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【健診の読み方】尿蛋白±の9割は慌てなくていい。でも、放置しない方がいい1つの理由

こんにちは、内科の医師をしているくまのです。

診察室でみなさんの健診結果を一緒に眺めていると、**「人間の身体って、本当にぜんぶ繋がっているんだなぁ」**といつも実感します。

本格的な病気になる前に、身体の小さなサインに気づいてあげること。それこそが、いちばん優しくて身近な自分へのケアだと思うんです。

だけど、いつもの診察室では時間が足りないから。数字の裏側にある「身体の物語」を、ここで少しずつ言葉に紡いでいます。

私がどんな人間なのかは、こちらにちょこんとまとめました。


前置きが長くなりましたが、今日は「尿蛋白±」について、健診結果の読み方から一緒に考えてみます。

健診結果を見ていると、たまにありますよね。

尿蛋白 ±

これ、なんとも言えない記号です。

「+」なら、あ、何か引っかかったんだなと思う。
「−」なら、よかった、異常なしだなと思う。

でも「±」って、どっちなんでしょう。

プラスなのか、マイナスなのか。
心配した方がいいのか、忘れていいのか。
再検査に行くほどなのか、来年まで放っておいていいのか。

私も同じです。

健診結果って、ただでさえ数字と記号が多いのに、その中に「±」なんて曖昧なものが混ざっていると、こちらの気持ちまで曖昧になります。

しかも尿蛋白って、血圧や血糖、コレステロールに比べると、少し地味です。

「尿蛋白が±ですね」と言われても、体調は別に悪くない。
腰が痛いわけでもない。
尿の色が明らかに変なわけでもない。
むくみもない。

だから、なんとなく健診結果の紙を折りたたんで、封筒に戻す。

「まあ、±だし」

そう思いますよね。

今日の記事で最初にお伝えしたいのは、ここです。

尿蛋白±の多くは、今すぐ慌てるものではありません。

でも同時に、

“なかったこと”にしていいサインでもありません。

この2つは、どちらも大事です。

怖がりすぎなくていい。
でも、見なかったことにもしない。

尿蛋白±は、病名ではありません。
腎臓から届いた、小さな付箋みたいなものです。

「ちょっと、ここだけもう一回見ておいてね」

そんな感じの、控えめなメモ。

今日はその小さなメモを、どう読めばいいのかを一緒に覗き込んでみます。



尿蛋白±は“病気”ではなく、“確認してほしいサイン”かもしれない

診察室で健診結果を一緒に見ていると、患者さんが小さな声で聞いてくださることがあります。

「先生、この尿蛋白±って、悪いんですか?」

この質問、すごく自然だと思います。

健診結果には、A判定、B判定、C判定、要再検査、要精密検査、いろいろな言葉が並んでいます。
その中で「±」は、なんだか中途半端です。

はっきり怒られているわけではないけれど、完全に褒められているわけでもない。

通知表でいうと、先生が赤ペンで小さく「あとで確認」と書いたような感じでしょうか。

ここで大切なのは、尿蛋白±を見た瞬間に、

「腎臓が悪いんだ」
「将来透析になるのかな」

と一気に飛ばないことです。

それは少し遠くまで走りすぎです。

尿蛋白±は、それだけで病気を決めるものではありません。
その日の体調や、採尿の条件で一時的に出ることもあります。

たとえば、前日に激しい運動をした。
少し脱水気味だった。
発熱していた。
月経の影響があった。
採尿のタイミングや条件が少し影響した。

こういうことで、尿蛋白がうっすら出ることはあります。

だから、尿蛋白±を見て、すぐに深刻な病気だと決めつける必要はありません。

でも。

ここで「じゃあ完全に無視でいいですね」となると、少しもったいないのです。

なぜなら、腎臓はとても静かな臓器だからです。

腎臓は、少し疲れていても、あまり文句を言いません。
痛みで知らせてくれることも少ないですし、「今日ちょっとろ過しんどいです」と話しかけてくれるわけでもありません。

