パズル『えだぶり』の解き方の補足説明【解法テクニックのいくつか】
『えだぶり』のルールはこちらをご覧ください。
この記事では『えだぶり』の解法テクニックのいくつかを紹介していきます。
1 用語の確認
最初にこの記事で使う用語を整理しておきます。
基本的に「パズル『えだぶり』の解き方」で使った用語と整合性を保ちつつ,いくつかの新しい用語を導入します。
問題に書かれた 〇,①,②,③,④ の1個1個を「島」と呼びます。
ある島の上下左右の4方向のすぐ隣に島があるとき,その2つの島は「隣接している(隣接関係にある)」と呼びます。
ある島の隣接する島の数を「隣接数」と呼びます。
隣接関係にある2つの島が直接つながっているとき,2つの島には「橋がある」と呼びます。逆に直接つながっていない場合は「橋がない」あるいは「×が打たれる」と呼びます。
島に架かる橋の数を,その島の「次数」と呼びます。
任意の2つの島が,いくつかの島と橋を経てつながっているとき,2つの島には「道がある」と呼びます【注1:ここで使う「道」は,数学のグラフ理論で登場する「道」とは別のものを表しているので注意してください】
道を通ることで互いに行き来できる島の集まりを「諸島」と呼びます。
逆戻りすることなく,ある島から同じ島に戻ってくることができる道を「閉路(サイクル)」と呼びます。
2 次数条件
『えだぶり』の問題のそれぞれの島に書かれた数字は,その島の次数を表しています。これを次数条件と呼ぶことにします。
次数条件から次のことがわかります。
(ⅰ) 島の「次数」と「隣接数」が一致するならば,その島から隣接するすべ
ての島に橋が架かる。
(ⅱ) 隣接数が1の島の次数は1である。すなわち,その島は①である。
(ⅲ) 島の「すでにわかっている橋の数」と「次数」が一致するならば,その
島からは残りの隣接するすべての島に橋を架けられない。
(ⅳ) 島の「すでに橋が架からないことがわかっている隣接する島の個数」と
「隣接数」の和が「次数」と一致するならば,その島から残りの隣接す
るすべての島に橋が架かる。
箇条書きにすると難しく見えますが,具体的に考えると当たり前のことばかりです。そんなに難しくはありません。
次の《例題1》に上記 (ⅰ) を適用します。隣接数が1の①に1本の橋を架け,隣接数が2の②に2本の橋を架け,隣接数が3の③に3本の橋を架け,隣接数が4の④に4本の橋を架けると,下図《例題1の途中(1)》になります。※赤い部分が決まります。

上図《例題1の途中(1)》に対して,さらに (ⅲ) と (ⅳ) を適用すると下図《例題1の途中(2)》になります。※さらに赤い部分が決まります。

ちなみに,私(赤い矮星)が作問する問題のうち,レベル☆としている問題は上記の (ⅰ) と (ⅲ) と (ⅳ) だけを使って解けるように作ってあります。
レベル☆の問題の解き方は「パズル『えだぶり』問題【レベル☆ その4】」にも詳しく書いたので,そちらも参考にしてください。
順番が前後しましたが,次の《例題2》に上記の (ⅱ) を適用すると次の《例題2の途中(1)》ようになります。※赤い部分が決まります。

3 閉路禁止条件
『えだぶり』は閉路(サイクル)を作ってはいけません。これを閉路禁止条件と呼ぶことにします。
すぐにわかるのは凹み部分です。
例えば,上記《例題2》を解いている途中で下図《例題2途中(2)》になったとします。この場合下図《例題2途中(3)》の赤い × の部分に橋は架かりません。橋が架かると閉路ができてしまいます。

