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【中編】予測不能なモンゴル旅行で見つけた、不変の温もり― 火と太陽と動物と

9月の中頃。モンゴルの首都ウランバートルのちょっと西、車で9時間ほどの地域に1週間ほど滞在した。
参加したのはカオスでユニークなツアー。遊牧民の暮らしをなぞることで気付いた気持ちの変化や、忘れられない瞬間を綴る。

▼前編のあらすじ
「旅のアクシデント歓迎」なモンゴルツアーに参加。自由すぎるモンゴルの洗礼を受け、自主性なき自由は不自由だということを思い知る。

中編は、滞在中に多大なる恩恵を受け、常に存在感を放っていた火・太陽・動物について書いていこうと思う。

火は明らか

夜、宿泊するゲルはおそろしく冷える。ゲルには薪ストーブが設置されており、マッチと薪、わずかな着火剤が配給された。自分はキャンプのキャの字も齧っておらず、要領の悪さも手伝い初めのうちはマッチの火をつけることさえままならなかった。マッチを持つ角度が悪くて火がスピード逆流&バター湖の指の上で鎮火。熱ッッッッチィな。理科の授業で習わなかったのか。

序盤に撮った写真。今ならこの薪の置き方はしないかも

皆も薪に火を着けることに慣れているわけではない。ゲルメイトたちと身を寄せ合いながら苦戦する。着火剤を使って小さな火から始めても、なかなか大きめの薪に火が定着しない。小さい火が点いては消え、おろおろする。なんとか火が大きくなって安定し、ほっとするのも束の間、30分〜1時間ごとくらいに焚べ続けないと火が弱くなる。だから、寝る前は汗が出るくらい強めに焚べておく。今なら雪山で火を絶やさないために順番に起きる話や、火が消えてしまってピンチという状況に共感できる。

普通に寝るのだけど、明け方は寒くて目が覚める。居ても立っても居られず、というか寒くてとても寝直せず、寝ぼけたまんま薪ストーブの火を着けに向かう。すでにゲルメイトが起きて薪ストーブと格闘してくれてることもある。電気も点いておらず、懐中電灯で手元を照らし、一緒に試行錯誤しながら火をつける。寝てる間に薪が全部湿気って…とか燃やし始めるための木屑が全滅して…みたいな絶望的な展開のときもあった。着火剤も数が限られているからホイホイ投入するわけにはいかない。

やっと火が着いた頃には目覚めてしまっている。ひと仕事終えたなあ、と暖かさが広がりはじめたゲルを出て、フラフラと日の出前のトイレ棟に向かうときの空気は冷たくておいしかった。

滞在終盤に知ったことだが、すべてのゲル班が朝から薪ストーブを点けているわけではないらしかった。寒すぎて、てっきり火を起こさないと朝は始まらないのかと思っていた。焚き火は癒しなんて言うけれど、第一は温もりを確実に確保できるという安堵だった。そのうち、焚き火の「常に状況が変化するライブ感」の楽しさに目覚め、のめり込むように夢中になった。

焚き火でマシュマロを焼いたりポップコーンを作ったり

自分は得意というわけではないが火を起こす場面が好きで、火がつかない現場に居合わせて手伝わせてもらうことが多かった。面白かったのが、滞在するゲル班ごとに火の着け方がガラパゴス化していたことだ。各々手を動かしながら焚き火を習得していく中で「こうやったら火がついた」の成功体験の積み重ねがあるのだろう。薬の空箱を燃やす、割り箸を折って燃やす、トイレットペーパーでまずは賑やかす、蝋燭で薪が炭化するまで炙る、など。積み方の勝ちパターンなんかもいろいろある。

滞在中ちょっとはうまくなった気でいても、遊牧民や主催の人の手慣れた薪の扱いや火吹きを見ると、その鮮やかさに感動する。

遊牧民の薪ストーブは鍋を同じ規格でセットできるようになっている

薪ストーブの暖かさは即効性があり、逆に火が消えていると急に寒くなる。ちょっと散歩から帰ってきて「あれっ火消えてる?」とすぐ分かるような感じだ。火があると暖かい、明るい。火がないと寒い、暗い。非常にわかりやすい。人類が火を畏れつつも、付き合ってきた歴史が私のDNAにも埋め込まれている。

草原最後の夜は、キャンプファイヤー。
とてつもない火柱。


不滅の太陽

滞在した9月のモンゴルの日の出時間は大体6:30頃。寒くて明け方に起きてしまうため、薪ストーブをつけ直したらゲルの外をほっつき歩いたりしていた。

あたりはシンとしているが、誰かしら同じように歩いている人を見かける。

日の出前のトイレ棟。
電気が点かないから懐中電灯で入る

日の出前でも、5時台から外はかなり明るい。初めての朝、ゲルのドアを開けたときにはもう明るくて、日の出を見ようねと約束をしていたのに肝心の時間を寝過ごしてしまった!と焦るくらいだった。意識的に日が出るのを待ったことがなかったけど、もしかして日本でも日の出前はこれくらい明るいのか?

空が明るくなり始めてから、太陽が地平線から出てくるまでには1時間くらいかかる。コーヒーを淹れる人が居たり、ラジオ体操をやったり。日の出を見に起きてきた人たちがなんとなく集まる。

ゲルから持ち出したイスで茶会

日の出が近づくにつれ、徐々に空と山がピンク色に照らされていく。こんな色合いの山ばっかり描く画家が好きだったことを思い出して、ほんとにこんな色を描いていたのだなと思った。

遠目には遊牧民がすでに馬で走っている。

ついに日の出。
地平線からとてつもなく大きい太陽が顔を出す。

この日はヤギや羊が集まって寝ていた

モンゴルの太陽はあまりにも直接的にこちらを照らす。その光源の強さに、思わず体ごと目を背けた。サングラスサングラス。太陽が出てからの直射日光の熱さ(暑さではなく熱さ)を思えば、さっきの明るさでもまだ日の出な訳ないのが分かる。

太陽は勢いよく昇っていき、顔を上げたくらいの場所に一旦収まった。一気に空気が暖かくなり、世界が動き出した気配。急に鳥たちが鳴き出した気がする。さっきはやけに静かだったんだから。

ゲルの近くで飼われてるヤギや羊たちは太陽が出る前から集まって座っていて、太陽が出ても特に動いたりしなかった。

変わらずマターリしている

太陽が昇ると、つい走り出してしまうような活力が湧いてくる。無意味に周囲を走り回ってしまった。朝だなー。

夜はあんなに寒いのに、太陽が出ている間はジリジリ気温が上がり汗ばむくらいの温度になる。火も太陽も、モンゴルでは即効性と威力をより強く感じるのはなぜなんだろう。地理的な違いだけで片付けられることなんだろうか。

ゲルには天窓が付いており、半分閉じたりして温度や明るさを調整する

また長くなってきた気配がするから、後編に続ける。
後編では乗馬など動物について、とモンゴルに行ってのまとめと感想を書く予定。

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