身体の中で黙々と働いている、かなりまじめな部署です。

血液をろ過して、いらないものを尿に出して、身体の水分や塩分のバランスを整えて、血圧にも関わって、貧血や骨の健康にも関わる。

かなり多忙です。

でも、忙しいわりに声が小さい。

だからこそ、健診の尿検査に出る小さな変化には、少し意味があります。

尿蛋白±は、腎臓が大声で叫んでいる状態ではありません。
でも、机の端にそっと付箋を貼っているくらいのサインかもしれない。

その付箋を見つけたときに、

「はいはい、また今度ね」

と剥がして捨てるのではなく、

「何のメモだろう」

と一度だけ立ち止まる。

それくらいの距離感が、ちょうどいいと思います。

健診結果は、ひとつの数字だけで判断するよりも、血圧、血糖、脂質、腎臓、肝臓などを並べて読むと、身体の流れが見えやすくなります。

今日はその中でも、見落とされやすい「尿蛋白±」という小さなサインに絞って見ていきます。

【画像①挿入:尿蛋白±は腎臓からの“小さな付箋”】


「±だから大丈夫」と思いやすい。でも腎臓は、もともと静かな臓器です

「±だから大丈夫」

そう思いたくなる気持ちは、とてもよくわかります。

だって、完全な「+」ではないですし、健診結果の紙にも大きく赤字で書かれていないことがあります。
医師から強く言われたわけでもない。
自覚症状もない。

そうなると、生活の中ではあっという間に優先順位が下がります。

仕事もある。
家事もある。
子どもの予定もある。
親のこともある。
自分の病院受診なんて、正直いちばん後回し。

いや、本当にそうだと思います。

「尿蛋白±で受診してください」と言われても、元気に働けている人ほど、なかなか動けません。

ただ、ここでひとつだけ知っておいてほしいことがあります。

腎臓の変化は、かなり進むまで気づきにくいことがあります。

これは、腎臓が我慢強いからです。

たとえば会社で、ものすごく仕事ができる人がいたとします。
周りが少し休んでも、黙ってカバーしてくれる。
多少トラブルがあっても、表情に出さずに処理してくれる。
誰かがミスしても、気づかないうちに直してくれる。

ありがたいですよね。

でも、その人が限界に近づいていることに、周りが気づかないことがあります。

「いつも通り働いているから大丈夫」と思っていたら、ある日、限界を迎えてポキッと折れてしまう。

腎臓にも、少し似たところがあります。

かなり頑張れる臓器だからこそ、限界に近づくまで大きなSOSを出してくれないことがある。
だからこそ、この「±」という小さな付箋が、意外と貴重なのです。

もちろん、1回の±だけで大きな病気と決める必要はありません。
でも、「腎臓は症状がないから安心」と考えてしまうと、小さな変化を拾いにくくなります。

ここが、今回いちばん伝えたいところです。

尿蛋白±は、診断名ではありません。
でも、確認してほしいサインです。

もう少し言うと、

尿蛋白±は、“大変です”という警報ではなく、“ここだけもう一度見てね”という付箋です。

警報なら、すぐ走る必要があります。
でも付箋なら、深呼吸してから見ればいい。

この違いが大事です。

怖がらせたいわけではありません。
むしろ、怖がりすぎなくていいように、見方を持っておきたいのです。


尿蛋白±を見たら、まず一緒に見たい3つの数字

尿蛋白±を見つけたとき、次にどうすればいいのか。

ここで大事なのは、尿蛋白だけをじっと見つめすぎないことです。

健診結果って、ついひとつの異常値だけに目が行きます。

LDLが高い。
HbA1cが高い。
血圧が高い。
尿蛋白が±。

でも身体の中では、それぞれが別々に存在しているわけではありません。

腎臓も、血圧も、血糖も、血管も、かなり密に連絡を取り合っています。

なので尿蛋白±を見たときは、まず一緒に3つだけ見てみてください。

1つ目は、eGFR、またはクレアチニンです。

eGFRは、ざっくり言うと「腎臓の働き具合」を見る数字です。

クレアチニンは、筋肉から出る老廃物のようなもので、腎臓でうまく処理できないと血液中にたまりやすくなります。
そのクレアチニンなどをもとに、「腎臓がどれくらい働けているか」を計算したものがeGFRです。

