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介護の夜も突然に… 終わるはずの夜に、また呼ばれる

金曜の夜のひととき

父をベッドに寝かせて、ようやく一息ついた。

早めに風呂もさっと済ませた。
さっぱりした。
さて、今日も何とか無事に終われそうだ。
そんな気配が、ようやく家の中に漂い始めていた。

少しだけ外へ出て、夜の家キャンでもしようか。
縁側に椅子を出し、ランタンの灯りでも眺めながら、ほんの数分、気を抜こう。

そう思った、その時だった。


父が、トイレへ行くと言う。

私はすぐに立ち上がり、父のもとへ向かった。
こういう時は一拍も置けない。
一緒にトイレへ向かう。

途中で、出てしまったようだった。

まあ、それは仕方がない。
無理に急いで転ぶより、よほどいい。
そう自分に言い聞かせながら、まずはトイレへたどり着くことを優先する。

着いてから処理をする。
どうやら少しゆるくなっている。
下痢というほどではない。
だが、いつもとは少し違う。
そういう微妙な違和感は、介護をしていると妙によく目につくようになる。

とりあえず私は、おむつの処理をしていた。
するとまた父が呼ぶ。

どうしたのかと聞くと、
「血が出ている」と言う。

見ると、拭いたトイレットペーパーに赤い血がそれなりについていた。

一気に緊張が走る。

こういう時、心臓は先に騒ぎ出す。
だが、騒いでも何も進まない。
まずは深呼吸。
とにかく一度落ち着く。
そこから状況確認である。

便の色は黒くない。
普通の色だ。
血も、どす黒い感じではなく赤い。
この時点で、少なくとも上の消化管からの出血ではなさそうだと考えた。

実は父は、1週間ほど前からおしりの皮膚が荒れていて痛がっていた。
そのためアズノールを塗っていた。
ただ、見た感じではそこから出たようにも見えない。
やはり、おしりの中か、その付近から出たと考えるのが自然だった。

一連の処理を終え、部屋へ戻る。
父に確認すると、おしりも腹も痛くないという。
どこかが切れたのかもしれない。
血の色が赤い以上、奥のほうではないだろうとも思う。
だが、思うのと判断するのは別だ。

時刻は21時。


どうするか。

明日は土曜。
訪問看護も医療も、どのみち休みの体制になる。
父の意向もある。
迷った末、結局電話することにした。

こういう時の「どうするか」は本当に難しい。
大ごとではないかもしれない。
だが、軽く見ていい保証もない。
夜という時間帯が、その迷いを余計に重くする。

流れはいつもの通り、まず訪問介護への連絡からである。
状況を説明し、来てもらうことになった。

到着までは30分ほど。
ありがたい。
本当にありがたい。

実はその日の夕方にも、父の膀胱洗浄で来てもらっていた。
どうやら同じ方が、その日は当直だったらしい。
さすがに申し訳ない気持ちがよぎる。
ついさっきも来てもらったばかりなのに、また夜に呼ぶことになるとは。

だが、現実には呼ばなければならないこともある。

来ていただいて、一連の確認をしてもらう。
血は今は出ていない。
血の色は赤い。
痛い箇所もない。
状況を総合して、やはり今は様子を見る、という判断になった。

私自身も、たぶんそうなるだろうとは思っていた。
それだけに、来てもらうのは少し申し訳ない気もしていた。
だが、一度きちんと見てもらう安心感は、父にとって必要だったと思う。
そして、たぶん私にとっても。

介護をしていると、判断の連続である。
しかも、その判断にはいつも少し不安が混ざる。
呼びすぎではないか。
まだ様子見でいいのではないか。
逆に、ここで見過ごして悪化したらどうする。
頭の中で何通りも考える。
そのたびに、正解のない分岐に立たされる。

CE時代の記憶が蘇る

私は昔、CE時代に夜勤で緊急出動したり、夜間受付の電話を受けて、行くべきかどうかの判断に関わっていたことがある。
だから少しわかる部分もある。
こういう時の対応や判断は、本当に難しい。

限られた人数。
限られた時間。
その中で回していかなければならない。
全部に完璧には応えられない。
だが、それでも誰かが夜を支えている。

介護も医療も、24時間対応してもらえることがどれほど心強いか。
実際にこういう夜を経験すると、その重みが身にしみる。

昼の介護も大変だ。
だが夜は、また別の顔をしている。
一日が終わったと思ったところから、突然始まる。
ようやく気を緩めたところを、静かに揺さぶってくる。

介護の夜も突然に、である。

今夜は結果的に、大事には至らなかった。
それはよかった。
本当によかった。
だが、こういう「何もなかった」で終われる夜の裏には、いくつもの確認と判断と、誰かの支えがある。

終わったと思った夜に、また呼ばれる。
介護とは、そういうものなのだと思う。

そしてそのたびに、こちらもまた少し鍛えられ、少し削られ、少しだけ現実に詳しくなっていく。

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EX-FAX-CE | NOTE執筆家
「ロスジェネ氷河期的視点 ― 情に生き、言葉で立ち上がる」
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