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Cory Wongバンドインタビュー’26-① // Cory Wong & Petar Janjic

KINZTOのDr.ファンクシッテルーだ。今回は「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」マガジンの、73回目の連載となる。

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2025年は、自身のバンドのツアーで来日したCory Wongに、筆者とヨウヘイさんでインタビューを行った。(ヨウヘイさんは日本でのCory Wong、Vulfpeckの通訳兼マネージャー)


そして2026年はサンフランシスコのWarfield Theatreに出演したCory Wongバンドに、ヨウヘイさんが現地でインタビューを敢行!

今回の質問作成は筆者とヨウヘイさんの二人で行った。

前編となるこの記事ではCory WongとPetar Janjic、
次の後編ではYohannes Tona、Kevin Gastonguayのインタビューを掲載。

2026年も新譜『Lost in the Wonder』を引っ提げて世界中をツアーする彼らによる、今現在の熱いメッセージ、さらにCoryといま世界中で大人気の「あのギタリスト」との関わりなど、興味深い話が盛りだくさんだ。

特にPetar、Yohannes、Kevinの3名については、日本語で掲載されるインタビューは初となる。彼らのバックグラウンドを知ることで、より次の来日を楽しむことができるだろう。是非最後までお読みいただきたい!




Cory Wong

――(ヨウヘイさん)それでは始めましょう。

Cory:OK。元気かい、ドクター?(笑) 今日はよろしくね。


――ニューアルバム『Lost in the Wonder』では沢山のヴォーカリストを起用していますね。これによって、あなたのギタリストやプロデューサーという立場、役割などに変化はありましたか?

Cory:そうだね。今回のアルバムでは、アーティストとしての自分の別の側面や、ミュージシャンとしての新しい一面を見せたいと思ったんだ。

それは主にプロダクションに表れている。僕はまずアーティストであり、同時にプロデューサーでもある。このアルバムにおけるプロデューサーの役割は、アーティストのビジョンや芸術性、その全体的な豊かさを現実の形にすること。だからこの2つの役割は、あえて分けて考えているんだ。

プロデューサーの仕事はクリエイティブで芸術的だけど、それと同時に「どうすればアーティストが最大限に輝けるか」という答えを理解している必要がある。そしてプロデューサーとしての僕は、アーティストとしての自分がギタリストであることも分かっている。だからギターは、本来際立つべき存在なんだ。

ただ、このアルバムでは他にも考えるべきことがたくさんあった。もちろんギターは依然として自分の表現の核ではあるけれど、作曲やプロデュースにおいては、作曲家としての自分、アレンジャーとしての自分、バンドリーダーとしての自分、プロデューサーとしての自分、そしてミキシングエンジニアとしての自分——そうしたさまざまな側面をしっかり提示したかったんだ。

その中でギターは、それらすべてをつなぐ役割を担っている、そんなイメージだね。


――参加しているヴォーカリストが幅広いという印象を受けましたが、曲を先に作ってから誰に歌ってもらうか決めていったのでしょうか?

Cory:コラボはいつも、誰か一緒にやりたい人と繋がるところから始まるんだ。そして「何か一緒にやろうよ」って言う段階を越えて、「今アルバムを作ってるんだけど、コラボしない?」っていう段階に進むと、その時点で、リモートでやるのか、対面でやるのかを決める。

そしてどっちの場合でもその時点で、僕が作ったデモを3つくらい送るんだ。僕は常に何十曲も作っているフォルダがあるから、その中から「この3つはこの人に合いそうだな」っていうのを選ぶ。デモは16小節だけしかないこともあるし、ほぼ完成していてヴォーカルだけ必要な場合もあるし、送るために作り直すこともある。

それでデモを送って聴いてもらったら、その中から1つ選んで、それを元に作業を始める。場合によっては「これいいね、一緒にスタジオでやろうか」ってなるから、実際に会ってスタジオで雑談したり、ちょっとジャムったりしながら進めていく。

