アクアポニックスという『小さな未来』|建物が食べ物を育てる未来
【農業は、都市に戻ってくるのかもしれない】
#投資思考譚No.4
アクアポニックスという“小さな未来”
建築士の投資思考です☀️
前回までの記事はこちら↓↓↓
■【導入】都市の空白の魅力
日々建築の仕事をしていると、
なんの変哲もない空間を見て
「この空間、10年後どう使われているんだろう」
とふと考えることがあります。
例えば、 大型商業施設の屋上。
夜になると、 室外機の低い音だけが響いていて、
人の気配はほとんどない空間
あるいは、 空きテナントや、
使われなくなった地下空間、
シャッター街となった商店街
人口減少や、物価上昇、時代の流れのなかで
かつては人で賑わっていた様々な場所が、
日本の中でも少しずつ用途を失ってきています。


そのような場所を見つめながら、
今は“使われていない場所”にも、 これから「別」の役割を与えられないかと思うことがあります。
例えば、
エネルギーを作る場所や
地域コミュニティの場所
あるいは、 都市の中で、
小さく食べ物を育てる場所。
話は少し変わりますが、
少し前まで「農業」というものは
広い土地と大量の水が必要で
自然の近くで行うもの
▶つまりは、“都市の外側”にあるものでした。
もちろん
家庭菜園や植物をベランダで育てたりするのも
私は立派な農業だと思ってて、
最近、 その距離感が少しずつ変わり始めているのに
興味を持ちこの記事を書きました。
この記事の核ともなる、
今回の譚で注目したい技術が、
「アクアポニックス」という仕組みです。
■アクアポニックスとは何か
アクアポニックスとは、簡単に言うと
魚の養殖(Aquaculture)と、
水耕栽培(Hydroponics)を組み合わせた
循環型システムのことです。
①魚が泳ぐ水槽の水は、魚から出る糞を栄養として
微生物が植物の栄養へと変えていく。
②植物はその栄養を吸収しながら、 水を浄化する。
③そして綺麗になった水は、再び魚の水槽へ戻る。
つまり、「魚・植物・微生物・水」が
循環する農業です。

言葉だけ聞くと、
少し未来的に思えるかもしれません。
しかし、この手法は“最先端技術”というより、
実は「都市に静かに戻ってくる過去の農業」
であるのです。
■水と野菜と歴史と
日本は海に囲まれた国として
利水の文化が強いです。
しかし、世界を見渡すと
人類は昔から、「水」をうまく活用してきてます
水があるところに文明は生まれると
小学校や中学校で習ったあれのことですね!
河川を管理し、 水を運び、 食べ物を育てる。
水とは、 文明そのもの
を支える生活インフラでした。
アクアポニックスの起源は古代に遡ります。
古代アステカ文明では、 「チナンパ」と呼ばれる浮島農業が存在していたと言われています。

湖の上に農地を作り、 水と植物を循環
させながら作物を育てる。
現代のアクアポニックスにみる
水との共生の起源ですね。
土から切り離された従来の農業は、
広い土地。大量の水。天候。人手。
そういったものに、 大きく依存していました。
でもアクアポニックスは、 少し違います。
必要なのは、水を循環させる仕組み。温度管理。光。ろ過。センサー。
つまり、「農業の工業化」に近い。
また非常に興味深いのは
土を必要としないこと
つまりは「農地」ではなく、「建築の中」に入り込めるということです。
だからこそ、 都市との相性が良い。
地下空間(光という条件付き)。空きテナント。
商業施設。これまで“農業とは無縁”だった場所に、 少しずつ入り込める可能性がある。
個人的には、アクアポニックスは、
農業というより、「都市に混ざり始めたインフラ」に近い気がしています。
実は、日本でも少しずつ始まっている
最近では、 日本でもアクアポニックスの
実証実験・事例が増えています。
サンシャイン水族館で取り組みがなされており
私は水族館によく行くのですが、
他の水族館でも最近は子供への学習施設としての面も重要視され、アクアポニックスをよく見るようになってきました。
(水族館内で、 魚の飼育と野菜栽培を循環させる実証展示が行われています。)
ここで興味深いのは、「農業施設」ではなく、
“都市型施設”で導入されていること。という点です。
💡話は建築の知識になりますが、世界初の都市型水族館(ビル内に作った水族館)は1978年サンシャイン水族館が初となります!🐟️
以降日本の商業設計などでテナント誘致の際には
サンシャイン水族館の集客事例などが
引き合いに出され、特にビルの高層階においては飲食や販売業などよりも水族館を希望するクライアントも近年は増加しております。💡
他にも、カフェ併設型の小規模農園。教育施設での循環型栽培。屋上農園。コミュニティスペース。
少しずつですが、「建築の中に農業を組み込む」ような動きが出始めています。
それを私はこう表現します。
「大きな未来」ではなく、「小さな未来」
じゃあこれから、普及はしていくのか?
ただ、ここで誤解したくないのは、
「アクアポニックスがすぐ世界を変える」
と言いたいわけではありません。
実際、初期コスト。維持管理。収益性。
スケールの難しさ。
課題もかなり多い。
正直、 今すぐ爆発的に普及する
とは思っていません。
でも、 こういう技術って、
最初から世界を変える形では
出てこない気がしています。
例えばある日、
カフェの横で小さく野菜が育っていたり。
マンションの共用部で、 魚と植物が静かに循環していたり。
屋上で、 地域向けの小規模農園が
始まっていたり。そんな風に、
「少しだけ未来が混ざる」形で始まる。
そして最終的には建築空間・建築形態に混ざり合う農業と水族館的な融合がなされた
アクアポニックス型施設という建築形態が
出てくることもあるかもしれないです。
▶未来は、 巨大な変化としてではなく、都市の余白から始まるのかもしれません。
だから個人的には、 アクアポニックスは、
巨大なテクノロジー技術というより、
“小さな未来”という言葉で表現したいです。
10年後。
20年後。
人との暮らしにどう入っていくか、
非常に楽しみです。
■最後に
今後の時代は
水不足。食料問題。都市集中。輸送コスト上昇。
様々な問題が進行するなかでは、
「都市の中で、小さく食べ物を作る」
という考え方は、 少しずつ増えていきます。
また、技術的な面に関して、
「アクアポニックス」には、
“その裏側を支える技術”画多岐に及びます。
水を循環させる設備
センサー
ろ過技術
制御システム
都市インフラ
もしかすると、 「農業そのもの」ではなく、
“水を制御する企業”に新たな付加価値が生まれるかもしれません。
企業・日本独自の強み
この譚は2話構成を予定してます。
次回は、アクアポニックス普及の仕方、
「未来のインフラ投資」として見た時に、
どんな企業が関わってくるのか
その視点で、 深掘りしてみようと思います。

未来の都市は、 超高層ビルより先に、
建物の小さな、小さな水槽から
静かに変わり始めるかもしれません。
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