。
それ以来、指示に「金額は一切書かない・全部【金額未定】」を必ず入れています。空欄が並んでいれば、嫌でも自分の頭で値段を決めます。たたき台の役目は、値段以外を全部終わらせておくこと。この分担にしてから、事故の芽がなくなりました。
◆ 2つ目:送る前に、"発注する側"として読ませる
たたき台に金額を入れたら、送る前にもう一手間だけ。そのままの続きのチャットで、こう頼んでください。
━━━━━━ ここからコピー ━━━━━━
■ いま完成に近づいたこの見積書を、あなたが「これを受け取って発注するかどうか決める側」になったつもりで読んでください。
■ 次の3点だけ、該当する箇所を挙げてください。
■ ①発注する前に「これはどういう意味ですか」と質問したくなる項目
■ ②どこまでやってくれるのか、この書き方では分からない項目(修正は何回まで、対応範囲はどこまで、など)
■ ③書かれていないことで、あとで揉めそうなこと(有効期限、支払条件、追加費用が発生する条件など)
■ 褒めなくて構いません。引っかかる箇所だけで結構です。
━━━━━━ ここまでコピー ━━━━━━
私が初回にこれをやったら、②で「修正対応」の項目が引っかかりました。何回までか書いていなかったのです。実際、過去に無限修正で消耗した案件は、いつもここが曖昧なまま始まっていました。
見積の抜け漏れは、送るときには気づけません。気づくのはいつも、揉めたときです。それを送る前の3分に前倒しできるのが、この一手の価値です。
◆ 3つ目:次回から"貼るだけ"にする
1回分が終わったら、最後にこれだけ足してください。
━━━━━━ ここからコピー ━━━━━━
■ 今回のやり取りをもとに、次回も使える「私の見積書ひな形メモ」を作ってください。
■ 内容:定番の項目一覧/各項目の説明文の言い回し/備考欄に毎回入れる文(有効期限・支払条件・修正回数など)/案件メモとして私が毎回伝えるべきことのリスト。
■ 次回、このメモと新しい案件メモを貼れば、同じ形のたたき台がすぐ出てくるようにしてください。
━━━━━━ ここまでコピー ━━━━━━
2回目からの流れはこうです。
ひな形メモを貼る
今回の案件メモを貼る
出てきたたたき台に、自分で金額を入れる
「発注する側として読んで」をかけて、指摘だけ直す
ここまでで15分ほどです。過去ファイルを探す時間が、まるごと消えます。
◆ ここまでやると、何が変わるか
私の場合、60分が15分になりました。ゼロにはなりません。金額を決める・最後に指摘を直す、は残ります。そこは残していい作業です。
ただ、時間より効いたのは別のところでした。
「概算で今日中に」が怖くなくなったことです。
以前は、見積依頼が来ると「今日の作業がひとつ飛ぶ」と身構えていました。返事が翌日になり、その一日で話が冷めたこともあったはずです。いまは、届いたその日のうちに、抜け漏れの点検まで済んだ見積が出せます。見積が早いというだけで、相手の温度が下がる前に届く。時短の話のようで、実は営業の話でした。
◆ 次の1本
同じやり方は、発注書や業務委託の依頼文にもそのまま効きます。「過去の2本を参照させる→たたき台→数字と判断は自分→相手側の目で点検」の流れは同じで、貼るものを差し替えるだけです。
今日やることは、チャットを1つ開いて、1つ目のコピー枠を貼るだけ。直近で出した見積を2本、探して貼ってみてください。次の「概算で今日中に」が来たとき、慌てなくなります。
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