ヴァータの、体のはなし ── 乾いて、冷えて、風のように動く
※これは「ドーシャのはなし」というシリーズの一本です。
前に書いた「ヴァータちゃんは、生き急ぐ」が心のおはなしなら、今日はその相棒、体のおはなしです。
※アーユルヴェーダを知らない人にこそ読んでほしい連載です。カタカナは意味を都度そえるので、わからなければ飛ばして、気楽にどうぞ。
はじめに言っておくと、これは診断じゃありません。
「わたし、ちょっとヴァータっぽいかも」と思った人が、じゃあ何に気をつけて、どう整えたらいいのか。
その手当ての目安として、気楽に読んでください。
ドーシャは、体にも出る
ドーシャは、体と心の両方を動かしている「働き」でした。
心回では、ヴァータの心(そわそわ、ひらめき、生き急ぎ)を見ました。
そのおおもとの性質は、こうです。
ヴァータ=空と風。だから、乾いて・冷たくて・軽くて・動く。
この性質が、そのまま体にも出てきます。
体に出る、ヴァータ
風が強めの人の体は、だいたいこんな感じ、と言われています。
体つき:痩せ型で、骨や関節が目立ちやすい。太りにくい。
肌と髪:乾きやすい。カサつく、くすむ、髪もパサつきがち。手足が冷たい。
消化:むらがある。食欲が出たり出なかったり。お腹が張る、ガスがたまる。便が乾いてコロコロになりやすい(風=乾なので、腸も乾く)。
睡眠:浅い。寝つきが悪かったり、夜中や明け方に目が覚めたり。
エネルギー:瞬発力はあるけど、長く続かない。ぱっと動いて、ぱっと切れる。
寒暖:とにかく寒がり。冷えに弱い。
全部に共通しているのが、「乾・冷・軽・動」。体まで、ちゃんと風なんです。
整ってる時/増えすぎた時
同じヴァータでも、ちょうどいい時と、増えすぎた時では、体の出方が違います。
整ってる時は、風のいいところが出ます。
体が軽い、動きが軽やか、頭の回転が速い、お通じもすっと来る、順応がうまい。風がそよそよ、気持ちよく吹いている状態。
整った風のひとって、すごく魅力的なんです。
手足がすらっと細くて、動きがしなやか。
表情がくるくる変わって、笑うと場がぱっと明るくなる。
なんといっても、発想力。ひらめきがぽんぽん湧いて、話が次から次へと転がって、一緒にいて絶対に飽きない。
「そんな考え方があったんだ」と、こっちの世界までひろげてくれる。
新しいことにも、身軽にすっと飛び込んでいける。
一緒にいると、こっちまで軽くなる——そよ風が通り抜けた時の、あの気持ちよさ。整ったヴァータは、そういう軽やかで、心おどる魅力のひとです。
増えすぎると、乾と冷と動が行きすぎて、こんなサインが出やすいと言われます。
便秘、お腹の張り、ガス
冷え、手足の冷たさ
肌や髪、唇の乾燥
眠りが浅い、寝つけない
関節がこわばる、肩こり腰痛
疲れやすい、そわそわして落ち着かない、不安
心回の「頭の中がいつも高速回転」が、体では「眠れない・落ち着かない・疲れる」になって出てくる。心と体は、地続きなんです。
こんな時に、ヴァータは増える
風が吹きやすくなるのは、こんな時。
季節:秋から初冬。乾いて、冷えて、風が吹く季節。
一日:夕方と、夜明け前。
一生:歳を重ねてから。乾いて軽くなっていく年代。
暮らし:旅や引っ越し、不規則な生活、食べ損ね、忙しさ、寝不足、冷たいもの・乾いたもの(サラダ、クラッカー、スナック)ばかりの食事、考えすぎ。
このどれかが重なった時、「あれ、最近そわそわするな」「便秘だな」と思ったら、風が吹いているサインかもしれません。
整えかた ── 風の逆をする
やることは、シンプルです。風の逆をする。乾いてるなら潤す、冷たいなら温める、軽くて落ち着かないなら、重く、落ち着かせる。この三つ、潤・温・重が合言葉です。
味でいうと、ヴァータを鎮めるのは甘・酸・塩の三つ。反対に、苦・辛・渋は風を増やすので、増えすぎている時は控えめに。

食べ方
温かいものを。冷たいもの・乾いたものより、汁物、煮込み、おかゆ、根菜。
油を味方に。ギーやごま油でコクと潤いを足す。
白湯を、こまめに(→ 白湯の話 )。
そして、決まった時間に食べる。ヴァータは「規則正しさ」でいちばん落ち着きます。
暮らし
温めて、油を使う。アビヤンガ(温めた油で全身をマッサージ)や、湯船にゆっくり(→ アビヤンガの話 )。足の裏に油をすり込むのも、よく眠れると言われます。
ばたばた動きすぎない。早めに寝る。あたたかくして過ごす。
生活のリズムを、なるべく一定に。
風のひとは、放っておくと生き急いで、乾いて、疲れてしまう。意識して、潤して、温めて、ゆっくりさせてあげる。 それだけで、体はずいぶん楽になります。

さいごに ── つらい時は、がまんしないで
乾燥も、冷えも、便秘も、眠りの浅さも、ぜんぶ理由はひとつじゃありません。
ここに書いたのは、あくまで「入り口の手当て」まで。
気になる不調が続く時、つらい時は、がまんせず専門家に診てもらってくださいね。
そのうえで、ひとつだけ。
風は、鎮める対象である前に、あなたの持ち物です。
息をする。血をめぐらせる。食べたものを送り出す。思いつく。
動くこと全部を担当しているのが、その風です。
潤して温めるのは、止めるためじゃなくて、いい風を長く吹かせるため。
眠れなかった夜も、そわそわして落ち着かない日も、その風はちゃんと働いています。
少し潤して、温めてあげれば、また、あのそよ風のほうに戻ります。
まずは、白湯を一杯。あたたかいものを、決まった時間に。
風のひとの体は、それだけでちょっと、ほどけていきます。
つづき、「ピッタの、体のはなし」はこちら
→ (ピッタ体回のURL)90日間のアーユルヴェーダ実験、本編はこちら
