大人のギフテッドが「人と関わること」をやめたとき...ギフテッドな夫が心を閉ざした
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「もう誰にも、わかってもらおうとしなくていいんだ」
そう言って、夫は社会と距離を取った。
友人も、職場も、家族も.…
すべてを一度リセットしたあと、
彼は「人間のふりをする」ことを選んだ。
これは、そんな彼が“再び”社会と向き合うまでに必要だった、長い沈黙の記録。
そして、再スタートの直後に出会った“私たち”の記録。
華麗なる一族の「良い子」だった彼
彼はいわゆる、華麗なる一族の直系だった。
親も祖父母も、一流企業や地元で名の通った立場にいて、「しっかりした跡取り」として育てられてきた。
そんなサラブレッドBOYは、
常に大人たちの顔色をうかがいながら、
「良い子」を演じ続けなければならなかった。
でも、それは長く続かなかったようだ。
彼は、与えられたレールの上を歩くことを拒み、
ひとりで、静かに飛び立った。
その選択がどれだけ孤独だったか。
どれだけのものを犠牲にしたのか。
私は、彼の背中を見るたびに想像してしまう。
誰から見ても“成功者”になったのに
社会人になってからの彼は、ある意味で“完璧”だった。
どんな職場でも結果を出し、
業種をまたいで転職しても、
常にトップ評価を受けた。
「なんでもできる人」
「頼りになるリーダー」
そうやって称賛され続け、ついには自分で会社を立ち上げ、経営者になった。
肩書きも、年収も、実績も、すべてが揃っていた。
誰が見ても彼を“成功者”と認めた。
しかし、そんな神から授かりし者”ギフテッド“をある日突然、神様は見放した…
彼が手に入れたものすべてが音を立てて崩れた。
ギフテッドですら敵わなかった現実
経営者として「さらなる拡大を」というとき、彼は人生で初めての失敗を経験する。
それはコロナだった。
不可抗力であった。
予測も制御もできない社会の変化。
どれだけ頭がよくても、どれだけ早く動いても、どうにもならなかった。
売上が止まり、事業が回らなくなる。
彼は携わっていた複数の会社を、手放さざるを得なくなった。
ギフテッドとして常に“成功をおさめてきた”彼にとって、それは「敗北」以上のものだった。
積み上げてきた信用も、努力も、資産も、スーパーカーや高級時計も、そして苦楽をともにした経営パートナーさえも、自分という存在そのものも…
すべて失った。
夫はこのことに関しては私にさえ多くを語らないままである。
今もなおトラウマとして残る、想像を超えるショッキングな出来事があったのだと感じている。
けれど、それを無理矢理こじ開けることはしない。
むしろできない。
彼の繊細なガラスのバリアを傷つけたくないから。
私は夫が自らその時の出来事を語るまで見守ることにした。
いつかその日が来る日まで。
🐾そして彼は、クマ🐻になった
それ以降、彼はすべてを閉じた。
会社も、人とのつながりも、社会そのものも。
ひとり暮らしの部屋に引きこもり、
布団から出ることも、声を出すことも、
食べることさえできなくなった。
「クマ🐻化した」と彼は言う。
誰かと話すこと、社会そのものが怖くなった。
自分と関わる人を失うことが恐怖となった。
もう“人間”をやるのがしんどくなった。
彼は人生のスイッチをOFFにしようとした。
生きる意味を失い、そして、心を閉ざした。
🐾それでも彼は、“再び”社会に出る準備をした
しかし、彼にはまだ守るべき人がいた。
唯一の家族であり、最後まで彼を見守り続けていた人。
母親の存在が彼を再び立ち上がらせた。
数ヶ月の沈黙のあと、彼は少しずつ動き始めた。
まずは食べることからはじめた。
そして立ち上がった。
「もう、社会に期待しない」
「必要最低限だけ、迷惑かけずに生きる」
そう決めて、“人間のふり”をしながら、彼は社会に戻ってきた。
自分の心を守りながら、それでももう一度、リセットして生き直そうとした。
そんな時期に、私は彼と出会った。
関わることをやめたのは、「壊れないため」だった。
今の夫は、必要最低限しか人と関わらない。
買い物、職場、病院。
でもそれ以上の交流は、ほとんどない。
それは、“閉じた”わけじゃない。
ただ、「これ以上壊れないため」に選んだスタイル。
社会不適合者ではない。
社会に適応できなかったのではなく、
「適応しすぎて壊れた」のだと思う。
🐾私の前でだけ、クマは顔を出した
最初の彼の印象は、気品があり、目を合わせると吸い込まれるような眼差しを持ってる人だった。
そして少しだけ、チャラさを感じた。
でも、何度か会ううちに、彼の“陰”の部分が見え隠れし始めた。
そう、彼の中には、ずっと“クマ🐻”がいた。
甘えた声で「なでて」と言ってくる彼。
感情が大きく揺れたとき、子どものように縮こまってしまう彼。
その姿に、私は驚きもしなかった。
むしろ、「ようやく見せてくれたんだ」と、少しだけ安心したのを覚えている。
彼にとって私は、「社会の誰か」ではなく、
“母グマ🤱” になれたのかもしれない。
だから私は、今日もそっと彼の頭をなでる。
「また話したくなったら、いつでも聞くから」
そう伝えるように。
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