Benny Singsとの時は、彼がいくつかデモを選んでスタジオで一緒に作り始めたんだけど、途中で「一から作った方がいいんじゃない?」ってなって、そこから作り直した。それが「Lost In The Wonder」だ。

でも、事前にデモがあると、もしその場で何も生まれなかったとしても、何か土台になるものがあるからいいんだよね。

Stephen Dayと一緒にやった「Stay With Me」「Tongue Tied」については、まずデモを送って、それから対面でやり取りしながら作った。彼はたくさんのアイデアを持っていて、一緒にメロディや歌詞を調整していった。こんな風に、曲によってそれぞれプロセスは違うんだよ。


――ちなみにドクターのお気に入りの曲は「Lisa Never Wanted to Be Famous」だとのことです。この曲のバックストーリーも教えていただけますか?

Cory:嬉しいね。あの曲にはすごく面白いストーリーがあるんだ。

数年前にVulfpeckがヨーロッパツアーをしていて、僕たちはパリに行った。それである日、何人かでルーヴル美術館に行ったんだ。僕は色んな街の美術館に行くのが好きで、そこに行ってモナ・リザを見た時に、すごく強烈な体験をした。全く予想していなかったんだけど、その部屋で本当に心を打たれたんだ。

僕は部屋の端の方にいて、モナ・リザは部屋の中央の壁に飾られていた。そして周りを見渡すと、ありとあらゆる大陸から来た人たちがそこにいたんだ。いろんな言語が飛び交っていて、一つの作品を見るためにこれだけの人が集まっている――それがすごく美しいと思った。世界中の人々が見に来る芸術作品があって、それが人々をひとつにしている。

そして僕の背後には、モナ・リザに向かって飾られている大きな絵があって、それはキリストと、彼の周りの人々を描いたものだった。全体の位置関係としては、キリストがモナ・リザの方を見下ろしているような配置になっている。つまりこの部屋の中では、世界中の人々がモナ・リザを見ていて、そしてその上からキリストがみんなを見ているような感じだったんだ。世界中の人が、自分たち人間が作った美しい芸術作品を見に来ている。でもその上から、神がその人々を見ている。

その瞬間に気づいたんだ。モナ・リザも美しいけど、それ以上に美しいのは世界中の人々が一つの場所に集まっていることだって。それは本当に強烈な体験だった。そのあと飛行機に乗って次のライブに向かう時、隣にTheo Katzmanが座っていたんで、この話をした。そしたら彼も「俺も行ったよ、すごかったよな」って言ってきた。

僕たちは「彼女って、世界で一番有名な女性みたいなものだよな」「でも、本人はそれを望んでなかったんじゃないか?」という話をして、そこから「Lisa never wanted to be famous」っていうキーワードが生まれた。僕はそこで「これは曲になるな」って思ったんだ。

それで曲のコンセプトを彼に話したら、数ヶ月後に彼が弾き語りのボイスメモを送ってきた。とりあえず曲を書いて歌ってみた、っていう感じのやつをね。僕はそれから何年も、月に一回くらいDropboxを開いてはそのボイスメモを聴いていたんだ。それが本当に美しい録音だったんだよ。

それで1年半くらい前に「これ録音しよう、すごい曲だから」って説得したんだけど、彼はあまり乗り気じゃなかった。でも今回のアルバムを作ってる時に「じゃあこうしよう。あのボイスメモを使ってヴォーカルとギターを分離して、それを元にトラックを作るよ」って言って、アレンジも少し変えて、ちゃんとしたデモを作った。そのデモは最終的な音源とほぼ同じくらい完成度の高いものだった。

それをTheoに送って「これをレコーディングしよう、この曲は世に出るべきだ」って言った。でも彼はまだ少し迷っていたから「じゃあ君のアルバムでやろうよ」って言ったら、「いや、君のアルバムでやろう、やりたい」って言ってくれて、一緒にスタジオでレコーディングした。

この曲は、本当にやってよかったと思ってる。僕がこれまで録音した中でも一番好きな曲の一つだし、本当に美しい曲だと思うね。Theoは素晴らしいソングライターだし、今回の曲のコンセプトも大好きだし、何年もかけて出来上がった、とても楽しいプロジェクトだったよ。この曲の制作風景については、YouTubeで動画も公開したんだ。


――いい話ですね。では、現在あなたとバンドが取り組んでいる新しいことや、挑戦していることは何でしょう?

