ピッタの、体のはなし ── 火を、どう鎮めるか
※これは「ドーシャのはなし」というシリーズの一本です。前に書いた「ピッタさんは、火を隠せない」が心のおはなしなら、今日はその相棒、体のおはなしです。
※アーユルヴェーダを知らない人にこそ読んでほしい連載です。カタカナは意味を都度そえるので、わからなければ飛ばして、気楽にどうぞ。
はじめに言っておくと、これは診断じゃありません。
「わたし、火が強めかも」と思った人が、じゃあ何に気をつけて、どう整えたらいいのか。その手当ての目安として、気楽に読んでください。
ドーシャは、体にも出る
心回では、ピッタの心(情熱的、鋭い、火を隠せない)を見ました。
そのおおもとの性質は、こうです。ピッタ=火と水。
だから、熱くて・鋭くて・軽くて・少し油っぽくて・流れる。
この「熱」と「鋭さ」が、そのまま体にも出てきます。
体に出る、ピッタ
火が強めの人の体は、だいたいこんな感じ、と言われています。
体つき:中肉中背で、均整がとれている。筋肉がつきやすい。
肌と髪:色白か、赤みがさしやすい。そばかす、ほくろ。敏感肌で、汗をよくかく。髪はやわらかく、白髪や薄毛が早めに来る人も。
消化:強い。アグニ(消化の火)がしっかり燃えていて、食欲旺盛。よく食べて、よく消化する。そのかわり、お腹が空くと機嫌が悪くなる(空腹に弱い)。便はゆるめ・下しやすい傾向。
睡眠:短くても足りる。寝つきはいい。
エネルギー:安定して高い。持続する。
寒暖:暑がり。汗っかき。体に熱がこもりやすい。
全部に共通しているのが「熱」と「鋭さ」。
目つきまで鋭かったりします。体まで、ちゃんと火なんです。
整ってる時/増えすぎた時
整ってる時は、火のいいところが出ます。
消化力が抜群、肌につや、集中力が鋭い、体温調整がうまい、行動力がある。かまどの火が、ちょうどよく燃えている状態。
整った火のひとって、すごく魅力的なんです。
目に力があって、肌にはつやがある。均整のとれた体つきで、姿勢がいい。頭の回転が速くて、話すと筋が通っていて、頼りになる。決めるときは、さっと決める。まわりを引っぱっていく熱と、やり遂げる強さがある。
かまどの火がちょうどよく燃えているみたいに、あたたかくて、まぶしい。整ったピッタは、そういう凛とした魅力のひとです。
増えすぎると、熱と鋭さが行きすぎて、体のあちこちが「燃えて」きます。こんなサインが出やすいと言われます。
胸やけ、胃のむかつき、胃の不快感
口内炎、口の苦み
肌荒れ、吹き出物、湿疹、かゆみ(熱を持った肌トラブル)
のぼせ、ほてり、体の熱感、多汗
目の充血、目の疲れ
軟便、下痢(においが強くなることも)
においや光に敏感になる
心回の「火を隠せない(イライラ、怒りっぽさ)」が、体では「胃が焼ける・肌が荒れる・のぼせる」になって出てくる。
火は、心にも体にも同じように燃えるんです。
このリストを書き出していて、あとから気づいたことがあります。
汗、目、肌、髪、胃。並べるとバラバラに見えますが、古典はピッタの座(居場所)として、汗・血・目・皮膚・胃を挙げるんです。上のサインは、その五つの上にきれいに乗っています。
つまり、症状を丸暗記しなくていい。
火がどこに座るかを覚えておけば、そこから引き出せる。 バラバラだった不調が、一枚の地図の上に置き直された感じがしました。
こんな時に、ピッタは増える
火がめらめらしやすいのは、こんな時。
季節:夏。暑い季節。
一日:日中、陽が高いころ。
一生:働き盛りの、燃えて動く年代。
暮らし:辛いもの、酸っぱいもの、揚げ物、アルコール、コーヒーのとりすぎ。暑さ、直射日光。空腹の放置(火が、燃やすものがなくて自分の身を焼く)。締め切りや競争のストレス、怒り。
夏に、締め切りに追われて、コーヒーをがぶ飲みして、ごはんを抜く。
これ、火に油をぜんぶ足しているようなものです。
意外だったのは、空腹の放置が原因のほうに入っていることでした。
食べすぎじゃなく、食べないほうが火を乱す。
燃やすものを失った火は、自分の身を焼くから、という説明です。
わたしはずっと、食べそびれた後の早食いを、ただの性格だと思っていました。
性格じゃなくて、火の反応かもしれない。
そこまで見ていた人たちがいたのか、と思います。
もうひとつ。わたしはカパの人間です。
心回で、動かない、朝起きられない、と白状しました。
でも消化だけは、どう考えてもカパじゃない。
カパの消化はゆっくりで重くて、食べそびれても平気なはずなんです。
わたしは平気じゃない。空腹に弱くて、下しやすい。ここだけ火です。
人はひとつの型に収まらない、というのは、こういうことなんだと思います。
整えかた ── 火を、冷ます
やることは、火を冷ますこと。ただし、消すんじゃありません。
火は大事な消化の力。燃やしすぎを、ちょうどよく落ち着かせるイメージです。合言葉は、冷・穏・ゆとり。
味でいうと、ピッタを鎮めるのは甘・苦・渋の三つ。
反対に、酸・塩・辛は火を増やすので、増えすぎている時は控えめに。

食べ方
熱いもの・激辛・揚げ物・お酒・コーヒーを、ちょっと控える。
苦味と渋味を味方に。ゴーヤや葉物野菜(苦)、豆(渋)は、火を静めてくれると言われます。
甘い穀物や果物、ミント、コリアンダー(パクチー)など、涼しい性質のものを。
ギーは、油だけど火を鎮める側なので、ピッタと相性がいいとされます。
そして、お腹を空かせすぎない。ピッタは欠食が苦手。空腹放置は火が暴れるもとなので、規則正しく食べる(→ 消化の火・アグニの話 )。
※ちなみに、週にいちど火を休ませる「断食(アーマパーチャナ)」は、ピッタの人にはけっこうきついので、無理をしないほうがいいと言われています。体質で、向き不向きがあるんです。
暮らし
涼しく過ごす。がんばりすぎない。ゆとりを持つ。
怒りや不満を、溜め込まない。
目が疲れたら、ローズウォーターで冷やすケアも気持ちいいです。
真夏のサウナや、炎天下の激しい運動は、火のひとには少し刺激が強いかも。
火のひとは、放っておくと燃えすぎて、胃も肌も心も焼いてしまう。
意識して、冷やして、ゆとりをつくってあげる。
そうすると、火は「暴れる火」から「あたたかい火」に戻ります。

さいごに ── つらい時は、がまんしないで
胸やけも、肌荒れも、のぼせも、理由はひとつじゃありません。
とくに、ほてりやのぼせ、動悸が気になる時は、更年期のサインだったり、体が教えてくれている大事な合図だったりします。
ここに書いたのは、あくまで「入り口の手当て」まで。つらい時、続く時は、がまんせず専門家に診てもらってくださいね。
そのうえで、ひとつだけ。
火は、鎮める対象である前に、あなたの持ち物です。
食べたものを体に変え、考えを前に進め、決めて動く。
それを全部やっているのが、その火です。
冷やすのは、消すためじゃなくて、いい火を長く使うため。
胃が焼けた日も、肌が荒れた日も、その火はちゃんと働いています。少し涼しくしてあげれば、また、あのまぶしいほうの顔に戻ります。
まずは、コーヒーを一杯だけ我慢して、苦い葉っぱを一口。
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