【英国文豪、令和を歩く】第73回:Marijuana talk in the air, some seek calm, some show care.
喫茶店の窓の外、日はすっかり落ちて、通りには家路を急ぐ人々の影が交差している。ドイルは手元の古い薬草図鑑を閉じ、少し真剣な眼差しでウィルの方を向いた

ウィル、君がその『マリファナ』……大麻という植物について触れるとはね。これは医学的にも、あるいは社会の法という観点からも、非常に複雑な足跡(トレース)を残してきた存在だよ。かつてロレンス神父が、朝霧の中で毒ある草と薬力ある花を摘みながら語ったように、万物には二面性がある。この植物もまた、その典型と言えるだろうね

あら、ロレンス神父の籠の中には、確かにそんな不思議な草木が溢れていたわ。嗅げば心地よく五官を慰めるけれど、一度使い方を誤れば、理性を狂わせ、心臓までをも殺してしまう……。この『マリファナ』というのも、人々を夢見心地に誘う魔法の媚薬なのかしら? それとも、魂を抜き取る悪魔の罠?

(珈琲の湯気を見つめながら)
現代では、それは痛みを和らげる救いとしての一面と、精神を霧の中に迷い込ませる危うい一面の両方で語られている。シャーロック・ホームズがかつて、退屈という名の強敵から逃れるために、ある種の薬物に手を染めていたことを君も知っているだろう? 彼は知性を研ぎ澄ますためにそれを用いたが、ワトソン君は常にそれを『肉体と精神への悪業』として厳しく諫めていた。この大麻というものも、一歩間違えれば、人間の持つ『論理の糸』を修復不能なほどに縺れさせてしまう危険があるんだ

『退屈』という強敵……。確かに、人間は時として、現実という厳しい舞台から逃げ出したくなるもの。でも、幻影の中で王様になったところで、目が覚めればそこは冷たい牢獄かもしれない。ロミオが毒薬を仰いだのも、現実の悲しみに耐えかねたゆえの過ちだったわ。ドイル、あなたが医師として診てきた患者たちの中に、こうした『植物の誘惑』に溺れた者はいなかったの?

ああ、いたとも。精神錯乱の発作に捕らわれたロシア人の親子や、何かに怯えて虚脱状態に陥ったブレシントン氏のように、心が不安定な者ほど、こうした外的な刺激に縋りたがる。だが、一時的な安らぎは、往々にして『依存』という名の鎖に変わる。医学がどれほど進歩しても、人間の精神を真に救うのは、薬瓶の中身ではなく、確かな現実と向き合う勇気だと私は思うのだがね

ふふ、流石は名探偵の生みの親ね。でも、この現代では、ある国では許され、ある国では禁じられているというじゃない? その境界線こそが、まるで喜劇と悲劇の分かれ目のようで面白いわ。善いものも用法を誤れば悪徳と化し、悪徳もまた処を得れば威厳を生む……。結局のところ、その草が毒になるか薬になるかは、それを手にする人間の『志(こころざし)』次第ということかしら?

その通りだ、ウィル。幼稚な蕚(うてな)の中に毒も薬力も宿っている。それをどう扱うかは、我々人間に委ねられた永遠の命題だろうね。ただ、私はワトソン君と同じ意見だ。霧の中で見る幻よりも、澄み切った頭脳で目の前の事件……いや、この美味しい珈琲を味わう方が、遥かに価値があると思うよ

ええ、同感だわ。わざわざ怪しい煙に巻かれなくても、あなたの興味深い推理話を聞いているだけで、私の頭の中は銀河を旅するくらいに刺激的だもの。……さあ、毒ある草の話はおしまい。次はもっと、命が芽吹くような明るい話題を摘み取りましょう?
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