Cory:そうだね。今僕たちはアメリカや世界中をツアーで回っているんだけど、正直に言ってしまうとルーティンのように、簡単に同じことを繰り返すことはできてしまう。

でも課題としては、どうやってアーティストとして、バンドとして成長し続けるか。またどうやって音楽やアートの探求を広げていくか、そしてどうやって観客にも興味を持ち続けてもらうか、だと思っている。

アメリカを何度も回っていると、「君のライブ見たことあるよ」っていう人もいるし、「今回は行かなくてもいいかな」って思う人もいるだろう。だからどうすれば自分自身もワクワクできて、観客もまた観に行きたいと思えるライブにできるか。それを考えているんだ。

ただの仕事としてツアーをやるには大変すぎるしね。正直に言えば、もっと簡単に生計を立てる方法は他にもあるだろう。でもツアーは僕の人生であり、使命であり、自分がやるべきことなんだ。だから自分自身が新鮮な気持ちを持ち続けたいし、観客にもワクワクしてほしい。ミュージシャンとして、アーティストとして成長し続けること、そしてバンド全体として、自分たちの楽器の新しい側面や、それがバンドの中でどう機能するかを探求し続けることが大事なんだ。


――ではその挑戦という意味で、今のツアーはどうですか?

Cory:いい感じだね。新しいアレンジもたくさんあるし、アルバムからの新曲もやってる。それにDevon Gilfillian、Stephen Day、Antwaun Stanleyというゲストシンガーもいる。彼らの曲も新しいアレンジでやったり、僕の曲を彼らに歌ってもらったりしていて、それがすごく楽しい。常に成長し続けている感じがあるんだ。

それにホーンセクションとリズムセクションでかなり演奏が難しい部分もあるし、僕も色々と覚えることも多い。ギターの演奏面では自分のスタイルに合ってるから簡単に感じるけど、バンドリーダーとして、アレンジャーとして、そしてプロデューサーとして、ショー全体を構築するとなると大変なんだ。でもすごく楽しいし、いい挑戦だよ。


――少し話題を変えて、あなたたちはよく「耳が楽器だ」と言いますよね。これについて詳しく話していただけませんか?

Cory:その「耳が楽器だ」っていうのは、Nate Smithの言葉だね。彼がよく言っていることで、まさにその通りだと思う。(筆者注:こちらの動画でもNateはその発言をしている👇)

その話、つまり楽器としての役割を果たせるように耳を鍛えるっていうのは、大部分が引き出しの蓄積と、センスが関わっている。

多くの人は曲を書く時、ポップスのラジオで流れているような、3コードや4コードの曲を参考にしていると思う。その進行が彼らの耳に入っていて、それを元に作曲する。でも他のハーモニーやメロディを学んでいないと、それ以上のことはできない。「耳が楽器」だというのは、たくさんの引き出しを持つことなんだ。

例えば90年代のオルタナを聴いていれば、シンプルなパワーコードとキャッチーなメロディの感覚が分かる。でもSteely Danを聴けば、ポップだけど複雑なハーモニーや、少し難解な歌詞の世界が身に付くよね。伝統的なジャズを聴けば、循環するコード進行や、メロディとハーモニーを即興の出発点として使う感覚が身に付く。

だから持つべき引き出しは、本当に多岐にわたる。ハーモニー、メロディ、グルーヴ、エネルギー、曲の構成、それぞれが別の要素なんだ。ジャズスタンダードではテーマ→ソロ→テーマという構成があるし、ポップスではイントロ→ヴァース→コーラス→ブリッジ→コーラス……みたいな構成がある。でもSteely Danは、それとは違う独特な長い構成を使う。

そういう色々な物事を学んで引き出しを増やすことが、自分の判断とセンスに影響を与える。だから「耳が楽器」というのは、ただ聴くこと以上の話で、それは今起こっていることを意識することなんだ。自分がチューニングが合っているかどうかを聴き取れるか、誰が間違えた音を出したか分かるか、誰がタイミングを間違えたか分かるか……それに気づくことがすごく大事なんだ。


――では耳を鍛えるために、誰にでもできるシンプルなことは何でしょう?