閉路禁止条件は別の言い方をすると,任意の2つの島の間に道があれば,他には道がないことを意味します。したがって,すでに道がある2つの島の間に橋を架けることはできません。
ただ,この「島と島に道があるかどうか」は道が長くなるとだんだんわかりづらくなります。
なので,私は,次の2つの方法を使っています。
1つ目はこの後の説明で使うように,道でつながっている部分(つまり諸島の部分)を色で塗り分ける方法です。
私は『えだぶり』を解くときに蛍光ペンを数色用意していて,橋が架かっているところを同じ色で塗り,諸島がハッキリわかるようにしています。
もう1つは諸島と諸島の境界線に線を引いてしまう方法です。
このやり方は「パズル『えだぶり』問題【間欠問題】」の記事で紹介しているのでそちらをご覧ください。
もう少し上級のテクニックに行きます。
次の《例題3》を解いている途中で下図《例題3の途中(1)》の状態になったとします。

このとき2行6列の③は,まだ2つの橋しか決定していないので,あと1つ橋を架けなければいけません。
左(2行5列)の③,または下(3行6列)の②のどちらかに橋が架かります。ちょっとわかりづらいのですが下図《例題3の途中(2_1)》に赤の二重線を2本引きました。そのどちらに橋が架かります。

ところで,先ほどの左(2行5列)の③と下(3行6列)の②の間には道があります。なので,この2つの島は同じ諸島に属します。上図《例題3の途中(2_2)》の赤で塗りつぶした諸島です。
一方,2行6列の③は上図《例題3の途中(2_2)》の黄色で塗りつぶした諸島に属します。
同じ諸島に属する島同士は道でつながっています。
ということは,まだつながっていませんが,赤い諸島と黄色の諸島は必ず赤の二重線のところでつながる(橋が架かる)ので,それ以外のところで赤い諸島と黄色い諸島の間に橋が架かることはありません。
そうすると閉路ができてしまいます。
同じように考えます。
これも見づらいのですが上図《例題3の途中(2_1)》に緑の2本の二重線を引きました。ここも「まだ橋が架かっていないけど,どちらかで必ず橋が架かる」場所です。したがって,上図《例題3の途中(2_2)》の赤い諸島と緑の諸島はここでつながり,それ以外の場所で赤い諸島と緑の諸島の間に橋が架かることはありません。
オレンジ色の2本の二重線も同様です。
ここでオレンジの諸島と黄色い諸島がつながります。他の場所でオレンジの諸島と黄色い諸島に橋が架かることはありません。
説明が長くなりましたが,結果的に黄色と赤と緑とオレンジの諸島は赤と緑とオレンジの二重線の箇所に橋が架かり,1つの大きな諸島になります。
それ以外のところで諸島の間に橋が架かることはありません。
上図《例題3の途中(2_1)》の黒い × が打たれます。
このように,まだ橋は架かっていないけど,絶対に橋が架かることがわかっている場合には,それ以外の場所で諸島と諸島がつながらないと考えることができます。
(ⅰ) 隣接する2つの島が,すでに道でつながっている(同じ諸島に属してい
る)とき,この2つの島の間に橋は架けられない。
(ⅱ) 隣接する2つの島が,まだ道でつながっていなくても,別の場所に橋が
架かりつながることが決まっていれば,この2つの島の間に橋は架けら
れない。
4 連結条件
『えだぶり』の答はすべての島が道でつながっていなければなりません。これを連結条件と呼ぶことにします。
ある諸島において,さらに橋を架けられる島が1つしかないとき,その島を「単独成長点」と呼びます。
さらに,架けられる橋の数が残り1本しかない単独成長点を「残り1の単独成長点」と呼びます。
2つの諸島がともに「残り1の単独成長点」を持つ場合,その「残り1の単独成長点」同士に橋を架けることはできません。ただし,それがパズルの完成する最終局面である場合は例外です。
1番簡単な例は①です。単独の①は「残り1の単独成長点」です。なので,①と①の間に橋を架けることはできません(下図《例題4の途中(1)》参照)。

少し複雑な例を見ていきます。

上図《例題5》を解いている途中で上図《例題5の途中(1_1)》の状態になったとします。
このとき,下図《例題5の途中(1_2)》の黄色で示した島は,それぞれ下図《例題5の途中(2)》の赤い線で分けた諸島の「残り1の単独成長点」になります。
正確には3行7列の〇は,まだ諸島に属していませんが左右のどちらかに橋が架かることは明白なので,あとの説明の都合上,諸島に含めています。