たとえるなら、尿蛋白は「フィルターから少し漏れていないか」を見るサイン。
eGFRは「そのフィルター全体がどれくらい働けているか」を見るサインです。

キッチンの浄水器を想像すると、少しわかりやすいかもしれません。

水の出る勢いはまだ保たれている。
でも、フィルターの目が少し荒れてきて、通してはいけないものが少し混じり始めている。

このとき、水の勢いだけを見ても、フィルターの状態はわかりません。
逆に、漏れだけを見ても、全体の働きはわかりません。

だから、尿蛋白とeGFRはセットで見たいのです。

片方は「漏れ」、もう片方は「働き」。
この2つを並べると、腎臓の状態が少し立体的に見えてきます。

2つ目は、血圧です。

血圧は腎臓にとって、とても大きな要素です。

血圧が高い状態が続くと、腎臓の細かい血管に圧がかかります。
腎臓は細かい血管がぎゅっと集まった臓器なので、血圧の影響を受けやすいのです。

水道管に強い圧がかかり続けると、少しずつ負担がかかりますよね。
腎臓も同じで、血圧の高さはじわじわ効いてきます。

そして逆に、腎臓の働きが落ちることで血圧が上がりやすくなることもあります。

血圧が腎臓を傷めることもあるし、腎臓の変化が血圧に出ることもある。

つまり、腎臓と血圧は一方通行ではなく、かなり近い関係です。

尿蛋白±を見たときに、血圧も高めだったら、少し丁寧に見たい。
特に、健診の血圧だけでなく、家庭血圧がどうかも大切です。

3つ目は、血糖、またはHbA1cです。

糖尿病や血糖の高い状態は、腎臓に負担をかける代表的な要因のひとつです。

ただ、ここも少し注意が必要です。

「糖尿病と診断されていないから関係ない」とは限りません。

血糖が少し高め。
HbA1cが境界域。
腹囲や中性脂肪もじわじわ増えている。
血圧も少し高め。

こういう組み合わせの中で、腎臓に負担がかかり始めることがあります。

ここでまた、身体は全部つながっている、という話に戻ってきます。

尿蛋白±だけを見ると、小さな点です。
でも、eGFR、血圧、HbA1cと並べると、点が線になることがあります。

「これは一時的な±かもしれない」
「でも、血圧も高いし、eGFRも少し下がってきている」
「血糖も境界域だから、腎臓を守る視点で一度見ておいた方がよさそう」

こんなふうに、見え方が変わってきます。

健診結果は、1つの数字の善悪判定ではなく、身体の状況を立体的に見るための地図なのだと思います。


1回だけの±より、“去年も今年も”の方が大事なことがある

尿蛋白±について、もうひとつ大事な見方があります。

それは、1回だけで判断しすぎないということです。

健診結果の1枚は、写真みたいなものです。

その日の、その瞬間の身体を切り取ったもの。

でも、身体は毎日少しずつ変化しています。
水分の取り方、睡眠、運動、発熱、ストレス、食事、採尿のタイミング。
いろいろなものが、その日の結果に影響します。

だから、1回の尿蛋白±だけで「腎臓が悪い」と決めるのは早いです。

一方で、1回の尿蛋白±を「たまたま」で終わらせるのも、少し早いことがあります。

ここで見たいのが、去年と今年、できれば3年分です。

去年は尿蛋白−。
今年は±。

これだけなら、一時的な変化かもしれません。

でも、

一昨年が±。
去年も±。
今年も±。

さらにeGFRが少しずつ下がっている。
血圧も少しずつ上がっている。
HbA1cも境界域に近づいている。

こうなると、意味が変わってきます。

1枚の写真ではわからなかったものが、数年分のアルバムにすると見えてくる。

これは健診結果全体に言えることです。

1年分だけ見れば、ただの小さな変化。
でも3年分並べると、身体がどちらに向かって歩いているのかが見えることがあります。

尿蛋白±も同じです。

その1回だけなら、慌てる必要はない。
でも、繰り返すなら、少し丁寧に見る。

これは、怖がるためではありません。

むしろ、腎臓がまだ静かなうちに気づくためです。

腎臓は「痛いです」と言ってくれないことが多い。
だからこそ、紙の上に残った小さな記号を、時間の流れの中で読んでみる。

健診結果を3年分並べると、身体の声が少し聞き取りやすくなります。

1年分だけでは点に見えていたものが、数年分で線になる。
尿蛋白±も、その線の中で見たときに意味が変わることがあります。