Cory:やっぱり、聴くことだと思う。一番簡単なのは、自分があまり聴き慣れていないジャンルを5つ選んで、それぞれのトップ5曲を聴くことかな。そしてその中で使われているハーモニーやコード進行を分析する。グルーヴやフィーリング、エネルギーを分析する。メロディや曲の構成を分析する。それだけでかなりの情報が得られるだろう。

例えばSteely Danのトップ5曲を研究すれば、Green Dayのトップ5曲を研究するのとは全然違う情報が得られる。でもどちらも同じくらい価値がある。Miles Davis、Led Zeppelin、The Beatles、どれも違う情報をくれる。それによって新しい引き出しが増えるんだ。

例えばTom Pettyのプレイにも、みんなが参考にしているものがたくさんある。だからもし「Tom Pettyっぽく弾いて」って言われたら、その場でそれが何を意味するのか理解できないといけない。

僕はJohn Bellionと一緒に弾いた時に「Eaglesっぽく弾いてほしい」って言われた。だから僕は「Eaglesって、Hotel Californiaのギターソロみたいなプレイかな?」って思ったんだけど、実際に彼が求めていたのは大きくストロークするギターだった。アコギをジャーン! と鳴らすサウンドだったんだ。

でも実は、その時本当に彼の頭の中で鳴っていたのは、Bostonの曲だったんだ(笑)! Eaglesですらなかった。

でもある曲でBostonがやっていたのが、すごくEaglesっぽく聴こえる演奏だった。だからそこで「ああ、この人は間違ってるわけじゃないんだ」って分かった。彼は自分が何を聴いて話しているのか分かっているし、Eaglesがそういうことをやるっていうのも分かっている。ただ彼が具体的に頭に思い浮かべていた曲は「Eaglesの系統にあるものだった」ってだけなんだ。

だから結局のところ、他のアーティストが何を求めているのかを解釈する力を身につけないといけないんだ。そしていろんな引き出しをたくさん持っていることがそれに繋がっていく。特にセッションミュージシャンにとっては、それは本当に重要なことなんだ。


――最近はどんな音楽を聴いていますか?

Cory:この質問はもしかしたら1年前も同じように答えてるかもしれないし、その時とまったく同じ答えかもしれないな。というのも、実はこの数年間ずっとやっていることがあって。ここでそれを見せられるくらいには、自分の研究の深さっていうのがあると思う。

僕はここ数年はずっと、Henry Manciniの曲を研究している。ここにあるのは彼の曲が載っている簡単なピアノ譜の本なんだけど、ハーモニーやメロディの使い方や、アレンジが本当に素晴らしいんだ。

彼は映画音楽で有名だけど、ジャズスタンダードになった曲もたくさん書いていて、ポップな感覚もある。とても親しみやすくて美しい音楽だ。それを楽しみながら研究しているんだよ。


それから最近は、高中正義もよく聴いてるね。僕らは最近友達になったんだ。彼から去年、すごく楽しいクリスマスメッセージをもらって、そこから連絡を取り合うようになった。彼の音楽は本当に楽しいし、たくさんの作品があるから探して聴くのが面白い。それに彼自身もすごくユーモアがあって楽しい人なんだ。

僕のマネージャーも最初は「この人誰?」って言ってたけど、彼に見せてみたら「なんだか、日本版の年上の君みたいだな!」って言ってた(笑)。

「彼の動画見てると、面白い人だし、音楽も楽しいし、でもリリカルな面もあってすごくいいよね。ギター中心でしっかり演奏されてるけど、あんまりマジすぎないように見える感じがすごいね」って言ったら、「君たち瓜二つだよ」って言われたよ(笑)。


あと、子供の頃に聴いていたAlanis MorissetteWeezerGreen Dayblink-182みたいな音楽もよく聴いてる。それらは定番で、僕にとってはノスタルジックなものだね。

それから最近だとCharly Garcíaも聴いてる。アルゼンチンのアーティストなんだけど、最近すごくハマってる。本当に面白くて、クールな音楽だ。


それと今日ここにいるからあまり褒めたくないけど(笑)Stephen Dayも本当に素晴らしい! ツアーも一緒に回ってるし、彼の音楽はいつも聴いているよ。


――では、近いうちにまた日本に来る予定はありますか?