わかりやすいのは9行1列の〇と8行6列の〇だと思います。これは橋を伸ばしてどこかの島とつながる必要があるので,上図《例題5の途中(2)》の緑の橋が架かります。
3行6列の②は,右と下のどちらかに橋を架けることになりますが,右に行くと,この諸島が外部とつながる道を閉ざすことになるので,②は下に橋を架けることになります。上図《例題5の途中(2)》の緑の橋が架かります。
連結条件が連続するパターンも確認しておきます。
下図《例題6》を解いている途中で下図《例題6の途中(1_1)》になったとします。

上図《例題6の途中(1_1)》は5個の諸島に分かれています。
それを示したのが下図《例題6の途中(1_2)》です。
緑と黄色と赤と青と,そして色を塗ってないので5個の諸島です。

緑の諸島の6行6列の〇は「残り1の単独成長点」です。
しかし,左の②に橋を架けると,緑と黄色を合わせた諸島は他とつながることができなくなります。連結条件に反します。
6行6列の〇は下の〇に橋を架けることになります。
これにより,6行5列の②が,緑と黄色を合わせた諸島の「残り1の単独成長点」となりますが,右には行けないので6行4列の赤い島(諸島)に橋を架けます。
同じことを繰り返していきます。6行4列の〇が緑と黄色と赤を合わせた諸島の「残り1の単独成長点」になります。なので,6行3列の〇に橋を架けます。
そうすると,6行3列の〇が,緑と黄色と赤と青を合わせた諸島の「残り1の単独成長点」になります。なので,6行2列の〇に橋を架けます。
これでパズルは完成です(上図《例題6の解答》参照)。
最終局面以外で「残り1の単独成長点」同士に橋を架けることはできない。
あと,度々出てはきませんが,「パズル『えだぶり』問題【幅3個の紐】」で紹介した,①が並んで壁を作るパターンなども,連結条件の1種です。
5 仮置きと「常套パターン」
高校の数学で習う背理法です。
ある箇所に「橋を架ける」(と仮定する)とパズルが破綻する(矛盾する)場合,そこには「橋が架からない」という考え方です。
あるいは,ある個所に「橋を架けない」(と仮定する)とパズルが破綻する(矛盾する)場合,そこには「橋が架かる」という考え方です。
これを「仮置き」と呼びます。

上図《例題2》を解いている途中で上図《例題2の途中(5)》の状態になったとします。このとき黄色で示した②は,上の①か左の②か下の〇のどれかに橋を架ける必要があります。

では,まず「上の①に橋を架ける」と仮定します。そうすると上図《例題2の途中(6_1)》の赤い部分が決まります。
黄色で示した諸島がどこともつながらなくなり分離してしまいました(連結条件が満たされなくなりました)。つまり破綻(矛盾)しました。
よって「上の①には橋が架からない」ことがわかります。
次に「左の②に橋を架ける」と仮定します。上図《例題2の途中(6_2)》の赤い部分が決まります。黄色で示した諸島がどこともつながらなくなり分離しました(連結条件が満たされなくなりました)。破綻(矛盾)しました。
よって「左の②には橋が架からない」ことがわかります。
ということで,上の①にも左の②にも橋が架からないので,下の〇に橋が架かることがわかります。
「仮置き」のうち,よく出てくる定型のパターンを「常套パターン」と呼びます。

