見出し画像

「府民の声」から考える大阪・関西万博の課題

毎日新聞(2025年2月28日付)によると、2025年大阪・関西万博(4月13日開幕)を運営する日本国際博覧会協会の石毛博行事務総長は28日の定例記者会見で、自前でパビリオンを建設して参加する47カ国のうち、建物の外観が完成し、協会による「完了検査」を終えたのは6カ国だと明らかにしたとのこと。展示まで終え、使用できる状態になった国はまだないそうです。問題山積みの大阪・関西万博は、様々な視点から探究を始めるきっかけになると思います。


府民の声

大阪府のHPには、寄せられた「府民の声」を公表するページがあります。トップページからではとてもわかりにくいところで公開されていますが、下記のページに意見の送り方や公開されている意見の見方が書かれています。

下記ページの「テーマ」という部分で、「主なテーマ一覧」から「大阪・関西万博に関するもの」を選ぶと、万博に関する意見を一覧で見ることができます。

大阪・関西万博に関するもの

多くの意見が寄せられていますが、その中から2件に注目しました。

1月31日受付 2月28日公表


本日の○○に、2025年大阪・関西万博の招待事業として「学校や学年単位で団体来場を予定する児童・生徒数は58万人」と掲載している記事を見た。
その人数に疑問をもった私は、内訳を知りたいと思い、昼の1時からさまざまな窓口に電話で問合せている。
□□に問い合わせても、頼りないうえ、冷たい対応しかしてくれないので、○○に聞いたところ、大阪府に聞くようにと言われた。
まず万博推進局に電話をしたところ、コールセンターの人から5分ほどかけて、教育庁の番号を教えてもらった。その際、「教育庁でわからなければ、もう一度万博推進局に電話してほしい」との丁寧な対応をされた。
そこで教育庁に連絡をし、職員が対応にでたが、全体数と58万人(小中高の人数)の内訳を聞いたが、教えてもらえなかった。
そこに電話をする前に、私の住んでいる△△市教育委員会に聞いていた小中高の人数を伝え、他の自治体に直接聞いたら人数が把握できるのか聞くと、「そうですね」としか返事をしなかった。
そのため、再度、万博推進局に電話をして、経緯を説明したところ、「記事についての話については、やはり教育庁」と言われた。
県外の子どもについては、福祉部が担当であることを知り、人数には含まれていないことに気が付いたので、万博推進局に電話をしたが、対応した職員は人数の内訳のことは、よくわかっていない様子だった。
また、□□にも問い合わせたが、万博には多くの問題があるためか、『反万博派』と誤解されたようで、冷たい対応をされた。
あとでSNSなどで、□□は当てにならない。万博推進局は担当課同士の溝が大きいことを出そうと思う。
教育庁も福祉部も、「全体を取りまとめている中心の組織は万博推進局」と言う。
万博推進局は、「万博については私たちが窓口です」といいながら、「招待事業については窓口ではない」といって逃げている。
万博事業には、莫大な税金が投入されているのに、全体像を知るために、私個人が莫大な時間を割いて聞かなければわからないなんて、こんなバカなことはない。
全く万博推進局は仕事をしていない。
新型コロナウイルス感染症が蔓延していた時、大阪府には、コロナウイルス感染症に関するすべてを把握している部署がないため、多くの大阪府民死んだ。
それなのに、大阪府はコロナ時の悲惨な状況を起こした教訓も生かすことなく、また同じ過ちを繰り返そうとしている。
万博に関する担当者は、全体像を把握し、一元管理をするべきであり、無責任な態度をとるべきではない。

https://www.pref.osaka.lg.jp/cgi-bin/citizen_voice/detail.php?id=23420&site=f-koe2