Cory:ちょうどいま、日本に戻る計画を進めているところなんだ。本当に戻りたいと思ってる。誰かに「世界で一番好きなツアー先は?」って聞かれたら、日本って答えるくらいだよ。

もちろんヨーロッパにも好きな場所はあるけど、日本はいつも本当に素晴らしい。ファンも最高だし、食べ物も文化もアートもレベルが違う。それに僕の野球チーム、スワローズもあるから、年に一回は行って応援しないと(笑)。

スノーボードも日本でやりたいんだ。だから年に2回くらい来るのもいいかもね、夏と冬で。だからそれを実現するために、日本のファンのみんなで声を上げて応援してくれると嬉しいな。また近いうちに来日が実現するのを手伝ってほしいんだ。みんなの声が必要なんだよ!


――最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

Cory:さっきの答えがまさにメッセージだったね(笑)。

いつも応援してくれてありがとう。本当に感謝している。いつも素晴らしい存在でいてくれて、ライブに来てくれて、オンラインでも応援してくれて、レコードを買ってくれて、すべてに感謝している。どれだけ感謝しているか、言葉では言い尽くせないよ。

みんなで僕たちが作っている音楽すべてを支えてくれていることが、本当に大きな意味を持っているんだ。自分の音楽が日本に届いているっていう、その事実だけでも夢が叶ったようなもので、とても光栄だし、心から感謝しているよ。本当にありがとう!



Petar Janjic

――まず、自己紹介をお願いします。

Petar:僕の名前はPetar Janjic(ペター・ヤニッチ)。Cory Wongバンドのドラマーだ。

Uncle Bronco(アンクル・ブロンコ)という自分のバンドもやっていて、Ty Bailie、Kevin Gastonguayと一緒に活動しているよ。


――音楽的なバックグラウンドについて教えてください。どのようにドラムをスタートしましたか?

Petar:僕は1990年にセルビアで生まれたんだ。クラグイェヴァツという、ベオグラードから2時間くらいの小さな街でね。

僕の父、Dragan Janjic(ドラガン・ヤニッチ)もドラマーだったんだ。僕が5歳の時に父がドラムを触らせてくれて、10歳になってから本格的に取り組むようになった。父の親友からレッスンを受けるようになって、それ以来ずっと「自分はドラマーになる」と思っていた。

「アメリカに行きたい」「Steve Gaddみたいになりたい」「James Brownと演奏したい」「Princeと演奏したい」って、子供の頃から思っていたんだよ。本当に強くそう思っていたからそれをずっと言い続けてたんだけど、周りには「無理だよ」って言われてた(笑)。


――実際にアメリカに行ったのはいつですか?

Petar:2008年だね。高校交換留学で、9ヶ月間アメリカに行ったんだ。申し込みがすごく遅くなってしまって残っていた学校が一つしかなくて、それがサウスダコタ州スーフォールズの高校だった。

その頃、バークリー音大ともやり取りしていて、DVDで演奏動画を送ったら奨学金の話が進んでいった。でもオーディションが8月で、ビザの期限が切れてしまうタイミングだったんだ。

そこで、マクナリー・スミス大学に行って、そのあとバークリーに編入したらどう? と言われて、まずマクナリー・スミスに行くことにした。

オーディションを受けて、Steve Miller Bandで30年以上演奏していたドラマーのGordy Knudtson(ゴーディ・クヌートソン)に評価されて、フルライドの奨学金をもらった。そして2009年にマクナリー・スミスに入学して、Coryや、Kevin Gastonguayと出会ったんだ。


――CoryやKevinとバンドを組むようになったきっかけは?

