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【英国文豪、令和を歩く】第43回:Hay fever, oh dear—sneeze attack is here!

京都、寺町通の片隅にある、琥珀色のランプが灯る古風な喫茶店。使い込まれた革の椅子に、華やかなスカーフを巻いた現代的な女性姿のウィリアム・シェイクスピアと、ツイードのジャケットを羽織り、パイプの代わりに珈琲を嗜むアーサー・コナン・ドイルが向かい合っている

ウィリアムシェイクスピア                                                                                                                    

……ああ、ドイル。そんなに険しい顔をして、鼻を真っ赤に鳴らしてどうしたの? まるで、愛する人を失った悲劇の主人公か、あるいは得体の知れない毒を盛られた哀れな犠牲者のようよ。そのハンカチは、もう涙と……いえ、その、雫でぐっしょりではないの

                                                                                                                            コナンドイル

……ああ、ウィル。これは毒薬でもなければ、心痛による涙でもない。現代のこの美しい京都に潜む、目に見えない微小な刺客……『カフン』というやつだよ。私の論理的な思考も、この止まらないくしゃみの前では無力だ。鼻粘膜が異常に敏感に反応して、まるで神経組織が剥き出しになっているような心地だよ。かつて診察した、あの極度に神経質なロシア貴族の息子を思い出すほどにね

カフン……。春の訪れを告げる花の精霊たちが、私たちに悪戯を仕掛けているのかしら。目に見えぬ矢を放ち、人々の瞳を潤ませ、喉を枯らす。かつてのロンドンでは、煤煙が空を覆っていたけれど、この街では目に見えぬ『春の粉』が舞っているのね。ヴェローナの恋人たちも、もしこの花粉症とやらに見舞われていたら、バルコニー越しの愛の囁きも、くしゃみで台無しになっていたに違いないわ

笑いごとではないよ、ウィル。これは立派な『事件』だ。空気中に浮遊する無数の粒子が、個人の免疫という名の防壁を突破し、内部から炎症を引き起こす。私は今、現場に残された足跡を追う探偵のように、どの植物が真犯人(アレルゲン)なのかを特定しようとしているんだが……。杉か、あるいは桧か。この京都の山々に囲まれた地形が、包囲網のように私を追い詰めてくる

あら、あまりに分析しすぎると、春の美しさまで見失ってしまうわよ。確かにその鼻声は、舞台の道化師のようで滑稽だけれど……。でも、見て。あそこで薬を売っている老紳士の店には、この苦しみを和らげる魔法の錠剤があるそうよ。ロミオが求めた死の薬ではなく、生を謳歌するための、眠気を誘う秘薬がね

薬種屋(アポセカリー)か。確かに医学的なアプローチは必要だ。だが、この現代の薬はどれも劇的に効く代わりに、私の明晰な頭脳を霧の中に閉じ込めてしまう。まるで、昨日あったことをすっかり忘れてふらふらと部屋を出ていってしまう患者のように、意識が混濁するのは御免だよ。……ハ、ハ、ハックション! ……失敬、どうやら私の神経組織は、君が思うよりずっと繊細にできているらしい

ふふ、よしよし。私のこのスカーフを貸してあげましょうか? ヴェネツィアの商人が仕入れた高価な絹ではないけれど、あなたのその鋭すぎる嗅覚を、少しの間だけ世俗から守ってくれるはずよ。ドイル、この春の嵐が過ぎ去るまで、私たちはこの古風なカッフェーに籠城して、温かいお茶でも飲みながら、次の物語の構想を練ることにしましょう。目に見えぬ敵に怯える名探偵と、それを笑う劇作家……。これこそ、現代の京都で演じられる最高の喜劇だわ

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