1月31日受付 2月28日公開


本日の○○の記事に、「2025年大阪・関西万博に学校や学年単位で団体来場を予定する児童・生徒数は58万人で、前回発表時より10万人減った」と掲載があった。私は「58万人」という数字を見て、そんなに多くないはずだと思ったので、今朝から2度、万博推進局の代表番号に電話をした。1回目に対応した職員は明確な回答をしないうえ、私の質問から逃げているように感じた。万博の会期が2か月後に迫っているのに、万博に関わる大阪府の部署として、万博推進局の対応は府民として情けなく思う。
2回目の電話の際には、「詳細は教育庁へお問合せてほしい」と案内されたが、教育庁の問合せ先を調べるのに5分ぐらい待たされるという失礼な対応をされ、私はとても腹立たしく感じている。
その後、教育庁に電話をして、58万人の市町村別の内訳を問い合わせたところ、「大阪府では正確な数字を把握していない」との事であった。それであれば、どこの部署が正確な数字を把握して、報道機関に情報提供したのかが疑問だ。
これまで様々な人がSNSを利用して万博の事を非難していたが、私もSNSを利用して万博反対の意見を募り、大阪府に抗議したくなった。
これからさらに万博関連の費用は増すと言われており、開催期間中に災害が起こった場合の避難経路などの問題も抱えている。開催しても赤字になるだけなので、今のうちに中止の決定をしてほしいくらいだ。今回の万博は大失敗に終わると思うので、知事は責任をとって辞めるべきだ。

https://www.pref.osaka.lg.jp/cgi-bin/citizen_voice/detail.php?id=23422&site=f-koe2

この2件はとても似ていますが、問い合わせの時間帯などが違っているので別人なのでしょう。2人が同じような対応をされて、同じようにおかしいと感じたので声を送ったのではないでしょうか。声を送ったのはたまたま2人でしたが、このような対応をされた人は他にもいると思います。

どちらも「58万人」に疑問を持ったので問い合わせをしたけれど、万博推進局は教育庁に問い合わせるように言い、教育庁に問い合わせても明確な回答は得られなかったということです。

2人目の方が、「どこの部署が正確な数字を把握して、報道機関に情報提供したのかが疑問だ」と言っていますが、私もそう思います。

そして1人目の方は、「大阪府はコロナ時の悲惨な状況を起こした教訓も生かすことなく、また同じ過ちを繰り返そうとしている」と言っています。

別の記事でも何度か書いていますが、大阪に限らず、日本はコロナ対策について検証をしていません。そのため、失敗を次に活かすこともできないでしょう。

アメリカ下院は、2年かけてコロナ対策を徹底検証しました(下記参照)。なぜ、日本はやらないのでしょうか。これらの「声」は、振り返りや情報共有の大切さについて考えるきっかけにもなると思います。

関西万博は立派な教育プログラムを用意していますが、用意されたプログラムより、このような「府民の声」に目を向けて、疑問に思ったことを自分で調べていく方が「生きていくために必要な力」が身につくと思います。


学校単位での来場を辞退する理由

前述の意見に書かれていた「○○の記事」というのが伏せ字になっていますが、おそらく新聞でしょう。1月30日から31日にかけて、各新聞が「58万人」について報じていました。

府の万博無料招待事業、来場予定の小中高校生は58万人…昨春から10万人減「距離や移動の負担考慮では」
読売新聞(2025/01/31 12:10)

大阪・関西万博に府内の小中高校生らを無料で招待する府の事業を巡り、事業を活用して学校単位で来場予定の児童・生徒数が、昨春の調査から約10万人減り約58万人になったことが、30日、分かった。府教育委員会は「会場までの距離や移動時の子どもの負担などを考慮したのではないか」としている。
 日本国際博覧会協会(万博協会)や府・大阪市などの関係者による会合で明らかになった。

 対象となる児童・生徒は、約1800校の計約88万人。昨年4~5月に府教委が調査したところ、学校単位での来場を希望したのは約1500校の約68万人だった。しかし今月15日時点では、約1400校の約58万人に減少していた。