放置しない方がいい“1つの理由”は、腎臓が悪くなる前に守れるものがあるから

では、なぜ尿蛋白±を放置しない方がいいのか。

ここで、怖い話をするつもりはありません。

「放っておくと大変なことになりますよ」と脅す記事にはしたくないのです。

そうではなくて、理由はもっと前向きです。

早めに気づけば、守れるものがあるからです。

腎臓の変化は、かなり進むまで症状が出にくいことがあります。
でも、早い段階で気づければ、できることがあります。

血圧を整える。
血糖を見直す。
塩分を少し意識する。
体重や内臓脂肪を整える。
脱水や薬剤の影響を確認する。
必要があれば、尿検査をもう一度行う。
尿蛋白が続くなら、尿蛋白の量や尿中アルブミンを詳しく見る。
eGFRやクレアチニンの変化を追う。

こうしたことは、どれも派手ではありません。

でも、腎臓を守る医療は、派手な一発逆転より、地味な積み重ねでできていることが多いです。

小さな火種のうちに気づく。
風が強くなる前に、周りを整える。
燃え広がってから慌てるのではなく、まだ煙の段階で気づく。

尿蛋白±は、その煙のようなものかもしれません。

もちろん、すべての尿蛋白±が病気につながるわけではありません。
むしろ多くは、再検査で消えたり、一時的なものだったりします。

だから、9割は慌てなくていい。

でも、放置しない方がいい。

この言い方が、いちばん近いと思います。

「慌てない」と「放置する」は、似ているようで違います。

慌てない、というのは、落ち着いて見ること。
放置する、というのは、見なかったことにすること。

尿蛋白±に必要なのは、前者です。

落ち着いて見る。
他の数字と並べる。
経年変化を見る。
必要なら再検査する。
不安なら健診結果を持って、内科で相談する。

それだけで、ずいぶん違います。

【画像②:尿蛋白±を見つけた日の3分チェックマップ】

最後に:健診結果は、“異常探し”ではなく“身体との会話”として読む

健診結果を見ると、どうしても「悪いところ探し」になりやすいです。

AかBか。
正常か異常か。
再検査か、放置でいいか。

もちろん、それも大切です。

でも、健診結果の本当の価値は、そこだけではないと思っています。

健診結果は、身体から届いた手紙みたいなものです。

血圧も、血糖も、脂質も、eGFRも、尿蛋白も。
それぞれ別々の数字に見えるけれど、身体の中ではつながっています。

尿蛋白±という小さな記号も、その手紙の端に書かれた短いメモかもしれません。

「今すぐ大騒ぎしなくていいよ」
「でも、完全に忘れないでね」
「来年まで封筒の中に眠らせる前に、少しだけ見ておいてね」

そんな声です。

数値は、あなたを責めるためにあるものではありません。

体重が増えたことも。
血圧が高かったことも。
尿蛋白が±だったことも。
それは人格の評価ではなく、今の身体の状態を教えてくれる情報です。

だから、健診結果を見て落ち込みすぎなくていい。

でも、身体が小さく教えてくれたことを、なかったことにしなくてもいい。

尿蛋白±の多くは、慌てなくて大丈夫です。
でも、腎臓はもともと静かな臓器です。

だからこそ、eGFR、血圧、血糖と一緒に見る。
1回だけでなく、去年や一昨年とも比べてみる。
再検査の指示があれば受ける。
続くようなら相談する。

それは、大げさなことではありません。

自分の身体に向けて、

「ちゃんと見てるよ」

と返事をするようなものです。

健診結果の数字は、ひとつずつ見ると少し冷たく見えます。
でも、並べてみると、身体が出している小さなサインに見えてくることがあります。


☆今日に一言


健診結果の読み方を、ほかの記事でも少しずつまとめています。
気になるところから、ゆっくり読んでみてください。

▶︎ [健診結果の読み方まとめはこちら]

▶︎ [eGFRの読み方はこちら]
▶︎ [最近むくみやすいが危険信号の話]
▶︎ [検診結果を3年分並べる話]

小さな「±」は、腎臓から届いた、まだ間に合ううちのメモかもしれません。

そのメモを、怖がりすぎず、でもそっと捨てずに。
次の健診までの1年を、少しだけ身体に優しく使っていけたらいいなと思います。


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