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ミスタードーナツの大行列と、星乃珈琲店のガパオオムライスのこと

ミスタードーナツの大行列を横目に、隣の星乃珈琲店へ滑り込んだ。
ガパオオムライス、辛口の表示は本当だった。
シンプルなケチャップオムライスが好きだと言いながら、なぜか夢中で食べていた68歳の朝の話。


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「ミスタードーナツの大行列と、ガパオオムライスのこと」

イオンに行った。

ミスタードーナツに大行列ができていた。なぜドーナツのために、ああやって列をなしているのかが、おれにはまったくわからない。ドーナツである。穴のあいた、甘い、油で揚げた小麦粉である。それを買うために、人間というものはあれほどの忍耐力を発揮できるものなのだろうか。

おれは列に並ぶというのが昔から苦手なのである。

ディズニーランドに行っても、待っているうちに帰りたくなる。タクシーの運転手をしていた頃も、客待ちの列に長く並んだ覚えがない。あれはおそらく性分というやつで、もう治しようがない種類の性質なのであった。

ミスタードーナツの隣に、星乃珈琲店というのがある。

ここのスタッフの歩き方が、なぜかきれいなのである。背筋がすっと伸びていて、トレーの運び方も、注文を取りに来るときの一礼も、どこか芯が通っている。歩き方がきれいというのは、つまり店の躾が行き届いているということなのであろう。客はそういうものを、案外ちゃんと見ているのである。

席についてメニューを開いたら、ガパオオムライスというのが目に飛び込んできた。

オムライスは大好物である。
本当はシンプルな、あの赤いケチャップがたっぷりかかった、子どものころから知っているケチャップオムライスというやつが一番好きなのだが、まあ、たまには冒険してみてもよいのではないか、と思った。68歳にもなって冒険もないものだが、メニューの中の冒険くらいはまだ許されるはずである。

ガパオというのはタイ語でホーリーバジルというハーブのことらしい。そのハーブと挽き肉を炒めたものを、ご飯にのせる料理である。日本ではガパオライスというあの名前で通っている。

来た。

皿の左半分に、まんまるい卵がのっていた。表面が黄色く光っていて、ふわっとした厚みがある。あれはおそらく中の卵がまだ半熟なのである。右半分にはガパオが盛られていて、赤い唐辛子と緑のバジルが、肉の褐色の中で対角線をなしていた。脇にはフライドポテト、サラダが小さなガラスの器に入っている。

スプーンを入れると、黄色い卵の膜がふわっとほどけて、下のごはんと混ざった。

口に入れた瞬間、まずバジルの香りが鼻に抜けた。次に唐辛子の刺激が舌の奥にやってきて、それを卵の甘さが追いかけてきた。辛口と書いてあったのは本当で、額にうっすらと汗が浮いてきた。

それでも、止まらないのである。

シンプルなケチャップオムライスが好きだと言いながら、こうやって甘辛い東南アジア風のやつを夢中で食べているおれというのは、いったいなんなのだろう。人間の好みというのは、思っているほど一貫していないのかもしれない。

食後の血糖値のことは、食べてから考えることにした。

ミスタードーナツの行列はまだ続いていたが、おれの一皿はもう終わってしまった。それでもまあ、悪くない朝なのであった。

#おいしいお店

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