 交通手段は団体バスや電車などが予定されているが、団体バスの駐車場から会場までは、最短でも約850メートル歩く必要がある。
 この日の会合では、小学校低学年のバスは入場ゲートに近い場所に停車させ、熱中症対策として、会場までの歩道上にミストが出る扇風機を設置する方針が示された。

https://www.yomiuri.co.jp/expo2025/20250131-OYO1T50005/

産経新聞の記事(2025年1月30日付)には、もう少し詳しく書かれています。


万博への子供無料招待、見送り続出 大阪府市と協会、交通手段確保や暑さ対策に懸命
産経新聞 2025/1/30 21:18

4月に開幕する2025年大阪・関西万博を前に、大阪府が会場に府内の子供たちを学校単位で無料招待する事業について、参加を見送る学校や自治体が相次いでいる。学校側が人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の会場に子供たちを引率する難しさや安全性を懸念しているためだ。府市や万博の運営主体、日本国際博覧会協会は交通手段の確保や暑さ対策などを進め、課題の解決に取り組んでいる。

「子供たちが安全で円滑に来場できる環境を整えることを目指し、引き続き準備していきたい」
大阪府市で組織する万博推進局の藤田浩良・機運醸成部長は30日、市内で協会と開催した教育旅行の来場者輸送に関する検討会で、交通事業者らにこう訴えた。
(中略)
検討会では府教育庁が府内各校への意向調査をもとに、学校単位での来場希望者数を報告。昨年5月時点では府内1841校の約88万人のうち1526校の約68万人だったが、今月15日時点では1388校の約58万人まで減少した。主な来場手段は団体バスが約20万人、大阪メトロ中央線が約22万人、現地集合・解散が約13万人を見込み、未定の学校もある。
(以下略)

https://www.sankei.com/article/20250130-2A3YRQSV45L5LB3LVEL6NDWW7I/

「検討会では府教育庁が府内各校への意向調査をもとに、学校単位での来場希望者数を報告」と書かれています。教育庁は検討会で報告しているのに、なぜ問い合わせには答えられなかったのでしょうか。

「教育旅行の来場者輸送に関する検討会」というのは、万博公式サイトで公開されている下記のことだと思います。

第1回

第2回

第3会(1月30日開催)

資料2【「2025年日本国際博覧会児童・生徒招待事業」に関する調整状況】(PDF形式)

公開されている資料に、58万人について交通手段の内訳も書かれています。

https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/4340b14e342084f776a0b11b5d7122bf.pdf

日別来場予定数も公開されています。

https://www.expo2025.or.jp/wp/wp-content/uploads/4340b14e342084f776a0b11b5d7122bf.pdf


産経新聞の記事には、具体的な自治体も書かれています。

府内では昨年5月以降、交野市と熊取町が会場までの移動の難しさなどを理由に市町内の全小中学校で学校単位での来場を見送り、今月29日には吹田市も市内全小中学校計54校での見送りを保護者に通知した。市教育委員会は「児童・生徒の昼食場所や待機場所での熱中症対策、団体行動の動線や点呼・待機場所の確保が不十分」と説明。

新聞社がここまでの情報を持っているのに、万博推進局や教育庁は府民からの問い合わせになぜ答えられなかったのでしょうか。

「大阪府市で組織する万博推進局の藤田浩良・機運醸成部長は30日、市内で協会と開催した教育旅行の来場者輸送に関する検討会で、交通事業者らにこう訴えた」と書かれているので、万博推進局の藤田浩良・機運醸成部長は検討会に出席しているということです。それならば、教育庁が検討会で報告した情報は、万博推進局でも共有されなければなりません。それなのに問い合わせに答えられないなんて、万博推進局の仕事とはいったい何なのでしょうか。

朝日新聞の記事(2025年3月2日付)には、「この会見(1月30日)の同日。府教委は、無料招待した府内の小中高校と支援学校の児童生徒計約88万人(計1841校)のうち、学校単位の来場希望は約58万人(1388校、1月時点)だったとする調査結果を発表」とあり、自治体についてもかなり詳しく書かれています(途中から有料記事)。