Petar:Coryは当時、(The Artists' Quarterで)火曜日のレジデンシー(毎週の演奏)をやっていたんだけど、ドラマーのZach Schmidtが辞めたので僕が代わりに入ることになった。それと同時に、Kevinとも街でよく一緒に演奏していたんだ。

「どうせ一緒にやってるならバンドを組もう」と言い合って、Yohannes Tonaも加わって2011年にForeign Motionというバンドを結成した。

当時はジャズ/フュージョン系で、とにかく弾きまくる感じだった。ミネアポリスの学生バンドだったよ。でも長くは続かなかった。「金を稼がなきゃ」ってなって(笑)。

ちょうどその頃、僕はPrinceのドラマーのMichael Bland(マイケル・ブランド)と出会って、彼が師匠のような存在になってくれた。ドラムを一緒に叩くというより、音楽について教えて導いてくれる存在だったんだ。

彼はDr. Mambo’s Comboというバンドで日曜と月曜の夜にセッションイベントをやっていたんだけど、2012年から僕がそのバンドに参加して、最終的には僕が彼の代わりに入るようになった。2014年にはKevinも加わって、Coryも参加するようになって、本当にたくさん一緒に演奏したよ。特にKevinとは世界で一番、一緒に演奏したと思う。日曜、月曜、水曜のハウスギグだけじゃなく、週末もForeign Motionで演奏してたからね(笑)。


――現在のCoryのバンドと、他のバンドとの違いはどのようなところにありますか?

Petar:まず第一に、これはCoryのバンドなんだということ。彼がフロントマンであり、彼がリーダーだ。僕たちは彼が達成したい目標を手助けするためにそこにいる。そして、もちろん彼も僕たちを助けてくれている。僕たちは世界中をツアーして、素晴らしいステージで演奏できるからね。

そして、違いという点で言うと――僕たちは本当にとても仲がいいんだ。普通は、世界中を友達と一緒にツアーすることなんてないよね。他の人や、その知り合いや同僚と演奏するのが普通だ。でも僕たちは同じ学校に通って、同じバンドにいて、今では一緒に世界をツアーしている。そういう関係のバンドだということ、強いて言うならそれが違いかな。


――それはかなり楽しそうですね。やっぱりその仲の良さが、バンドのケミストリーを生んでいるんですか?

Petar:そうだね。仲の良さっていうのは、いい面もそうでない面にも働くことはある。すごく近い関係だと「僕たちは友達だから大丈夫」とか、みんな安心しきってしまうこともあるよね。

でも長い間一緒にプレイしてきているから、お互いを完全に理解しているし、それぞれの個性やサウンドも分かっている。だから良くも悪くも作用する。まさに家族みたいなものだよね、誰にでもいろんな瞬間があるから。

でも最近はすごく良い状態だと思う。なぜなら、ちゃんとコミュニケーションを取って、時には距離を取る必要があるって理解しているから。世界中を回る中で、「今はちょっと一人で落ち着こう」っていうタイミングも分かるようになってきた。だから、本当にすごく良い状態なんだよ。


――ライブやレコーディングの中で、今バンドが一つになっていると感じる瞬間はどんな時でしょう? 例えば昨日のショーとかでは?

Petar:うん、昨日は(カリフォルニア州)サクラメントでのライブだった。個人的には、あれはかなり良いライブの一つだったと思う。バンドとして本当にタイトなプレイができて、「今めちゃくちゃいい感じだな!」と思った瞬間があった。

もちろんこの感覚はアドレナリンのせいかもしれないし、タイミング次第だけどね。自分では史上最高のショーだと思ったのに、実際はそうでもなかった……なんてこともある。でも昨夜のライブは、本当に特別だったと思うよ。


――では少し話題を変えて。あなたのドラマーとしての影響源は誰ですか?

