物語のカケラ② stories 2024-2026
ベッドに入ってから眠るまで
そのくらいの わずかな時間
今日を振り返ったり
明日を思い描いたり
空想に耽ったりする
まぶたの内側に映った物語
そんな小さなカケラです。
以前にまとめた 物語のカケラ① stories 2021-2024 (〜6月まで)の続きです。
2024年7月以降、2026年現在までのわたしのnoteの中から集めました。
もしよろしければご一緒に……
***
『こわいのこわいのとんでいけ』
みちにまよった
つまずいてころんだ
しらないひとがやってきて
ぼくをどこかへ つれていこうとする
ザワザワする
ヒヤヒヤする
ドキドキする
ビクビクする
こわくなったときは
どうすればいいの?
こわいのこわいの とんでいけ
『赤い風船』
何もいらない
ほしいものは
もう特にない
そのかわり
辛さも 痛みも
悲しみも 苦しみも
もういらないからね
結んであった赤い風船がひとつ
するりとほどけて飛んでいく
少しずつ ゆるんでいたんだ
二度と時間は戻せない
もう戻ることはないよ
さあ行こう
子供みたいに泣きじゃくった
あの日のことを思い出してた
ただ 笑っていたいだけなの
最後は 笑ってたいと思うの
見上げた空は 秋を告げてる
……
ほしいものはないけどね
行きたいところがあるの
満天の星が見てみたいの
ほら 星屑っていうやつ
むせるくらいの星空に
一度でいいから紛れてみたい
こわくなってしまうかもしれないけれど
赤い風船はそういって
しずかに空へ飛んでいった
風がこっそりとあとを追った
『空のかなた』
元気ですか
笑ってますか
今、幸せですか
……
遠くのほうで何かが欠けた音がした
どうしたの しょげた顔して
ちっともらしくないじゃない
いつもの笑顔はどこへいったの
雨も上がって晴れてきたよ
外の空気を吸ってごらんよ
とっても気持ちがいいからさ
久しぶりにしゃぼん玉でもしようか
あれもこれもしゃぼん玉に込めて
吹いて飛ばしてみるといいよ
空に届けば思い出になるしね
途中でわれてしまったのなら
それはいらないものなんだよ
さぁ 出かけよう
ほら いつかのあの日みたいに
一緒に空を見上げよう
空がまあるい笑顔にしてくれるから
……
元気でいてね
笑っていてね
ずっと、幸せでいてね
『手をつなぐ』
でこぼこ道がある日きれいになっていた
掠れた横断歩道はくっきりとして
壊れた自転車は直されて
亀裂の入ったピクトグラムはまたちゃんと手をつないだ
「きれいだね」 「きれいだね」
「よかったね」 「よかったね」
「気持ちいいね」 「気持ちいいね」
若葉が風にさらさらと鳴るシグナル
自転車は軽やかに走り抜けて
親子は 楽しそうに手をつないで歩いていった
葉も風も空も声も きれいに澄んだ青だった
『ふしぎなひと』
外へ出ると、店主っぽくない店主は、わたしに無表情で無言の、軽くうなずくような挨拶をした。
「いらっしゃいませ」とも言わなければ、「ありがとうございます」もなかった。
対照的なふたりが並ぶ。 なんかふしぎ。
全然違うけれど、どちらもカラッとして、さらっとしている。そんな心地がした。
馴染むって こういうことだなと思った。
『ぼくのくつした』
ぼくのくつした
かたっぽどこへいったんだろう
ちょっとおでかけしたのかもねとママはいった
さみしくないのかなってぼくがいうと
たまにはひとりもいいものよって
のこったくつしたさみしいねっていうと
まっているのもいいものなのよって
ちゃんとかえってくるのか
ぼくはしんぱいなんだけど
かたっぽのくつしたは
ひきだしのなかでまっている
『口紅が使いきれなくて』
春になると口紅を新調したくなる。
何がそういう気持ちにさせるのだろう。
南風のせいかもしれないし、太陽の光のせいかもしれないし、かわいい花や若葉のせいかもしれない。
『ブルームーンとブルーバード』
見ていますか? 見えていますか?
見ていますよ 、 見えていますよ。
小鳥の言葉を知らない月は小鳥のことを
月の言葉を知らない小鳥は月のことを
ただ静かにじっと見つめて
また会えたことを喜びます
蒼い月と蒼い小鳥はほほえみました
月から ほのかな光がこぼれ
小鳥は ちいさく歌いました
きれいですねと伝えるように
月の光と小鳥の歌が空で出会うと
そこに花が咲きました
***
無事に一日を終える夜、
今日も生きたなって思います。
心と体を休めるそんな時間、
雑音もいやなこともなくして
何か楽しいことを浮かべたら
いい夢が見られるでしょうか。
朝 目が覚めると、
生きてたなって思います。
もし穏やかな休日の朝なら、
もう一度 瞼を閉じます。
さっきの夢を反芻したり
今日の予定を考えたり
また何か空想したりして。
そんなふうに微睡んでいると、
時々 二度寝してしまいます。
ころ…ん……
『カケラ』
ブリキの缶をゆすると
ガチャガチャと重い音がした
いつの間にかこんなに貯まってた
なんにもわかってないんだよ
わたしに黙って捨てようとしてさ
カケラなんか集めて何が楽しいのって
取り返して 飛び出してきちゃった
このカケラは がらくたなんかじゃない
大事にしてきたわたしの宝物なんだから
シーグラス… ほらきれいでしょう
淡くて小さなカケラを太陽にかざしても
その内側の気泡は静かで 少しも揺るがない
このカケラにも 物語があるんだから
このカケラには思い出があるんだから
捨てたりなんかしない
ひとつ ひとつ 取り出して並べていく
そのずっとむこうには あの海がある
どうぞよい一日を、よい一週間を。