会場の安全対策への懸念などを理由に吹田、交野、熊取、島本の府内4市町も同日までに学校単位での参加見送りを表明していた。
 参加が低調なのは、大阪だけではない。兵庫県や京都府など大阪近郊の自治体も学校単位の無料招待事業をするが、滋賀県では招待した小中高生15万8千人(407校)のうち、参加予定は1万5千人(57校)にとどまる。2023年11月の調査では220校が活用を予定または活用を検討するとしたが、そこから7割以上も減った計算で、担当者は「ここまで少なくなったのは驚きだ」と漏らす。
(中略)
奈良県では昨年10月の意向調査で県内の小中高363校中、86校が無料招待事業を利用予定、144校が検討中、51校が利用しないと回答したが、対象となる小中高校生12万7千人全員が行く想定で、1億7千万円を新年度予算案に計上する。今後、参加を希望する学校が増えた場合にも対応できるようにするためだという。
(中略)
市立小中全54校の学校単位での参加を見送った大阪府吹田市の後藤圭二市長は「何とかして行かせてあげたいと思っていた。ただ、真夏の暑さはドライミストでは対応できない」などと先月10日の会見で指摘。「災害時の対応、救護所の状況についても満足できる回答はなく、安全面の確認が出来なかった」と話した。同府豊中市も熱中症のリスクを理由に市立小学校39校(義務教育学校を含む)のうち、32校は低学年の児童は参加しない。
(以下略)

https://www.asahi.com/articles/AST3231YCT32OXIE01CM.html?iref=pc_ss_date_article

記事は3月2日付ですが、1月30日には発表されていた情報です。

さらに、「災害時の対応、救護所の状況についても満足できる回答はなく、安全面の確認が出来なかった」と招待された側が言っているのに、担当者は「ここまで少なくなったのは驚きだ」と言っているなんて呆れてしまいます。

問い合わせに満足に答えられないだけでなく、すべてがこの調子なのだと思います。

「問い合わせしたのに、ほしい回答が得られなかった」という2件の声は、一見たいした問題ではないように思えるかもしれませんが、関連する記事を探して読んでいくだけでも、様々な問題が見えてきます。

また、行政機関への問い合わせでは「たらい回し」はあらゆるところで起きています。原因を分析し、次に活かさなければ何度も同じような問題が起きてしまうでしょう。

産経新聞の記事は、教育旅行を巡る課題と対応について下記のようにまとめています。

https://www.sankei.com/article/20250130-2A3YRQSV45L5LB3LVEL6NDWW7I/


教員が安全な引率のため求めているのが、会場内の動線や待機場所などを確認する下見だ。学校側からは開幕前にも下見ができるよう求める声も上がるが、会場では工事が続くため、協会は開幕1週間前に会場運営を試行するテストラン(4月5、6日)の際や開幕後に受け入れる方針を示した。
万博での教育旅行について大阪府の吉村洋文知事は「世界の最新技術や価値観、文化を学び、社会課題を解決するために各国がどのようなことを考えているのかを肌で感じられる」と教育的な意義を強調。「教員たちが安全に引率できるよう実務的な課題を解決していきたい」としている。

https://www.sankei.com/article/20250130-2A3YRQSV45L5LB3LVEL6NDWW7I/

吉村知事は、「世界の最新技術や価値観、文化を学び、社会課題を解決するために各国がどのようなことを考えているのかを肌で感じられる」と教育的な意義を強調しているとのことですが、様々な問題を解決できていない万博で、そのようなことが感じられるのでしょうか。

「府民の声」には、他にも多くの課題が挙げられています。

チケット購入の複雑さ、メタンガスの問題、赤字になった場合の国民負担、問い合わせのたらい回し、建築業界の限界、脆弱な地盤、多額の警備費、建築現場での過酷な労働、高齢者のキャッシュレス決済などなど、問題が山積みです。

関西万博を学校単位で行く場合も、学校単位では行かない場合も、ぜひ「府民の声」に目を通して、探究プログラムとして活用してほしいです。政治や選挙に関心を持つ、きっかけにもなるかもしれません。

追記:
こちらの記事に府民の方からコメントをいただきましたので、続編を書きました!






この記事が参加している募集