Petar:まず、最初にして最も重要なのは父だね。僕にすべてを教えてくれた人で、彼は間違いなく一番の存在だ。それから父の友人で、セルビアの伝説的なドラマー、Slobodan Stojanović Kepa(スロボダン・ストヤノヴィッチ・ケパ)。この二人がいなかったら、僕はドラマーになっていなかったと思う。

(筆者注:Slobodanはセルビアの人気プログレバンド、Smakのドラマー)

それからMichael Bland、彼はものすごく大きな影響を与えてくれた。同じくGordy Knudtson。この二人はアメリカでの僕を支えてくれた。「より本格的なプロのドラマーとは何か」を教えてくれた人たちなんだ。

そしてもちろん、Steve Gadd、Jeff Porcaro、Dennis Chambers、Omar Hakim、Billy Cobham、 David Garibaldi、Mike Clarkとか……まだまだ続くよ(笑)。

僕の影響源はオールドスクール寄りで、ファンク、フュージョン、ジャズのドラマーに強く影響を受けている。あの時代は、ただテクニックを見せるだけじゃなかった……テクニックがグルーヴの一部として使われていた。それが本当にすごかったし、そういうスタイルが大好きなんだ。Vinnie Colaiutaもそうだし、挙げていったら本当にキリがないね(笑)。


――では、あなたのフェイバリット・アルバムを3つ挙げるとしたら?

Petar:まずはWeather Reportの『Heavy Weather』は絶対だね。それからJames Brownの『Star Time』。あと選ぶのが難しいけど、Herbie Hancockの『Thrust』かな。


いやでも、本当に選べない。Princeのシンボル・アルバム(Love Symbol)もそうだし、『Dirty Mind』もだ。3枚なんて選べないね(笑)。


――では、Coryのバンドでお気に入りの曲はありますか?

Petar:それはもう、すごく沢山あるよ。スタジオ版の「Lilypad」はすごく好きだし、「Ellie」も最高だ。「Limited World」もお気に入りだね。この辺でやめておこうかな、これもキリがないから(笑)。


――世界中をツアーしているということですが、日本はどうでしたか?

Petar:日本は世界で最も好きな場所の一つだよ、本当に。文化、ファン、すべてが信じられないほど素晴らしいからね。観客のエネルギー、そして優しさがとても印象的だった。


――なるほど。それは他の国と比べてどうでしたか?

Petar:それで言うと、今すごいと思っているのはアルゼンチンだね。数週間前に演奏したんだけど、あれはこれまでで一番クレイジーな観客の一つだったかもしれないな。

でも日本の観客は本当に特別で……楽屋にいると「今日本当にお客さん来てる?」って思うくらい静かなんだ。でもステージに出ると何千人もの人がいて、「うわ、すごい!」って驚かされる。

そして彼らは曲も全部知っているし、メンバーのことも知っている。文化としても、観客としても完成されている感じがするね。


――曲の合間や、Coryが「Meditation」をプレイする時もすごく静かですよね。

Petar:そう、リスペクトがあるよね。無駄なおしゃべりもない。本当に、あれが日本の文化の素晴らしいところだよね。それだけじゃなくて、食べ物も最高だし。


――では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

Petar:日本のみんなが大好きだよ! 僕たちが受け取るリスペクトと同じものを、みんなにも返したいと思っているから、みんなとできるだけ写真を撮ったり、ライブの後に交流したりするようにしたいんだ。それは僕の出身であるセルビアの文化でもあるからね。

愛と幸福と平和、それが全てだ。僕たちのショーに来てくれるすべての人に、そして僕が関わるすべてのプロジェクトを応援してくれる人に、それを届けたいと思っている。


――またすぐに日本に来てほしいです。Coryでも、Uncle Broncoでも。

Petar:もちろんだよ! 次の日本ツアーが待ちきれない。本当に。今日はありがとう! (日本語で)アリガトーゴザイマス(笑)!





次の記事ではベースのYohannes Tona
鍵盤のKevin Gastonguayのインタビューを掲載!
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インタビュー:ヨウヘイさん
著:Dr.ファンクシッテルー

宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。「KINZTO」と並行して、音楽ライターとしても活動しています。


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