上図の一番左の図の場合,ⒶとⒷが同じ諸島に属していると,2行2列の③から必ず赤い二重線の箇所に橋が架かります。
上図の真ん中の図の場合,ⒶとⒷとⒸが同じ諸島に属していると,2行2列の②から必ず赤い二重線の箇所に橋が架かります。
上図の一番右の図の場合,赤い二重線の箇所に必ず橋が架かります。
先に紹介した①と①の間に橋が架からないのも常套パターンの1つです。
他にもいろいろあるので探してみてください。
こういう常套パターンをたくさん知っていると,『えだぶり』を解くのが格段に速くなります。
6 唯一解とユニークネス
パズルには答がなくても,複数あってもいけません。
ただ1つしか答えがない(唯一解をもつ)ことがパズルを作る際の暗黙のルールとなっています。
私が作る『えだぶり』も唯一解をもつように作られています。
なので,もし適当に橋を架けて「次数条件」も「閉路禁止条件」も「連結条件」も満たす状態を作れてしまったら,間違いなくそれが答です。
それが唯一解であり,他に答はありません。
『えだぶり』は100%理詰めで答にたどり着けるパズルです。
このような「適当に置いてみたら解けちゃった」的な解き方は,もちろん作問者の意図する解き方ではありません。
ですが,こういう解き方がダメかといえば,私はこういう解き方も「あり」ではないかと思っています。
私もよく仮置きをしていて,破綻せず,そのまま解けてしまうことがあります。私は作問者なので,もちろん,その仮置きは捨てて,矛盾が生じる仮置きを探し直しますが,それをせず,解けた時点でOKとする遊び方もあっていいと思います。
問題を見て,理屈ではなく,なんとなく「ここら辺に橋が架かりそうだ」などと勘を働かせる。そして,うまくいかなかったら消しゴムで消す。そんな解き方も「あり」と考えます。
「迷路」には「袋小路をつぶしていく」とか「壁に沿って進む」とか,絶対に解ける解き方があります。でも,そんな解き方をする人はほとんどいないと思います。行止りになったら引き返し,トライ&エラーを繰り返してゴールを目指します。『えだぶり』をそんな感じで解くのも「あり」だと思います。
話が脱線しました。
ところで,パズルの世界では唯一解であることを利用して解いていく解法を「ユニークネス」と呼ぶそうです。
例えば,次の《例題7》を見てください。

ここで,9行3列の②と右隣の9行4列の①に橋が架からないと仮定してみます。(上図《例題7》の赤い × を仮置きしてみます)。
そうすると,9行4列の①から,上図《例題7》に黄色で示した2つの〇の,どちらに橋を架ければいいのかが決められなくなります。
つまり唯一解ではなくなります。
なので,9行3列の②と右隣の①の間には橋が架かります。
これにより,9行3列の②とその上の①は,ともに「残り1の単独成長点」になります。その間に橋は架かりません。
上図《例題7の途中(1)》の黒い橋と × が決まります。
さらに同じことを考えます。
上図《例題7の途中(1)》のように,8行2列の③と右隣の8行3列の①の間に × を仮置きしてみます。
そうすると,8行3列の①から黄色で示した2つの〇のどちらに橋を架ければいいのかが決められなくなります。唯一解ではなくなります。
したがって,8行2列の③と右隣の①の間には橋が架かります。
ユニークネスは反則技かもしれません。
ただ,例えば上の《例題7》の場合,9行3列の②と右隣の①の間に × を置く(仮置きする)と,どこかで必ず矛盾が生じるはずです。
「どこに仮置きをするか」を考えるときにユニークネスを利用するのは「あり」ではないでしょうか。
その結果として,ユニークネスを使わない矛盾を見つけられれば,立派に理詰めで答にたどり着いたことになると思います。
7 おわりに
『えだぶり』はシンプルなパズルなので,解法も多岐にわたります。
まだ,私の知らない解法もたくさんあるのではないかと思います。
新しい解法を発見した方がいらしたら,ぜひ,私にも教えてください。
よろしくお願いいたします。
8 追記
【追記1】
今回の記事で使用した《例題》の問題と解答のPDFファイルを,無料でダウンロードできるようにしました。A4判に印刷することを想定しています。
純粋に『えだぶり』の問題としてもお楽しみいただければ幸いです。


【追記2】
今まで note に投稿した問題の一覧がこちらです。
【追記3】
作問者(赤い矮星)は,今回の記事に掲載した問題(第183問,第184問)及びその解答の一切の著作権を放棄します。個人利用,商用利用の区別なく,転載,複製,改変,頒布など,自由に行うことができます。ただし,それらの行為によって生じたトラブルや損害などについては一切の責任を負いかねます。あくまでも自己責任でお使いください。
