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ローリング・サラリーマン詩篇    chapter 6:  BIKINI MODELS

敢えて言おう。

仕事でグラビア・アイドルの画像を集めることも、時にはあるということを。

敢えて言おう。

その類いのものは、ついつい集め過ぎてしまうものであるということを。

PRのイベントで起用するグラビア・アイドルの資料を作る必要があり、デスクのパソコンで水着写真の収集に勤しむことになった。誰かにお願いしてもよかったのだが、スタッフはみなさん忙しいので、もちろん自分でやることにしたのである。

ふむふむ、ほほう、コホンコホン。

周りの目を少しばかり気にしながら、しかし、カチカチッとクリックもかろやかに写真集めに励んだのである。

なんせこっちは仕事なのだから、悪びれることもない。

「これ仕事なんです、はい。」「あ、いや〜これ仕事で。」通りがかる人が画面を覗くたび、鏡で見ればうすら気持ち悪いだろう言い訳がましい笑みを浮かべていたのである。

いやあプロの女性のプロポーションは、何と申しますかすごいですね。

これは写真を加工してあるのかなあ。

顔とボディのギャップがこれまた魅力なんでしょうなあ。

あら、この人もこんなの撮ってたんですね。

この日デスクで僕が首をひねったり頷いたりしていたのは、どうでもよい感慨のオンパレードだったのである。コーヒーも飲まれ甲斐がなかったに違いない。

こういう楽しい時間には終わりがないものなのだが、さんざんぱら写真を集めて一息つこうかと思っていると、突然パソコンの調子がおかしくなったのである。パワポで文字変換をする度に、くるくると小さな時計を回して、しばし黙考を始めたのだ。

おやおやどうしたCPU。これから肝心の資料をまとめるんだぞ。文字変換するのにこれだけ時間がかかるようでは、資料が仕上がるのは明朝になってしまうではないか。

こりゃたまらんと、僕はITサポート課に電話することにした。会社のITシステムを管理し守るハイテク精鋭部隊だ。

おっとその前に、水着写真をゴミ箱に入れておこう。資料も閉じて、しまっておこう。危ない、危ない。

親切に「係の者がそちらに伺います。」なんて言われるかもしれないではないか。デキる男には抜かりがないのである。

僕はデスクトップに並んだ宝の山をまとめてゴミ箱に移動させ、「ちょ〜っと待っててね。」と念じ、その後相談の電話をかけた。

プルルル「はい、サポート課です。」電話に出たのは、声にも知性の表れている(さすがだ)女性のスタッフだった。

「もしもし、パソコンの調子が急に悪くなったんですけど…。」

「いつからですか?」「いやほんの三十分ほど前からなんです。」

「これこれああはないですか?」「これこれああはなさそうです。」

僕は彼女の素早くきめ細かな問いかけに気持ちよく受け答えをしていた。言葉が論理的で、正確なのだ。仕事が出来る人の特徴である。これは早々に解決の方法を教えてくれるだろう。

「そうですか。それでは、そちらのパソコンに入って診させていただきます。」

えっ、リモートコントロール? そんなことが出来るんですか?

「では、つなぎますね。」

画面を見ると、すでにポインタが勝手に動いているではないか。電話越しの彼女が僕のパソコンを操っている…。

それはそれは嫌な予感がしたのである。

「パワポ開いてみますね。…確かに遅いですね。」

「はい…。」

「処理中の作業もなさそうですね。」

「はい…。」

「ちょっとゴミ箱の中を見させていただきますね。」

「はい?」

それはNO〜!

僕は即座に自分のマウスを握り、必死の抵抗を試みた。彼女の操作でポインタがゴミ箱に近づく。僕の抵抗で震えるポインタがゴミ箱から少し離れる。右へ、左へ、僕のデスクトップで絶体絶命の攻防戦が繰り広げられた。それはほんの数秒だっただろうが、終わりを迎えさせるわけにはいかなかった。

「そちらで操作しないでいただけますか。」

一変、冷たい彼女の声が響く。そりゃそうですよね。万事休す、僕はマウスから手を離した。

されるがままに操られるポインタ。

カチカチッと、放射状に開く箱。

中には、たんまり女性の水着写真。のみ。

「…………。」

その後は、無言で処置されたのである。

ゴミ箱以外にもいろいろなところが開かれたが、僕の気まずさが十分に伝わっていたのか、彼女は何も聞かずに作業を続けた。その優しさが、ただ、つらかった。

「これで問題なくなったはずです。」

「ありがとうございました…。」

僕は、一番肝心なところで、「これ仕事なんです。」の一言が言えなかった。

ゴミ箱の中の小さなアイコンの水着女性たちが、こちらを向いて笑っていた。






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この詩篇はフィクションです。
実在の人物・会社とは 一切関係がありません。

ローリング・サラリーマン詩篇 prologue
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 1: CONVENIENCE STORE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 2: E-MAIL
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 3: 7:00AM
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 4: TRAIN
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 5: GODZILLA
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 6: BIKINI MODELS
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 7: PRESENTATION
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 8: MASSAGE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 9:  STAFF
ローリング・サラリーマン詩篇 poem:   なりたいもの
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 10: TAXI DRIVER
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 11:  NIGHT LIFE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 12: GHOSTS
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 13: NICKNAME
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 14: JAZZ CLUB
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 15: NURSE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 16: LUNCH
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 17: FAREWELL PARTY
ローリング・サラリーマン詩篇 the last chapter: パリで一番素敵な場所は



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