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旅から戻ったインコと、居場所を探す人々|ギリシャ・クレタ島ひとり旅

アテネを離れ、クレタ島へ。
アテネでは美食や遺跡観光を楽しんだけれど、クレタ島ではちょっと変わった過ごし方をした。

暮らしたい街、ハニア

サントリーニ島やミコノス島を訪れるのは、ほとんどが観光客。
一方でクレタ島は、現地の人たちから休暇先として親しまれている場所でもあり、観光地でありながらも落ち着いた雰囲気。

特に私が訪れたハニアは、そこでの暮らしを気に入って、海外から長期滞在しに来ている人たちもいたほど、「暮らせる街」だった。

16世紀に建てられた灯台は街のシンボル。
海沿いのベンチに座り、ただ海を眺める。

スピリチュアルに明るいギリシャの人々

そんなハニア滞在中、観光とは少し違った体験もしてみたく、現地のローカルイベントを探してみた。

すると見つかるのは、占星術や瞑想などのイベントばかり。
ギリシャを訪れる前にも、複数人のギリシャ人から初対面で「星座」を聞かれたことを思い出す。

古代から神託や占いとともに歴史を積み重ねてきた国だからだろうか。
「見えないもの」を信じる文化が、身近なものとして暮らしの中に残っているみたい。

そんな中で見つけたのが、「サイコシンセシス」のイベントだった。

居場所と「癒し」を求めて集う人々

最初にサイコシンセシスという言葉を見たときは、「ミュウツー」を思い出した。

聞き慣れない言葉に不安を感じつつも、メッセージを送る。
私が旅人で、今回のイベントにしか参加できないことを伝えたけれど、それでもあたたかく迎え入れてもらえた。

参加は無料。
それどころか、お茶やお菓子、その後の食事までご馳走になってしまった。

主催者はもともと心理学の専門家で、既存の理論だけでは届かない心のケアに関心を持ち、この考え方を広めていると話していた。

彼女自身もハニアに来たばかりで、同じように居場所やつながりを求める人たちのためのコミュニティをつくっているのだという。

参加者はギリシャ人だけではなく、この街で新しい暮らしを始めたインターナショナルな人たちも。
毎日ここに通っているという人もおり、みんなが安心して集まれる場所になっていた。

人生について語り合う時間

集まった人々でハーブティーを飲みながら、自己紹介をし、人生や瞑想について語り合う。

私が未来の選択に迷っていると話すと、
「選べないときは選ばなくていい」
「急ぐ必要はない」

と、やさしく受け止めてくれた。

途中、涙を流す人も。
デンマークのフォルケホイスコーレで毎週行っていた、グループミーティングの時間を思い出す。

感情をオープンにして、誰かと分かち合う文化は、ここにも根付いていた。

自分や相手の弱さを受け入れる時間は、それでもしなやかに生きようとする強さを与えてくれることがある。
自分は一人じゃないと思えることが希望になることもある。

サイコシンセシスは、そうした対話をとおして自分を見つめ直し、癒しを得るためのアプローチのようだった。

旅先で出会ったばかりの人たちとのあたたかい時間の中で、私は「見えないもの」に支えられる感覚を少しだけ思い出す。

旅から戻ったインコ

グループトークの最中、窓の外から不思議な音が聞こえていた。

ぽちょぽちょぽちょ、と水のような穏やかな音。
ただ、水にしては妙なほどよく響いている。

それは、インコだった。
向かいのアパートのベランダで、楽しげに音を奏でている。

実はこのインコ、以前脱走したことがあるらしい。
そして、なぜか一年ほど経ってから、水の音と猫の鳴き真似を覚えて戻ってきた。

川の近くで暮らしていたのだろうか。
旅の途中で猫と友達になったのだろうか。

集まった私たちは、そんな想像をして楽しんだ。

インコのおしゃべりと瞑想

お茶を飲み終えると、クレンジングマテリアルと呼ばれる蝋燭が灯され、瞑想の時間が始まった。

私は以前から瞑想に興味があったけれど、一度もうまくできたことがない。
「瞑想しよう」と思うほど、余計なことを考えてしまう。

けれど、この日は違った。

ぽちょぽちょぽちょぽちょ。

インコが楽しそうに、水の音を口ずさみ続けていた。
瞑想中も、その音は止まらない。

ただ、気になるものが「インコのおしゃべり一つだけ」になったことで、私は不思議なほど瞑想の世界に入っていった。

気づいたら少し眠っていた。
これが瞑想として正しいのかはわからない。
それでも目覚めたとき、今までの瞑想で一番、すっきりとした感覚が残っていた。

旅の歌を歌う

鳥が歌を歌うのは、そのメロディが美しいと思っているからだろうか。

もしそうなら、あのインコにとっては、旅で出会った水の流れが、世界一美しい歌だったのかもしれない。

どんな川を見つけたのか。
それとも海だったのか。

戻ってきた彼女は、きっと今日もベランダで、旅の歌を歌っている。

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